【完結】異世界に転生したら、元カレが敵みたいですが、溺愛騎士様がいるので大丈夫です。

家族とのお別れ

 次の日、辞表を持って会社に行った。丸井係長には、これ以上迷惑を

かけられないと、頭を下げて辞表を提出した。丸井係長も

今までおつかれさんと言ってくれた。私は、長年勤めた会社のデスクを

整理しながら思い出がよみがえり、泣きそうになっていた。

片付けも終わり、総務部の全員に挨拶をする。

「ありがとうございました」

私は、丁寧にあいさつをした。意外に荷物があったのでタクシーを拾おうとしたら、

会社の前に、黒いセダンの車が止まっていた。その車の窓が開く。

「梓、送ってやるよ」

「ゆう、大丈夫だよ」

「俺にも何か手伝わせてくれよ。あっちの世界で俺めっちゃお前に迷惑かけたし。本当にすまなかった」

「もう、過ぎたことだからいいよ。なら荷物お願いしようかな」

「よし」

そう言って、ゆうは、車のトランクを開けて段ボールを直して、車は発車した。

「やっぱり、あっちの世界に行くんだな」

「うん。カインと離れたくないんだ」

「お前もはっきり自分の意見が言えるんだな。俺の時は俺を優先してくれてたから梓の意志なんか考えたこともなかったよ」

「そうだね。私もゆうの言う通りにしなきゃ、我慢すればいいんだって思ってたから。ごめんね」

「いや、俺が未熟だったんだよ。ごめん」

二人は、ごめんばっかりで笑ってしまった。家に着き、ゆうにお別れする。

「ゆう、今までありがとう。これから素敵な彼女見つけて幸せになってね」

「おう。お前もカインとお幸せにな」

「ありがとう」

二人は、本当のお別れをした。その夜、今中家は、ごちそうだった。

唐揚げに、ピザ、すし、てんぷら、煮物、パスタ、グラタン、ステーキ、ケーキ

たくさんの食材がテーブルに並んでいる。

「梓の好きなもの全部作ったり買ったりしたらこんなになちゃったわ。残してもいいから食べたいものいっぱい食べなさい。もう二度と食べられないんだからぁ～」

母は泣いた。母が泣くところなんか見たことあっただろうか。いつも陽気で

面白い母が泣いている。本当にもう会えないのだと自覚してしまう。

私も思いっきり泣いた。すると、父が

「おい、この唐揚げ甘いんだがお前、また砂糖と塩間違えただろう」

さずが、空気の読めない父。二人してその発言で泣き顔から笑顔に変わる。

「またやっちゃたわね。よし、みんなでパーティしましょ、梓の結婚お祝いに乾杯」

「乾杯」

「もぐもぐ乾杯」

そして、両親にお別れと感謝の気持ちをたくさん込めたお手紙を渡した。

読むと辛いからと梓が旅立ってから見ると両親は言った。

今泉家では盛大にパーティが開かれ、無事私の結婚祝いとお別れ会は終わった。

次の日、お別れするのは辛いからと両親に話をし、朝の４時に起きて一人で

転移することにした。

私もたぶん泣いちゃうから、これでよかったんだ。本の魔法陣の書いた

ページを開き、癒しの光を注ぐ。ベンにおしえてもらったように

丁寧にイメージしていった。

すると、私は光に包まれていた。家をもう一度見た。

「さようなら。お父さん、お母さん、長生きしてね。元気でね」

私は旅立とうとした時、

「梓、幸せになんなさいよ」

と両親が号泣しながら叫んでいた。私は、起きないって言ってたのにやっぱり起きて

こっそり窓からのぞいていたんだろう。

両親に対して嬉しさと会えない悲しさでやはり、私も号泣してしまった。

「ありがとう」

そして、わたしは日本に二度と戻れなくなったのである。カインの待つ

ディバユニへと帰っていった。