150 / 180
最終章「プロポーズは指輪と共に!」
21 フィズ
しおりを挟む
「リャーナ様、どうかお許しください。バレンシア様が約束を破ったのは確かですが……親が子に会いたいと思う気持ちはいけないことでしょうか?」
お爺が真摯に告げると俺の肩を掴むリャーナ様の手が少しだけ強張る。そしてリャーナ様は親し気にお爺を呼んだ。
「フィズ」
聞き慣れない名前に俺は、一瞬誰? と思うけれど、思えばお爺の名前がフィズだったことを思い出した。
……でも、リャーナ様がお爺を親し気に呼ぶなんて、お爺ってやっぱ何者?
疑問に思いながらお爺をじぃーっと見つめれば、俺の視線に気がついたお爺は申し訳なさそうに微笑み、答えた。
「坊ちゃん、今まで言わずに申し訳ありません。実は、私はバレンシア様の眷属なのです」
「お爺がバレンシア様の眷属!」
俺はやっぱり驚くが、なんだか妙に納得できた。なにせお爺はちょっと人間離れしてるところがあるから。
……お爺が眷属。この事、母様は知ってんだろうか? てか、眷属って確か不老不死に近い体で長い時を生きるって話じゃ。……え、お爺って実はいくつ? 俺が子供の頃から変わんないけど、まさか??
でも俺がそんな事を考えている横で、リャーナ様は話を続けた。
「フィズ、貴方が言う事もわかるわ。でも約束を破った事と、その事については別の話よ。そして、その罰はこの子。この子には私と一緒に天界にいてもらう。……まぁ、フィズがこの子の代わりになってもいいけれど?」
リャーナ様が言うと、お爺は躊躇いなく答えた。
「私で良ければ、喜んで残りましょう」
……お爺!?
あんまりに躊躇いなく答えたので、俺の方が驚いてしまう。でも、俺の驚きもつかの間、今度はレノが声を上げた。
「いいえ、私が残ります」
……おいおい、レノまで何言ってんだ!?
「いや、これは私の問題だ。だからリャーナ、罰なら私が受けよう」
今度はバレンシア様も声を上げた。
「私がいけなかったんだ。神聖国でレノを見て……ついついもっと話したいと思ってしまった。少しだけでも傍で見たいと」
バレンシア様はレノをじっと見て言った。その表情は親そのものだ。だから、バレンシア様がレノの親だという事が俺は今になってよくわかる。
そしてリャーナ様も俺と同じように感じたようだ。
「バレンシア。貴方の気持ち、わからなくもないわ。でも、私達は勝手な事は許されない立場にいるのよ」
厳しいリャーナ様の言葉にバレンシア様は深く頷く。
「ああ、そうだな。だからこそ、その罰は私が受けよう。……だからキトリー君を返しておくれ」
バレンシア様は手を差し出して言った。しかしリャーナ様は首を横に振った。
「駄目よ。バレンシアではダメ、貴方の息子でもね」
「では、私ならよろしいのですか? リャーナ様、私で良ければ坊ちゃんの代わりに残りましょう。それで許しては下さいませんか?」
お爺はすぐさま声を上げ、バレンシア様は引き留めようとした。
「フィズ、お前に何の!」
「フィズがそこまで言うのなら、この子の代わりを貴方が引き受けてもいいわ」
バレンシア様の声を遮るようにリャーナ様は答える。けど、そんなリャーナ様に俺は尋ねた。
「リャーナ様、預かるって話だけど、それってどれくらい?」
「ずっとよ」
「ずっと?」
「そう、命が尽きるまで。まあ、フィズが代わるから貴方は解放よ」
リャーナ様はあっさりと俺に告げた。しかし俺の脳裏にお爺との話が蘇る。
……ずっと!? 命尽きるまでって。お爺には好きな人がいるのにッ!
「何ですって!?」
俺が心の中で叫べば、リャーナ様は悲鳴のような声を上げた。そして両手で俺の肩をがっしりと掴むと、ぶんぶんっと揺さぶる。
「今の話、詳しく聞かせなさい!」
「うをぉぉぉぉっ!? い、今の、話ってぇぇ?!」
……お爺に好きな人がいるって事? なんか、身分違いの恋で一緒になれないって話だけどォ。
俺は困惑しながらも心の中で答える。そうすればリャーナ様は揺さぶるのを止めて、俺の肩を掴んだままふるふると震えるとニョキッと頭に牛の角が生やした!!
……角! そういや、バレンシア様が蛇で、クト様は狐、リャーナ様が動物に変身する時は牛だっけ!?
「や、やっとフィズが手に入ると思ったのに」
「え、お、お爺?」
「好きな人がいるなんてっ。あの時、やっぱりフィズを無理やりにでも奪った方がよかったんだわ!」
リャーナ様は嘆き、穏やかだった庭園にざわざわと不穏な風が吹き始め、空に暗雲が立ち込める。
「ちょ、リャーナ様?」
「あの時、バレンシアがフィズを渡さないなんて言うから、フィズは他の人に! それなのにバレンシアは好きな相手と子供まで作って……ずるいわ!!」
リャーナ様は叫び、その妬むような声を聞いて俺はハッとした。
……この声! リャーナ様に鏡の中へ引っ張られた時、聞こえたのと同じだ! でも、ずるいってどういう意味なんだ? てか、肩を掴んでる手が痛いです!
俺はわからずに困惑するが、リャーナ様はお怒りで鼻息を荒くするばかりだ。けれど、同時に強風が吹き荒れる。
「リャーナ、落ち着け!」
バレンシア様が叫ぶが、怒りに満ちたリャーナ様には届かない。そして、暗雲広がる空に雷のいななきが響く直前。
「はぁーい、すとっぷ、すとっぷぅー!」
パンパンッと両手を叩いて言ったのは、どこからともなく現れたクト様だった。
お爺が真摯に告げると俺の肩を掴むリャーナ様の手が少しだけ強張る。そしてリャーナ様は親し気にお爺を呼んだ。
「フィズ」
聞き慣れない名前に俺は、一瞬誰? と思うけれど、思えばお爺の名前がフィズだったことを思い出した。
……でも、リャーナ様がお爺を親し気に呼ぶなんて、お爺ってやっぱ何者?
疑問に思いながらお爺をじぃーっと見つめれば、俺の視線に気がついたお爺は申し訳なさそうに微笑み、答えた。
「坊ちゃん、今まで言わずに申し訳ありません。実は、私はバレンシア様の眷属なのです」
「お爺がバレンシア様の眷属!」
俺はやっぱり驚くが、なんだか妙に納得できた。なにせお爺はちょっと人間離れしてるところがあるから。
……お爺が眷属。この事、母様は知ってんだろうか? てか、眷属って確か不老不死に近い体で長い時を生きるって話じゃ。……え、お爺って実はいくつ? 俺が子供の頃から変わんないけど、まさか??
でも俺がそんな事を考えている横で、リャーナ様は話を続けた。
「フィズ、貴方が言う事もわかるわ。でも約束を破った事と、その事については別の話よ。そして、その罰はこの子。この子には私と一緒に天界にいてもらう。……まぁ、フィズがこの子の代わりになってもいいけれど?」
リャーナ様が言うと、お爺は躊躇いなく答えた。
「私で良ければ、喜んで残りましょう」
……お爺!?
あんまりに躊躇いなく答えたので、俺の方が驚いてしまう。でも、俺の驚きもつかの間、今度はレノが声を上げた。
「いいえ、私が残ります」
……おいおい、レノまで何言ってんだ!?
「いや、これは私の問題だ。だからリャーナ、罰なら私が受けよう」
今度はバレンシア様も声を上げた。
「私がいけなかったんだ。神聖国でレノを見て……ついついもっと話したいと思ってしまった。少しだけでも傍で見たいと」
バレンシア様はレノをじっと見て言った。その表情は親そのものだ。だから、バレンシア様がレノの親だという事が俺は今になってよくわかる。
そしてリャーナ様も俺と同じように感じたようだ。
「バレンシア。貴方の気持ち、わからなくもないわ。でも、私達は勝手な事は許されない立場にいるのよ」
厳しいリャーナ様の言葉にバレンシア様は深く頷く。
「ああ、そうだな。だからこそ、その罰は私が受けよう。……だからキトリー君を返しておくれ」
バレンシア様は手を差し出して言った。しかしリャーナ様は首を横に振った。
「駄目よ。バレンシアではダメ、貴方の息子でもね」
「では、私ならよろしいのですか? リャーナ様、私で良ければ坊ちゃんの代わりに残りましょう。それで許しては下さいませんか?」
お爺はすぐさま声を上げ、バレンシア様は引き留めようとした。
「フィズ、お前に何の!」
「フィズがそこまで言うのなら、この子の代わりを貴方が引き受けてもいいわ」
バレンシア様の声を遮るようにリャーナ様は答える。けど、そんなリャーナ様に俺は尋ねた。
「リャーナ様、預かるって話だけど、それってどれくらい?」
「ずっとよ」
「ずっと?」
「そう、命が尽きるまで。まあ、フィズが代わるから貴方は解放よ」
リャーナ様はあっさりと俺に告げた。しかし俺の脳裏にお爺との話が蘇る。
……ずっと!? 命尽きるまでって。お爺には好きな人がいるのにッ!
「何ですって!?」
俺が心の中で叫べば、リャーナ様は悲鳴のような声を上げた。そして両手で俺の肩をがっしりと掴むと、ぶんぶんっと揺さぶる。
「今の話、詳しく聞かせなさい!」
「うをぉぉぉぉっ!? い、今の、話ってぇぇ?!」
……お爺に好きな人がいるって事? なんか、身分違いの恋で一緒になれないって話だけどォ。
俺は困惑しながらも心の中で答える。そうすればリャーナ様は揺さぶるのを止めて、俺の肩を掴んだままふるふると震えるとニョキッと頭に牛の角が生やした!!
……角! そういや、バレンシア様が蛇で、クト様は狐、リャーナ様が動物に変身する時は牛だっけ!?
「や、やっとフィズが手に入ると思ったのに」
「え、お、お爺?」
「好きな人がいるなんてっ。あの時、やっぱりフィズを無理やりにでも奪った方がよかったんだわ!」
リャーナ様は嘆き、穏やかだった庭園にざわざわと不穏な風が吹き始め、空に暗雲が立ち込める。
「ちょ、リャーナ様?」
「あの時、バレンシアがフィズを渡さないなんて言うから、フィズは他の人に! それなのにバレンシアは好きな相手と子供まで作って……ずるいわ!!」
リャーナ様は叫び、その妬むような声を聞いて俺はハッとした。
……この声! リャーナ様に鏡の中へ引っ張られた時、聞こえたのと同じだ! でも、ずるいってどういう意味なんだ? てか、肩を掴んでる手が痛いです!
俺はわからずに困惑するが、リャーナ様はお怒りで鼻息を荒くするばかりだ。けれど、同時に強風が吹き荒れる。
「リャーナ、落ち着け!」
バレンシア様が叫ぶが、怒りに満ちたリャーナ様には届かない。そして、暗雲広がる空に雷のいななきが響く直前。
「はぁーい、すとっぷ、すとっぷぅー!」
パンパンッと両手を叩いて言ったのは、どこからともなく現れたクト様だった。
57
あなたにおすすめの小説
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
秘匿された第十王子は悪態をつく
なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。
第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。
第十王子の姿を知る者はほとんどいない。
後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。
秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。
ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。
少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。
ノアが秘匿される理由。
十人の妃。
ユリウスを知る渡り人のマホ。
二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
天啓によると殿下の婚約者ではなくなります
ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。
フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。
●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。
性表現は一切出てきません。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
腐男子♥異世界転生
よしの こひな
BL
ある日、腐男子で新卒サラリーマン・伊丹トキヤの自室にトラックが突っ込む。
目覚めたトキヤがそこで目にしたのは、彼が長年追い続けていたBL小説の世界――。しかも、なんとトキヤは彼が最推しするスパダリ攻め『黒の騎士』ことアルチュール・ド・シルエットの文武のライバルであり、恋のライバルでもあるサブキャラの「当て馬」セレスタン・ギレヌ・コルベールに転生してしまっていた。
トキヤは、「すぐそばで推しの2人を愛でられる!」と思っていたのに、次々と原作とは異なる展開が……。 ※なろうさん、Caitaさん、PIXIVさんでも掲載しています。
ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる