ナルシスト王子が嫌だったので婚約破棄してみた

二酸化炭素を吸う人

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試される忠誠心、焦がれる指先

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宵の帳が下りる頃。
王宮では、春の祝祭を祝う舞踏会が開かれていた。
ユウキが姿を現すより一足早く、ルシファは先に公の場へと出ていた。
彼はすでに以前のような”高慢な王子”ではない。
ユウキの命令で、背筋を伸ばし、誠実に、落ち着いた微笑みを浮かべて応対していた。
その様子に、周囲の視線が変わるのがわかる。
「あのルシファ王子が......」
「まるで別人のようだ」
ざわめきと賞賛、そして一
「久しぶりですね、ルシファ様」
甘く、上品な声が彼を呼び止めた。
振り返れば、そこには一
艶やかな紅のドレスをまとった女性貴族、レイナ・ヴァルフォード侯爵令娘。
かつてルシファに想いを寄せ、何度も結婚を申し込んだ高位貴族の娘だった。
「以前のあなたの方が、私は好きでしたよ?
私のことだけ見てくれていた、あの頃のあなだ」
彼女の言葉は明らかに挑発だった。
その視線には、軽度と哀れみと、微かな執着が混じっている。
「今のあなたは、まるで一一首輪をつけられた犬のよう」
それでも、ルシファは表情を変えない。
彼女の手が、彼の袖をそっと引いた。
「私となら、あなたは”本来の王子”でいられるのに。どうしてあんな女に....貴方ほどの方が、命じられるままに頭を下げているの?」
一瞬、彼の表情に微かな迷いが浮かんだ
ーーその時だった。
「....離れてくださいますか、レイナ様」
背後から、透き通るような冷たい声が響いた。
そこにいたのは、ルシファにとって今宵の主役であるユウキ。
薄紫のドレスをまとい、絶対的な威厳と美を帯びたその姿に、場の空気が変わる。
「私の婚約者に触れないで。
彼はあなたと違って、”忠誠の価値”を理解している」
レイナが何かを言おうとしたが、ユウキの一睨みで口明じる。
そしてユウキは、ルシファの前に立ち、じっと彼を見上げた。
「あなた、迷ったわね?」
その問いかけに、ルシファは息を詰まらせる。
けれど、彼女から逃げることなど、彼にはもう許されていなかった。
「....ほんの一瞬..過去の自分を思い出しただけで..!」
「ふうん。そうやって、自分で自分を許すのね?」ユウキは冷たい声で告げる。
「なら、試してあげる。
次にあなたが心を揺らしたら、今度こそ本当に捨てるわ」
言葉こそ冷たいが、ユウキの瞳の奥には、彼を情じたいという“最後の期待”が微かに灯っていた。
ルシファは膝をつき、その指先をそっとユウキのドレスの裾に添える。
「....揺れない。この命も心も、もう全部、あなたのものだ」
「じゃあ、証明して」
ユウキは彼の頭に手を置いた。
「今度の試練で、もし私を裏切ったら一あなたを従者としても、婚約者としても、永遠に手放す」
「.....わかった」
声が震えていた。けれど、それは恐れからではない。
それは、彼女を失うことだけが”唯一の死”と同義であると知っている者の声だ
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