猫扱いされても生きていたい。

来佳

文字の大きさ
11 / 25
1章

11話

しおりを挟む
邸宅の中は外に負けじと品のある装飾品で飾られていて、匂いも宿舎に比べれば何倍もましだ。
騎士たちと比べて綺麗好きな人間が多いと思われる。足元も冷たい板ではなく、布が敷かれて柔らかい上に僕の足にあたたかい。

「いい場所でしょう?」

きょろきょろと見回す僕にお嬢様は優しく話しかける。
僕はそれににゃぁと答える。

「こちらにおいで」

おいでという割に僕に近づいてくる。触れれるくらいまで近づくと、周りの制止も無視して僕を抱き上げてくれる。

「いい子ね。向こうは楽しかったかしら?」

僕に優しく声をかけてくれ、そのまま客間らしき場所へと連れて行ってくれる。
中に入ると今日まで見た人間にはない特徴の人間がソファーに座っていた。騎士たちのようにがたいも良いのに、服は形状こそ全然違うが、メイドやお嬢様のように薄い。
寒くなってきたというのに不思議なものだ。

「その子が例の子ですね」

「はい」

「いただいた写影機の物よりも少し大きくなりましたかな」

「来たばかりの時に写しましたから少し成長したかもしれませんわ」

「ははは。サイズ調整の機能を付けて置いて正解でしたな」

「そうですわね。これからもっと大きくなりますものね」

とお嬢様は僕の手を持って縦にちょこちょこと振りながら笑う。
どうやらこの人間は商人のようで、何やら首飾りの入った箱ををお嬢様の方に押し出す。

「それではこれを首につけていただいて、宝石部分に魔力を流していただければそれで完了でございます」

「わかりましたわ。シロ、こっち向いて」

僕はお嬢様の方へと身体をむけて、少し胸を張って首につけやすいように体を見せる。

「いい子ね」

僕の頭をひと撫でして、赤い宝石のはまった首飾りを僕につける。お嬢様の目と同じ色だ。

「お似合いですね。あとは魔力を流すだけで契約完了となります。私どもの商会の保証書は箱の方に入っております」

お嬢様はふと力を込めてすぐに商人の方へと向いた。

「本当にこの子に似合っているわ。難しい注文もなんなくやりとげて流石ね」

「あはは。気に入っていただけてよかったです。これからもお嬢様のご依頼とあれば何でも最大限させていただきますので、どうかごひいきにお願いします」

「うふふ。また何かあったら頼みますわ。ミーナ送って差し上げて」

「はい。どうぞこちらへ」

用事が終わるとすぐに商人は出て行ってしまった。知らない人間がいなくなったので僕はお嬢様からもらった首飾りを少し撫でてみる。
爪が当たっても傷つかないように何らかの魔法がかかってるようで、触れると少し反発する。つるつるとした宝石がとてもきれいだ。
ありがとうの気持ちを込めて鼻をお嬢様のほほにつける。
お嬢様はうふふと笑うのだった。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

喪女だった私が異世界転生した途端に地味枠を脱却して逆転恋愛

タマ マコト
ファンタジー
喪女として誰にも選ばれない人生を終えた佐倉真凛は、異世界の伯爵家三女リーナとして転生する。 しかしそこでも彼女は、美しい姉妹に埋もれた「地味枠」の令嬢だった。 前世の経験から派手さを捨て、魔法地雷や罠といったトラップ魔法を選んだリーナは、目立たず確実に力を磨いていく。 魔法学園で騎士カイにその才能を見抜かれたことで、彼女の止まっていた人生は静かに動き出す。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

処理中です...