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カインとラリー仲直り
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家に帰ると静かだった。俺が顔面蒼白になる。慌てて二階へ行き、部屋を開けたが
誰もいない。一階にも、馬小屋にもいない。俺が浮かれていたばかりにこんなことに
なってしまった。俺はショックのあまり、リビングの椅子で抜け殻のように
座っていた。誰かが、俺の体をゆすっている。ラリーだった。
「お前、しっかりしろよ。置き手紙にすら気づいていないのか」
俺は、ふとリビングのテーブルを見た。そこにはアズサが書いたであろう
かわいらしい字で何か書かれていた。
(カイン様、短い間でしたが、お世話になりました。色々と助けていただき、
ご迷惑ばかりおかけしてしまい、申し訳ありませんでした。
カイン様と過ごした日々はとても楽しかったです。ありがとうございました。
私はゆうを探して、こうなってしまった責任を取ろうと思います。
お体にはお気を付けください。さようなら。アズサ)
カインは、声を出して泣いた。こんなに愛した女性と離れてしまった。悲しくて
悲しくてどうしようもない。けれど、ゆうというモンスターに会いに行ったと
したなら、アズサが危ない。俺は慌てて、部屋を飛び出した。ラリーが引き止める。
「お前に当てがあるのか」
俺は、首を振りながらも叫ぶ。
「探しに行かなくてはならない。俺が恋愛ボケしていたせいで、街の市民もアズサも
危険にさらされているんだ。俺はその責任を取る。万が一見つからなかった
場合には、自害する」
ラリーはフッと笑いながら言う。
「やっと、騎士らしいお前に戻ったな。アズサちゃんもやっぱり入ってたけどな。
行くぞ」
ラリーは俺の手を引っ張った。
「お前と別れた後に、お師匠様にある程度、魔力を回復してもらったが、
完全には復活していない。だから、お前しか転移できないがどうする」
俺は張り切って答えた。
「行くに決まっているだろう。体も怠けていたし、久しぶりに暴れてくるよ」
ラリーは笑いながらも、少し心配そうに告げる。
「モンスターは相当力を強くしている。お前の本気でも勝てるかどうかは
五分五分だ。気をつけろよ」
俺は、ラリーの心配そうな様子から、いかにモンスターが強いか想像がついた。
「わかった。無事に勝利して、国を守ってみせるよ。
もちろん、アズサも取り戻す」
ラリーは、いつもは無言での転移だが、今日は呪文を唱えながら、汗を額に
滲みさせながらも転移させてくれた。
誰もいない。一階にも、馬小屋にもいない。俺が浮かれていたばかりにこんなことに
なってしまった。俺はショックのあまり、リビングの椅子で抜け殻のように
座っていた。誰かが、俺の体をゆすっている。ラリーだった。
「お前、しっかりしろよ。置き手紙にすら気づいていないのか」
俺は、ふとリビングのテーブルを見た。そこにはアズサが書いたであろう
かわいらしい字で何か書かれていた。
(カイン様、短い間でしたが、お世話になりました。色々と助けていただき、
ご迷惑ばかりおかけしてしまい、申し訳ありませんでした。
カイン様と過ごした日々はとても楽しかったです。ありがとうございました。
私はゆうを探して、こうなってしまった責任を取ろうと思います。
お体にはお気を付けください。さようなら。アズサ)
カインは、声を出して泣いた。こんなに愛した女性と離れてしまった。悲しくて
悲しくてどうしようもない。けれど、ゆうというモンスターに会いに行ったと
したなら、アズサが危ない。俺は慌てて、部屋を飛び出した。ラリーが引き止める。
「お前に当てがあるのか」
俺は、首を振りながらも叫ぶ。
「探しに行かなくてはならない。俺が恋愛ボケしていたせいで、街の市民もアズサも
危険にさらされているんだ。俺はその責任を取る。万が一見つからなかった
場合には、自害する」
ラリーはフッと笑いながら言う。
「やっと、騎士らしいお前に戻ったな。アズサちゃんもやっぱり入ってたけどな。
行くぞ」
ラリーは俺の手を引っ張った。
「お前と別れた後に、お師匠様にある程度、魔力を回復してもらったが、
完全には復活していない。だから、お前しか転移できないがどうする」
俺は張り切って答えた。
「行くに決まっているだろう。体も怠けていたし、久しぶりに暴れてくるよ」
ラリーは笑いながらも、少し心配そうに告げる。
「モンスターは相当力を強くしている。お前の本気でも勝てるかどうかは
五分五分だ。気をつけろよ」
俺は、ラリーの心配そうな様子から、いかにモンスターが強いか想像がついた。
「わかった。無事に勝利して、国を守ってみせるよ。
もちろん、アズサも取り戻す」
ラリーは、いつもは無言での転移だが、今日は呪文を唱えながら、汗を額に
滲みさせながらも転移させてくれた。
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