猫扱いされても生きていたい。

来佳

文字の大きさ
上 下
1 / 25
1章

1話

しおりを挟む
ある朝のこと、僕は突然群れを追い出されてしまった。
理由は簡単に言えば体色が変わったことらしい。いままでさんざんと群れのために戦ってきたのに、進化の先が少し違っただけで、あんなに迫害されるなんてひどいやつらだ。
たしかにこの白い毛皮は少々目立つし、なんだかサイズも小さくなった気がするが、にしてもひどい。

だがしかし悩んでここで立ち止まっていてはいけない。どうにかして生活の土台を作らなければならない。新しい群れか、小動物の多い場所を確保しなければならない。

とりあえずここから離れないと、今は許されてはいるが、それは一時だけで、次群れに出くわすことがあれば容赦なく襲ってくるだろう。僕はそそくさと群れの行動範囲から離れるように進んでいく。
つい最近に食事をしたから、5日くらいは食事を取らなくてもなんとかなるだろう。僕はそう思って山をかけていった。

そんなこんなで旅を始めた僕だが、最初の2、3日は見たことのある場所、嗅いだことのある匂いもあるし、お腹もまあ我慢できるくらいでなんとかやってきた。

しかし4日もすぎるとお腹もすいてくるし、見知らぬ土地で感じる新しい匂いが僕の癇に障る。定住できそうなところもない。ここ4日間タイミングがあればと狩りのタイミングを狙ってはいたが、数が多かったり、相手が強大だったりで攻撃できなかったうえに、いつも見る小動物までもなぜか見つからない。このままではまずい。もう数的不利があっても攻撃をして、なんぞ奪わねば死んでしまうとわかるほどまできてしまった。

そんな風に餌を探してついに7日目になった。今日ここまでくると、僕一匹ではもう限界だ。緊張も切れはじめ、腹は空いている。ふらふらと歩いているとついに街道にまで出てしまった。ここは人間が自分勝手に森を切ったり、石を貼ったりして作られた道だ。最近まではここに近づくと気分が悪くなって来れなかったのだが、それすらも感じられないほどに僕が弱ってしまったのかと危機感をより感じる。
街道の近くには動物は少ないし、魔物も群れを作るのがほとんどだ。今の僕では太刀打ちできないだろう。どうしようか、森に戻ろうかとも思ったが、大分と暗くなってきた今になって森に戻るのは危険かもしれない。街道は餌はないが敵もいない。今日はここを進んで、朝になったらまた森に戻ろうと僕は最後の力を振り絞って街道に沿って歩き始めた。

しばらく進むと何やら灯りが見えてきた。どうやら運悪く人間がここで野営しているようだ。パッと見るだけで7人は確実にいる。襲うのは不可能だ。森に入って避けようかとも思ったが、もう夜中になってせっかく危険を避けるために街道を進んだのにここで戻っては本末転倒だ。
少し考えて、ここは嫌だが人間の力に頼ることにした。
さっと飛び出して、にゃぁと声をかければ、僕を猫なんかと間違えて少しは優しくしてくれるかもしれない。それに人間の中には魔物を飼うやつもいると聞く。そのどちらかに当たれば何とか生きて行けるはずだ。
僕はそう思い人間たちに近づいていった。
しおりを挟む

処理中です...