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治癒術士ベン
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俺は、この道一筋治癒術を極めるためだけに生まれてきたような男である。
小さい頃、転んでけがをしたことがあった。痛くて手で触っていたら、
血が止まり、そして、ケガもみるみるうちになくなってしまった。
傷を治せるなんて神のお力ではなかろうか。俺は色々と調べだした。
大きい図書館へ行き、魔力の本を片っ端から読んでいった。
そして、それは魔力により、傷を治せたということがわかった。
そこからは、危険な実験もした。自分で刃物で傷をつけ、どこまでなら
治るのか。どの程度の魔力でどの程度まで回復させることができるのか
ということを調べた。骨折したときは大変だった。痛みとケガは治せたが
折れた骨までは治すことはできなかった。さすがに、その時は自分の
見立ての甘さに後悔したものだ。気になったことはすべて、調べないと
気が済まない性格だった。そして、完璧に何事も全うしたかった。
だから、学生時代は、とても大変だった。皆が皆俺ほど頭が
いいわけではなかったからだ。頭が筋肉でできているカインや
女好きのラリーとさまざまなあほ共たちと生活していたが、
本当にバカすぎて、虫唾が走った。実験やテストはすべて満点でないと
気が済まないのに、グループワークなんかもってのほかだ。
罵声を浴びせ、奴らはやっとまともにやろうとする。
あんな奴らと一緒にいるなんて二度とご免だ。
そんな嫌な昔の頃を思い出していたある日、お師匠様が俺の家にやってきた。
ラリーが記憶喪失になったから治してほしいと。しかし、俺には不可能だった。
神の手をもつ俺が治せないだと俺は信じられなかった。傷ついていると、
お師匠様はとんでもないことを言い出した。もしかした、異世界人の女が
治せる力を持っているかもしれないから、治癒術を教えてやってくれだと?
俺よりすごい力を持つ奴が存在するなどあってたまるか。俺はその女の力を
調べるためにもその話を請け負った。
次の日、その女はやってきた。
「アズサと言います。カインの婚約者です。お手やわらかに
ご指導よろしくおねがいします」
カインの婚約者だと。絶対こいつも頭悪いぞ。どうしようか。
いや、でもお師匠様が力があると認めている以上、投げ出すわけにはいかない。
「ベンだ。俺の指導は厳しいから弱音を吐かずついてこい」
そう言って、俺は特訓をはじめた。
まず、はじめは力の種類を判別するために、アズサに手を出させた。俺は、
女の手など初めて握ったので、小さくて驚いたが、すぐに集中する。
ん~黄色い光が強いな。癒しの力かと思い、アズサに確認する。
「お前の力は、癒しの力で間違いないか」
「たぶんそうだと思います。お師匠様が言っていたので」
なんだ。こいつ、自分の力も理解していない、バカかよ。
イライラするわ。治癒術は普通白い光である。俺にはない癒しの力。
悔しい。とりあえず、手を離した。
「俺に癒しの力を使ってみろ」
アズサは、どうしていいかわからなかったが、お師匠様に手を握れと
言われていたのを思い出し、ベンの手を握った。
「癒しの力が伝わりますように」
そう願いながら、手を握った。
俺は、驚いた。先ほどまでのイライラや悔しいという思いが消え去っている。
コイツには、負の力を抑え込む、もしくは、相殺させてしまうのかもしれない。
しかし、感じた力は非常に弱いものであった。これを大きく利用できれば、
この世界から悪事は消えてしまうのではないかという幻想すら抱くことができる。
この実験が成功すれば、俺は本当の国を救った神になれるぞ。
俺は、目標ができ、指導にやる気を見い出せるようになったのである。
小さい頃、転んでけがをしたことがあった。痛くて手で触っていたら、
血が止まり、そして、ケガもみるみるうちになくなってしまった。
傷を治せるなんて神のお力ではなかろうか。俺は色々と調べだした。
大きい図書館へ行き、魔力の本を片っ端から読んでいった。
そして、それは魔力により、傷を治せたということがわかった。
そこからは、危険な実験もした。自分で刃物で傷をつけ、どこまでなら
治るのか。どの程度の魔力でどの程度まで回復させることができるのか
ということを調べた。骨折したときは大変だった。痛みとケガは治せたが
折れた骨までは治すことはできなかった。さすがに、その時は自分の
見立ての甘さに後悔したものだ。気になったことはすべて、調べないと
気が済まない性格だった。そして、完璧に何事も全うしたかった。
だから、学生時代は、とても大変だった。皆が皆俺ほど頭が
いいわけではなかったからだ。頭が筋肉でできているカインや
女好きのラリーとさまざまなあほ共たちと生活していたが、
本当にバカすぎて、虫唾が走った。実験やテストはすべて満点でないと
気が済まないのに、グループワークなんかもってのほかだ。
罵声を浴びせ、奴らはやっとまともにやろうとする。
あんな奴らと一緒にいるなんて二度とご免だ。
そんな嫌な昔の頃を思い出していたある日、お師匠様が俺の家にやってきた。
ラリーが記憶喪失になったから治してほしいと。しかし、俺には不可能だった。
神の手をもつ俺が治せないだと俺は信じられなかった。傷ついていると、
お師匠様はとんでもないことを言い出した。もしかした、異世界人の女が
治せる力を持っているかもしれないから、治癒術を教えてやってくれだと?
俺よりすごい力を持つ奴が存在するなどあってたまるか。俺はその女の力を
調べるためにもその話を請け負った。
次の日、その女はやってきた。
「アズサと言います。カインの婚約者です。お手やわらかに
ご指導よろしくおねがいします」
カインの婚約者だと。絶対こいつも頭悪いぞ。どうしようか。
いや、でもお師匠様が力があると認めている以上、投げ出すわけにはいかない。
「ベンだ。俺の指導は厳しいから弱音を吐かずついてこい」
そう言って、俺は特訓をはじめた。
まず、はじめは力の種類を判別するために、アズサに手を出させた。俺は、
女の手など初めて握ったので、小さくて驚いたが、すぐに集中する。
ん~黄色い光が強いな。癒しの力かと思い、アズサに確認する。
「お前の力は、癒しの力で間違いないか」
「たぶんそうだと思います。お師匠様が言っていたので」
なんだ。こいつ、自分の力も理解していない、バカかよ。
イライラするわ。治癒術は普通白い光である。俺にはない癒しの力。
悔しい。とりあえず、手を離した。
「俺に癒しの力を使ってみろ」
アズサは、どうしていいかわからなかったが、お師匠様に手を握れと
言われていたのを思い出し、ベンの手を握った。
「癒しの力が伝わりますように」
そう願いながら、手を握った。
俺は、驚いた。先ほどまでのイライラや悔しいという思いが消え去っている。
コイツには、負の力を抑え込む、もしくは、相殺させてしまうのかもしれない。
しかし、感じた力は非常に弱いものであった。これを大きく利用できれば、
この世界から悪事は消えてしまうのではないかという幻想すら抱くことができる。
この実験が成功すれば、俺は本当の国を救った神になれるぞ。
俺は、目標ができ、指導にやる気を見い出せるようになったのである。
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