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13 再びヒート ※
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「……聡介君、もしかしてまたヒートが来てる?」
真面目な顔をした鬼崎に言われて聡介は「え?」と問い返す。
けれど呟いた後、聡介はヒートが来て考える余裕を失った。ぶわりっと聡介の濃いフェロモンが溢れ出す。
「あっ、んんっ! はっはぁっ!」
この前と同じようにに体の熱がさっきとは比べ物にならない程に上がり、発作のように呼吸がままらなくなる。その上、体中がむずむずとして誰かに触れられたい、触れたいと言う強い欲望が聡介の頭の中を支配した。
……ん、なにこれ。……体中熱い。でも、鬼崎さんに抱き着きたい。ぎゅってしてほしい。
「くっ……聡介君」
鬼崎は慌てて口と鼻を抑え、すぐさま聡介から離れようとした。けれどそんな鬼崎の服を聡介が掴む。
「きざきさんっ」
「聡介君、ちょっと待って。抑制剤を飲むからっ」
「いやだ」
「聡介君……薬を飲まないと俺が聡介君に酷いことをしてしまうかもしれないから」
鬼崎は説得するが聡介は頭を横に振った。
「きざきさん、くすり、のまないで」
「いや、だけどっ」
「きざきさん、おねがい」
聡介は縋るように頼んだ。そんな聡介に鬼崎は困惑する。
「聡介君……でも」
「だって抑制剤のんだら噛んでくれないでしょ?」
聡介は言いながら、あの日鬼崎が呟いた言葉を思い出していた。
『聡介君? ……眠っちゃったか。 ……無防備だな、αの前なのに。けど抑制剤を飲んでなかったら危なかった。……うなじを噛まなくて本当に良かった』
……抑制剤をのんだら噛んでくれなくなる。
そう思ったからこその言葉だったが、鬼崎は聡介から言われて頭を抱えた。
「聡介君……本当、君って子は」
困ったように呟く鬼崎に聡介は首を傾げる。でも聡介は自分で言った言葉の意味をわかっていなかった。
しかし、そこへ真里が戻ってきた。
「この匂い、まさか聡ちゃんまたヒートに!?」
慌てた声で言う真里に鬼崎はすぐに答えた。
「真里さん、すみませんがヒート緊急対応の部屋はどこに?」
「このホテルの二階、Ω専用のフロアの出入り口すぐです」
真里に聞いてすぐ鬼崎は自分が着ていたスーツの上着を聡介に頭から被せるとそのまま聡介を両手で抱き上げた。
「っ!? きざきさんっ?」
驚く聡介を他所に鬼崎は真里に声をかけた。
「真里さん、聡介君は俺が」
「でもっ」
「俺に任せてください」
鬼崎の言葉を聞いた後、真里は聡介に視線を向ける。心配そうな顔に聡介はただ一言告げた。
「だいじょうぶ」
そう答えると真里は表情を少し和らげた。
「わかったわ。鬼崎さん、お願いします」
「はい」
鬼崎はそれだけを言うと聡介を連れて、早足で真里の言ったΩ専用のフロアへと人を避けながら向かった。
けれど鬼崎のジャケットを被っていてもフェロモンの匂いは微かに漂うのか、何人かは「Ωの匂い?」「これどこかでΩがヒートを起こしてる匂いじゃないか?」と呟く人がいた。
けれどそんな人から鬼崎は足早に離れてΩ専用のエレベーターへと入り込むとすぐさま二階へ上がり、どこのホテルにも完備されているヒート緊急対応の部屋へと駆けこんだ。
ここはΩが予期しないヒートを起こした時に運ばれる部屋で、匂いが漏れ出ない様になっている。とはいっても、部屋の中は他の一室と変わりない。
キングサイズの皺ひとつないベッドに鬼崎は聡介をゆっくりと下ろし、そしてすぐさま部屋の一角に置かれたテーブルにある電話でフロントへ部屋を使用する旨を伝えた。
けれどその間、聡介は頭がぼんやりとしながら鬼崎のジャケットに包まってすーはーっと息をする。
……きざきさんの、いいにおい。はぁ、もっと嗅ぎたいなぁ。
聡介は頭から被せられたジャケットの前を閉じて、ジャケットに染みついた匂いを一生懸命にくんくんと嗅ぐ。けれど鬼崎は前を閉じられたジャケットを開いて、聡介に声をかけた。
「聡介君、俺のジャケット、そんなに気に入ってくれた?」
鬼崎に尋ねられて、聡介は「はぃ」と正直に答える。けれど鬼崎は面白くなさそうな顔を見せた。
「そんな顔で言われるとジャケットに嫉妬してしまうな」
鬼崎に言われたが、聡介は自分がどんな顔をしているのかわからなくて首を軽く傾げる。でもそんな聡介に鬼崎は尋ねた。
「聡介君、抱き締めてもいい?」
その誘いは聡介にとって願ってもないものだった。だからつい勢いよく「はいっ」と答えてしまう。
「ふふ、正直な聡介君も可愛いね。……じゃあ、このジャケットは脱いで」
鬼崎は聡介が被っていたジャケットを脱がしたが、なんだか聡介はジャケッがなくなって名残惜しくなる。けれどその気持ちさえも顔に出ていたのか、鬼崎に頬を撫でられた。
「聡介君、ジャケットじゃなくて俺を見て」
そう言うと鬼崎はゆっくりと聡介を腕の中にすっぽりと抱き締めた。すると鬼崎の濃い匂いがして、聡介はジャケットなんてどうでも良くなって目の前にいる鬼崎に抱き着く。
「んん……きざきさん」
……いいにおい。きざきさん、あったかい。きもちいい。
聡介は鬼崎の背中に手を回して、ぎゅうっと抱き締める。そうすればαの匂いをしっかりと嗅ぎ、聡介は本当のヒートに入った。体の力が抜けて、じわりと後孔が濡れだす。
「はぁ、聡介君……もう今日は帰せないよ」
鬼崎は聡介を抱きしめたまま言い、その言葉に聡介は嬉しさで胸がいっぱいになる。今日はもう一日中、鬼崎と一緒にいれるのだとわかったから。
「かえりたくない。きざきさんの傍にいたい」
聡介が鬼崎の肩口にすりっと顔を擦ると抱き締める鬼崎の手が少し強張った感じがした。
「きざきさん?」
「……聡介君があんまり可愛くて手加減できなくなりそうだ」
鬼崎は少し困ったような声で告げたが、聡介は構わなかった。
「ひどく、されてもいい。だから……今日はずっといっしょに」
聡介が頼むと鬼崎は「はーっ」とため息をついた。でもそのため息の意味がわからない聡介は我儘過ぎたことを言っただろうか? と不安になってしまう。けれどそれは杞憂だった。
体を少し離した鬼崎は聡介の顔を真正面から見て、真面目に答えた。
「聡介君、あんまり俺を煽らないでくれる? これでも随分我慢してるんだよ?」
「あおる?」
何がどう煽っているのかわからない聡介は首を傾げるが、鬼崎は下に視線を向けた。だからその視線を追って行けば、鬼崎のそこはしっかりと硬くなっていてスーツのズボンを突っぱねていた。
……きざきさんの!
主張するそこに聡介は驚き、その一方で自分に興奮してくれているんだと嬉しくなる。でもそれ以上に恥ずかしさが上回った。以前のヒートの時、素股された事も思い出してしまって。
「ぅ、あ……っ」
「今すぐにでも聡介君の中に入りたい」
戸惑う聡介の耳元で鬼崎は甘く囁き、聡介はますます恥ずかしくなるのに体は期待しているのかじわぁっと後ろが濡れる。きっとパンツはもうびしょびしょだ。
「聡介君、こっちを見て?」
恥ずかしさで目を彷徨わす聡介に鬼崎は優しく言い、聡介はちらりと視線を向ける。そうすれば、そこには今までとは違う男の顔をした鬼崎がいた。前のヒートの時にも見た色っぽい顔だ。
その色気に当てられて聡介はくらくらしてしまう。でも鬼崎はそんな聡介に尋ねた。
「聡介君、キスしてもいい?」
「え、あ……えっ、と……んっ!?」
聡介が答えに躊躇していると、待ちきれなかった鬼崎は勝手に唇を合わせた。
柔らかい鬼崎の唇が重ねられ、聡介は鬼崎との初めてのキスにぎゅっと目を瞑る。でも、そうすれば鬼崎の唇の柔らかさがますます伝わってしまって息もできない。それなのに自分の唇を食むように鬼崎の唇は積極的で、その上、舌を出してぺろりと自分の下唇を舐めてきた。その感触に聡介は思わずぴくっと震えてしまう。
……くちびる、なめっ?!
聡介は驚きと共に体をこわばらせてしまうが、鬼崎の舌はお構いなしに聡介の唇を割って侵入してくる。ぬるぬると意志をもったそれは聡介の口腔内を余すことなく這いまわり、舌を絡ませて。初めての経験に慣れない聡介はとっさに離れようとするが、鬼崎がしっかりと背中と後頭部を抑えているので逃げられない。
なのに容赦なく上顎を擦られて、聡介は唾液を口の端から零しながらぞくぞくっとした刺激に再び体を震わせた。
「んんっ……ぷはっ! はぁっはぁっはぁっ!」
ようやく唇を解放された聡介は大きく口を開き、酸素を吸い込む。
「聡介君、ごめん。しつこかったね」
大きく呼吸をする聡介を見て鬼崎は謝った。けれどそんな鬼崎に聡介は頭を横に振った。
「ううん……おどろいたけど、うれしいです」
聡介はぎゅっと鬼崎の服のシャツを小さく握って答えた。そんな聡介の姿を見て、鬼崎は嬉しそうに微笑む。
「俺も嬉しいよ。……ずっと、こうしたかったんだ」
鬼崎は聡介の濡れた唇の縁を親指でなぞって色っぽく告げた。その仕草と表情に聡介は胸がドキドキする。
……きざきさんがおれと……うれしい。
「聡介君、今度はゆっくりするからもう一度していい?」
鬼崎に尋ねられて聡介は今度こそ、きちんと答えた。
「……はい」
「今度はちゃんと鼻で息するんだよ?」
鬼崎はそう言うとそっと啄むようにちゅっちゅっと唇を合わせてくる。さっきは食べられそうなキスだったけど、今度は確かめるようなキス。
……さっきのも気持ちよかったけど、今度はくすぐったくてやさしい。
でも、その優しいキスに蕩けていると鬼崎の手は聡介の胸をシャツの上からゆっくりと撫でた。そして指先で胸の尖りをスリスリと弄り始める。そのじれったい感触に聡介はうずうずと体に疼きが溜まっていく。
……むね、さわられてる。……でも、もの足りないっ。
「んっ、はぁ……きざき、さんっ」
体を少し離して聡介が見つめると、鬼崎は困ったように笑った。
「かわいいね、聡介君。可愛すぎて困るな」
鬼崎はそう言うと聡介の頬にちゅっとキスをすると「服、脱がせるよ」と耳元で囁いた。そして鬼崎はこの前と同じように鮮やかな手つきで聡介の服を脱がせ、聡介もその手に上がらう事なく素直に脱ぐ。
勿論恥ずかしいけれど、それよりも肌を隔てる服が煩わしかった。
……きざきさんにもっと触れてほしい。
聡介の想いはそれだけだった。
そしてもうすっかりびしゃびしゃに濡れた下着も全て脱がされて聡介はベッドの上に何も身につけず、横たわる。その傍で鬼崎も性急に服を脱ぎ、筋肉が付きすぎていない均等のとれた身体と長い手足が露わになった。
でも鬼崎の美しい体の中でも聡介の目をくぎ付けにしたのは、腹に反り返るほどに勃起したそれで。長くて太くてしっかり勃つ剛直に聡介のお腹はじゅんっと疼き、早く欲しいと体の本能が心より先に叫んだ。
……きざきさんも興奮してる。
その事が嬉しくて聡介が思わずうっとりと眺めていると、鬼崎はそんな聡介の体の脇に手を付いて見下ろすように覆いかぶさる。
「そんなに見つめられると恥ずかしいよ、聡介君」
鬼崎は少し照れたように言ったが、そんな姿も愛おしいと思う。けれど、そう思っている内に鬼崎はゆっくりと聡介との距離を狭めて、またキスをしてきた。今度はまた舌を入れるキス。
ぬるぬると動く鬼崎の舌に聡介はされるがままに翻弄されて苦しい、でも気持ちよくてもっとして欲しいとさえ思う。なのに唇がそっと離れてしまった。
でもその唇は首筋を通り、胸へと降りていく。だから、この前と同じように乳首を舐められるのかと思ったけれど鬼崎は胸を素通りし更に下へと降りていって、聡介は鬼崎が何をしようとしているのか気が付いた。
「あ、まっ!」
真面目な顔をした鬼崎に言われて聡介は「え?」と問い返す。
けれど呟いた後、聡介はヒートが来て考える余裕を失った。ぶわりっと聡介の濃いフェロモンが溢れ出す。
「あっ、んんっ! はっはぁっ!」
この前と同じようにに体の熱がさっきとは比べ物にならない程に上がり、発作のように呼吸がままらなくなる。その上、体中がむずむずとして誰かに触れられたい、触れたいと言う強い欲望が聡介の頭の中を支配した。
……ん、なにこれ。……体中熱い。でも、鬼崎さんに抱き着きたい。ぎゅってしてほしい。
「くっ……聡介君」
鬼崎は慌てて口と鼻を抑え、すぐさま聡介から離れようとした。けれどそんな鬼崎の服を聡介が掴む。
「きざきさんっ」
「聡介君、ちょっと待って。抑制剤を飲むからっ」
「いやだ」
「聡介君……薬を飲まないと俺が聡介君に酷いことをしてしまうかもしれないから」
鬼崎は説得するが聡介は頭を横に振った。
「きざきさん、くすり、のまないで」
「いや、だけどっ」
「きざきさん、おねがい」
聡介は縋るように頼んだ。そんな聡介に鬼崎は困惑する。
「聡介君……でも」
「だって抑制剤のんだら噛んでくれないでしょ?」
聡介は言いながら、あの日鬼崎が呟いた言葉を思い出していた。
『聡介君? ……眠っちゃったか。 ……無防備だな、αの前なのに。けど抑制剤を飲んでなかったら危なかった。……うなじを噛まなくて本当に良かった』
……抑制剤をのんだら噛んでくれなくなる。
そう思ったからこその言葉だったが、鬼崎は聡介から言われて頭を抱えた。
「聡介君……本当、君って子は」
困ったように呟く鬼崎に聡介は首を傾げる。でも聡介は自分で言った言葉の意味をわかっていなかった。
しかし、そこへ真里が戻ってきた。
「この匂い、まさか聡ちゃんまたヒートに!?」
慌てた声で言う真里に鬼崎はすぐに答えた。
「真里さん、すみませんがヒート緊急対応の部屋はどこに?」
「このホテルの二階、Ω専用のフロアの出入り口すぐです」
真里に聞いてすぐ鬼崎は自分が着ていたスーツの上着を聡介に頭から被せるとそのまま聡介を両手で抱き上げた。
「っ!? きざきさんっ?」
驚く聡介を他所に鬼崎は真里に声をかけた。
「真里さん、聡介君は俺が」
「でもっ」
「俺に任せてください」
鬼崎の言葉を聞いた後、真里は聡介に視線を向ける。心配そうな顔に聡介はただ一言告げた。
「だいじょうぶ」
そう答えると真里は表情を少し和らげた。
「わかったわ。鬼崎さん、お願いします」
「はい」
鬼崎はそれだけを言うと聡介を連れて、早足で真里の言ったΩ専用のフロアへと人を避けながら向かった。
けれど鬼崎のジャケットを被っていてもフェロモンの匂いは微かに漂うのか、何人かは「Ωの匂い?」「これどこかでΩがヒートを起こしてる匂いじゃないか?」と呟く人がいた。
けれどそんな人から鬼崎は足早に離れてΩ専用のエレベーターへと入り込むとすぐさま二階へ上がり、どこのホテルにも完備されているヒート緊急対応の部屋へと駆けこんだ。
ここはΩが予期しないヒートを起こした時に運ばれる部屋で、匂いが漏れ出ない様になっている。とはいっても、部屋の中は他の一室と変わりない。
キングサイズの皺ひとつないベッドに鬼崎は聡介をゆっくりと下ろし、そしてすぐさま部屋の一角に置かれたテーブルにある電話でフロントへ部屋を使用する旨を伝えた。
けれどその間、聡介は頭がぼんやりとしながら鬼崎のジャケットに包まってすーはーっと息をする。
……きざきさんの、いいにおい。はぁ、もっと嗅ぎたいなぁ。
聡介は頭から被せられたジャケットの前を閉じて、ジャケットに染みついた匂いを一生懸命にくんくんと嗅ぐ。けれど鬼崎は前を閉じられたジャケットを開いて、聡介に声をかけた。
「聡介君、俺のジャケット、そんなに気に入ってくれた?」
鬼崎に尋ねられて、聡介は「はぃ」と正直に答える。けれど鬼崎は面白くなさそうな顔を見せた。
「そんな顔で言われるとジャケットに嫉妬してしまうな」
鬼崎に言われたが、聡介は自分がどんな顔をしているのかわからなくて首を軽く傾げる。でもそんな聡介に鬼崎は尋ねた。
「聡介君、抱き締めてもいい?」
その誘いは聡介にとって願ってもないものだった。だからつい勢いよく「はいっ」と答えてしまう。
「ふふ、正直な聡介君も可愛いね。……じゃあ、このジャケットは脱いで」
鬼崎は聡介が被っていたジャケットを脱がしたが、なんだか聡介はジャケッがなくなって名残惜しくなる。けれどその気持ちさえも顔に出ていたのか、鬼崎に頬を撫でられた。
「聡介君、ジャケットじゃなくて俺を見て」
そう言うと鬼崎はゆっくりと聡介を腕の中にすっぽりと抱き締めた。すると鬼崎の濃い匂いがして、聡介はジャケットなんてどうでも良くなって目の前にいる鬼崎に抱き着く。
「んん……きざきさん」
……いいにおい。きざきさん、あったかい。きもちいい。
聡介は鬼崎の背中に手を回して、ぎゅうっと抱き締める。そうすればαの匂いをしっかりと嗅ぎ、聡介は本当のヒートに入った。体の力が抜けて、じわりと後孔が濡れだす。
「はぁ、聡介君……もう今日は帰せないよ」
鬼崎は聡介を抱きしめたまま言い、その言葉に聡介は嬉しさで胸がいっぱいになる。今日はもう一日中、鬼崎と一緒にいれるのだとわかったから。
「かえりたくない。きざきさんの傍にいたい」
聡介が鬼崎の肩口にすりっと顔を擦ると抱き締める鬼崎の手が少し強張った感じがした。
「きざきさん?」
「……聡介君があんまり可愛くて手加減できなくなりそうだ」
鬼崎は少し困ったような声で告げたが、聡介は構わなかった。
「ひどく、されてもいい。だから……今日はずっといっしょに」
聡介が頼むと鬼崎は「はーっ」とため息をついた。でもそのため息の意味がわからない聡介は我儘過ぎたことを言っただろうか? と不安になってしまう。けれどそれは杞憂だった。
体を少し離した鬼崎は聡介の顔を真正面から見て、真面目に答えた。
「聡介君、あんまり俺を煽らないでくれる? これでも随分我慢してるんだよ?」
「あおる?」
何がどう煽っているのかわからない聡介は首を傾げるが、鬼崎は下に視線を向けた。だからその視線を追って行けば、鬼崎のそこはしっかりと硬くなっていてスーツのズボンを突っぱねていた。
……きざきさんの!
主張するそこに聡介は驚き、その一方で自分に興奮してくれているんだと嬉しくなる。でもそれ以上に恥ずかしさが上回った。以前のヒートの時、素股された事も思い出してしまって。
「ぅ、あ……っ」
「今すぐにでも聡介君の中に入りたい」
戸惑う聡介の耳元で鬼崎は甘く囁き、聡介はますます恥ずかしくなるのに体は期待しているのかじわぁっと後ろが濡れる。きっとパンツはもうびしょびしょだ。
「聡介君、こっちを見て?」
恥ずかしさで目を彷徨わす聡介に鬼崎は優しく言い、聡介はちらりと視線を向ける。そうすれば、そこには今までとは違う男の顔をした鬼崎がいた。前のヒートの時にも見た色っぽい顔だ。
その色気に当てられて聡介はくらくらしてしまう。でも鬼崎はそんな聡介に尋ねた。
「聡介君、キスしてもいい?」
「え、あ……えっ、と……んっ!?」
聡介が答えに躊躇していると、待ちきれなかった鬼崎は勝手に唇を合わせた。
柔らかい鬼崎の唇が重ねられ、聡介は鬼崎との初めてのキスにぎゅっと目を瞑る。でも、そうすれば鬼崎の唇の柔らかさがますます伝わってしまって息もできない。それなのに自分の唇を食むように鬼崎の唇は積極的で、その上、舌を出してぺろりと自分の下唇を舐めてきた。その感触に聡介は思わずぴくっと震えてしまう。
……くちびる、なめっ?!
聡介は驚きと共に体をこわばらせてしまうが、鬼崎の舌はお構いなしに聡介の唇を割って侵入してくる。ぬるぬると意志をもったそれは聡介の口腔内を余すことなく這いまわり、舌を絡ませて。初めての経験に慣れない聡介はとっさに離れようとするが、鬼崎がしっかりと背中と後頭部を抑えているので逃げられない。
なのに容赦なく上顎を擦られて、聡介は唾液を口の端から零しながらぞくぞくっとした刺激に再び体を震わせた。
「んんっ……ぷはっ! はぁっはぁっはぁっ!」
ようやく唇を解放された聡介は大きく口を開き、酸素を吸い込む。
「聡介君、ごめん。しつこかったね」
大きく呼吸をする聡介を見て鬼崎は謝った。けれどそんな鬼崎に聡介は頭を横に振った。
「ううん……おどろいたけど、うれしいです」
聡介はぎゅっと鬼崎の服のシャツを小さく握って答えた。そんな聡介の姿を見て、鬼崎は嬉しそうに微笑む。
「俺も嬉しいよ。……ずっと、こうしたかったんだ」
鬼崎は聡介の濡れた唇の縁を親指でなぞって色っぽく告げた。その仕草と表情に聡介は胸がドキドキする。
……きざきさんがおれと……うれしい。
「聡介君、今度はゆっくりするからもう一度していい?」
鬼崎に尋ねられて聡介は今度こそ、きちんと答えた。
「……はい」
「今度はちゃんと鼻で息するんだよ?」
鬼崎はそう言うとそっと啄むようにちゅっちゅっと唇を合わせてくる。さっきは食べられそうなキスだったけど、今度は確かめるようなキス。
……さっきのも気持ちよかったけど、今度はくすぐったくてやさしい。
でも、その優しいキスに蕩けていると鬼崎の手は聡介の胸をシャツの上からゆっくりと撫でた。そして指先で胸の尖りをスリスリと弄り始める。そのじれったい感触に聡介はうずうずと体に疼きが溜まっていく。
……むね、さわられてる。……でも、もの足りないっ。
「んっ、はぁ……きざき、さんっ」
体を少し離して聡介が見つめると、鬼崎は困ったように笑った。
「かわいいね、聡介君。可愛すぎて困るな」
鬼崎はそう言うと聡介の頬にちゅっとキスをすると「服、脱がせるよ」と耳元で囁いた。そして鬼崎はこの前と同じように鮮やかな手つきで聡介の服を脱がせ、聡介もその手に上がらう事なく素直に脱ぐ。
勿論恥ずかしいけれど、それよりも肌を隔てる服が煩わしかった。
……きざきさんにもっと触れてほしい。
聡介の想いはそれだけだった。
そしてもうすっかりびしゃびしゃに濡れた下着も全て脱がされて聡介はベッドの上に何も身につけず、横たわる。その傍で鬼崎も性急に服を脱ぎ、筋肉が付きすぎていない均等のとれた身体と長い手足が露わになった。
でも鬼崎の美しい体の中でも聡介の目をくぎ付けにしたのは、腹に反り返るほどに勃起したそれで。長くて太くてしっかり勃つ剛直に聡介のお腹はじゅんっと疼き、早く欲しいと体の本能が心より先に叫んだ。
……きざきさんも興奮してる。
その事が嬉しくて聡介が思わずうっとりと眺めていると、鬼崎はそんな聡介の体の脇に手を付いて見下ろすように覆いかぶさる。
「そんなに見つめられると恥ずかしいよ、聡介君」
鬼崎は少し照れたように言ったが、そんな姿も愛おしいと思う。けれど、そう思っている内に鬼崎はゆっくりと聡介との距離を狭めて、またキスをしてきた。今度はまた舌を入れるキス。
ぬるぬると動く鬼崎の舌に聡介はされるがままに翻弄されて苦しい、でも気持ちよくてもっとして欲しいとさえ思う。なのに唇がそっと離れてしまった。
でもその唇は首筋を通り、胸へと降りていく。だから、この前と同じように乳首を舐められるのかと思ったけれど鬼崎は胸を素通りし更に下へと降りていって、聡介は鬼崎が何をしようとしているのか気が付いた。
「あ、まっ!」
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コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学で逃げ出して後悔したのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
オメガの香り
みこと
BL
高校の同級生だったベータの樹里とアルファ慎一郎は友人として過ごしていた。
ところがある日、樹里の体に異変が起きて…。
オメガバースです。
ある事件がきっかけで離れ離れになってしまった二人がもう一度出会い、結ばれるまでの話です。
大きなハプニングはありません。
短編です。
視点は章によって樹里と慎一郎とで変わりますが、読めば分かると思いますで記載しません。
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