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椿の陰に鬼を見た画家
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椿の陰に、鬼がいた。
画家はその姿を確かめようと、もう少しよく見ようとしたが、鳥の鳴き声にハッと驚いて、顔を上げた。ギャアッ、ギャアッ、と気味の悪い鳥の声だった。
鬼の姿は、消えていた。
画家が見ているうちに、一輪の椿の花が観念したようにポタリと落ちる。緑の草と茶色の土の上にポタリと落ちた赤い椿の花は、みるみるうちに萎れて、汚されていくようだった。燃えるような黄色い蕊が、この椿の花の最期の鼓動のようである。
ザワザワと、嫌な風が吹いている。
画家は落ちた椿の花に寄り、その花を仔細に眺めていたが、やがて、そうすべきであったことを思い出したように、薄汚れた靴の底で、椿の花を踏み潰した。花びらが解けて、黄色い蕊が砕けて、グシャグシャとなるまで、丁寧に踏み潰した。
画家の妻が死んで、二十年が経っていた。
この画家は、今年六十三歳である。妻は画家の、五歳下だった。今生きていたとして、六十にもなっていない。死ぬとき、妻は見えなくなった目から一粒の涙を零した。子どもはいなかった。
画家の妻が死んで、二十年の間、画家は自分の作品を描いていない。指導のためにデッサンを教えることはあったが、自分の為に描く自分の作品、というものを描いていない。絵画教室で、子どもたちを相手に絵を教えていた。子どもが絵を習いたがる、というよりも、親が子どもに絵を習わせたがるのである。色の配合や遠近法を全く気にしない子どもたちの絵は、画家の心を、ほんの少し、慰めてくれた。しかし、画家が忘れた色を、思い出させることはなかった。絵画教室は、教え子の一人に譲ってしまった。引退、という形である。
色を忘れた。美しいと思う心を忘れた。それでも、画家は再び、画材を持って歩いている。
この先に、ある風変わりな風習が残った村があるという。
いわゆる、人身御供である。
画家の背中で、古くなった筆と、絵の具がガシャガシャと鳴っている。画帳と、新しく買った画布も一緒に背負い、イーゼルを肩から提げている。これから絵を描く。俺だけの絵を描く。きっと描く。そう思って、画家の胸は不思議な高鳴り方をした。まるで、山猫が、初めて人間の手で背中を愛撫され、毛を逆立てるかのように。
その昔、村に日照りが続き、飢饉となった。喉の渇きに耐えかねて海の水を飲んだ者は、焼けるような喉の渇きに苦しんで死んだ。死体の骨をしゃぶって飢えを凌ぐ者もいた。虚ろな目を開いた人間の体を、痩せた獣が貪った。地獄絵図だった。
一人の娘が、海の中に入っていった。合掌をし、目を閉じていた。長い黒髪を、乾いた風が吹くのに任せていた。娘には、病の母がいた。草を噛んで空腹を紛らわそうとする幼い弟と妹がいた。雨は海の向こうからやってくるという。娘は雨を呼ぶ為に、海の中に入っていったのだ。
空が曇り、ザワザワと湿った風が吹き、渇いた村に黄金の雨が降り注いだ。人々は口を開けて、黄金の雨を飲んだ。顔を黄金の涙が濡らし、人々は黄金の涙を流しているようだった。
村は、飢饉から救われた。
娘は帰ってこなかった。
娘は、海の神様の嫁になったのだと言われた。
その、五十年後、脇の下に黄金の鱗を持つ娘が生まれた。海の神様の嫁になった娘の生まれ変わりだと、人々は言った。黄金の鱗を持つ娘は、珠のように人々から愛された。
そして、黄金の鱗を持って生まれた娘が十三となった年、娘を海に流した。十三という年齢は、その娘の前世といわれる娘が海の神様の嫁となったと言われるのと同じ歳である。
それ以来、五十年に一度、脇の下に黄金の鱗を持つ娘が生まれ、その娘が十三となる年に、海に流すことになっている。黄金の鱗を持つ娘が十三になるまでの間、赤い着物を着た鬼が娘の傍につき、娘を守り、仕えるのである。
よくある昔話、といえばそうである。
この画家の教え子の祖父に、その村の出身だという者がいた。その老人が子どもの頃、海の神様に娘を捧げる儀式を見たという。大人も子どもも、白い着物を着ていた。棺を乗せた小舟を、数人の男衆が押して、海に流していた。小舟は海の上を漂い、遠ざかっていった。赤い着物を着た鬼が、娘が入った棺を乗せた小舟に向かって、一心に手を合わせて、硬く目を閉じていた。椿の花のように赤い着物だったと、その老人は言っていなかったか。
勘定すると、今年がその儀式に当たる年である。
街に電柱の立つ時代である。神への祈りで災厄を退けることができると信じられていた時代の儀式が、そのまま残っているとも思わない。老人が見た小舟に乗せられた棺の中に、娘はいなかったかもしれない。小舟に向かって祈る姿をしていた者も、まさか、本当の鬼ではなかっただろう。老人、とはいうものの、画家とそれほど変わらぬ歳である。小舟に乗せられた棺よりも、その周りを飾る、色とりどりの花の方が、その老人の心に、鮮やかに残っていた。
それでも画家は、その儀式を見たいと思った。棺を乗せた小舟が、海に流されていく姿を、写したかった。その小舟に向かって、祈る鬼の姿を写したかった。
ザワザワと、風が鳴る。
画家の魂を、呼んでいるようだ。妻が死んで以来、その一部をどこかに落としてきた画家の魂に、お前はまだ生きているのだぞと、囁いているようだ。
喜び、なのだろうか。
若い頃、他人の評価に怯えて展覧会に出展することすらなかった画家の絵を、死んだ妻だけが、褒めてくれた。妻は、画家の描く空の色をその目に映し、画家の描いた空気を肌で感じ、画家の描く風景の中で遊んでいた。あなたの絵が本当に好きなのだと、妻は言っていた。
画家は、人を喜ばせる為に絵を描いたことは、一度もない。自分が描きたい風景を、自分勝手に描いていただけだ。そんな絵を、妻は好きだと言ってくれていた。本当に好きなのだ、と。
画家は画家の為に、描かなければならない。
画家の絵を愛してくれた妻は、もういない。今、画家が画家の為に描いた絵を誰かが見てくれたところで、褒めてもらえるとも思わない。
褒めて欲しいわけではない。
描かなければならない、と思っただけだ。
画家の為に。
ザワザワザワ……
胸が鳴る。
次第に、画家の額には冷たい汗が湧いてきた。掌で額を擦ると、ヌメヌメと、気持ちの悪い感触だった。掌に汗がついて、光っている。腹の底から、熱いものが湧きたって、喉がヒリヒリと渇いてくる。抑えがたい、画家の欲望だった。
黄金の鱗を持つ娘は、愛児。
メゴに仕える鬼は角児という。
画家はその姿を確かめようと、もう少しよく見ようとしたが、鳥の鳴き声にハッと驚いて、顔を上げた。ギャアッ、ギャアッ、と気味の悪い鳥の声だった。
鬼の姿は、消えていた。
画家が見ているうちに、一輪の椿の花が観念したようにポタリと落ちる。緑の草と茶色の土の上にポタリと落ちた赤い椿の花は、みるみるうちに萎れて、汚されていくようだった。燃えるような黄色い蕊が、この椿の花の最期の鼓動のようである。
ザワザワと、嫌な風が吹いている。
画家は落ちた椿の花に寄り、その花を仔細に眺めていたが、やがて、そうすべきであったことを思い出したように、薄汚れた靴の底で、椿の花を踏み潰した。花びらが解けて、黄色い蕊が砕けて、グシャグシャとなるまで、丁寧に踏み潰した。
画家の妻が死んで、二十年が経っていた。
この画家は、今年六十三歳である。妻は画家の、五歳下だった。今生きていたとして、六十にもなっていない。死ぬとき、妻は見えなくなった目から一粒の涙を零した。子どもはいなかった。
画家の妻が死んで、二十年の間、画家は自分の作品を描いていない。指導のためにデッサンを教えることはあったが、自分の為に描く自分の作品、というものを描いていない。絵画教室で、子どもたちを相手に絵を教えていた。子どもが絵を習いたがる、というよりも、親が子どもに絵を習わせたがるのである。色の配合や遠近法を全く気にしない子どもたちの絵は、画家の心を、ほんの少し、慰めてくれた。しかし、画家が忘れた色を、思い出させることはなかった。絵画教室は、教え子の一人に譲ってしまった。引退、という形である。
色を忘れた。美しいと思う心を忘れた。それでも、画家は再び、画材を持って歩いている。
この先に、ある風変わりな風習が残った村があるという。
いわゆる、人身御供である。
画家の背中で、古くなった筆と、絵の具がガシャガシャと鳴っている。画帳と、新しく買った画布も一緒に背負い、イーゼルを肩から提げている。これから絵を描く。俺だけの絵を描く。きっと描く。そう思って、画家の胸は不思議な高鳴り方をした。まるで、山猫が、初めて人間の手で背中を愛撫され、毛を逆立てるかのように。
その昔、村に日照りが続き、飢饉となった。喉の渇きに耐えかねて海の水を飲んだ者は、焼けるような喉の渇きに苦しんで死んだ。死体の骨をしゃぶって飢えを凌ぐ者もいた。虚ろな目を開いた人間の体を、痩せた獣が貪った。地獄絵図だった。
一人の娘が、海の中に入っていった。合掌をし、目を閉じていた。長い黒髪を、乾いた風が吹くのに任せていた。娘には、病の母がいた。草を噛んで空腹を紛らわそうとする幼い弟と妹がいた。雨は海の向こうからやってくるという。娘は雨を呼ぶ為に、海の中に入っていったのだ。
空が曇り、ザワザワと湿った風が吹き、渇いた村に黄金の雨が降り注いだ。人々は口を開けて、黄金の雨を飲んだ。顔を黄金の涙が濡らし、人々は黄金の涙を流しているようだった。
村は、飢饉から救われた。
娘は帰ってこなかった。
娘は、海の神様の嫁になったのだと言われた。
その、五十年後、脇の下に黄金の鱗を持つ娘が生まれた。海の神様の嫁になった娘の生まれ変わりだと、人々は言った。黄金の鱗を持つ娘は、珠のように人々から愛された。
そして、黄金の鱗を持って生まれた娘が十三となった年、娘を海に流した。十三という年齢は、その娘の前世といわれる娘が海の神様の嫁となったと言われるのと同じ歳である。
それ以来、五十年に一度、脇の下に黄金の鱗を持つ娘が生まれ、その娘が十三となる年に、海に流すことになっている。黄金の鱗を持つ娘が十三になるまでの間、赤い着物を着た鬼が娘の傍につき、娘を守り、仕えるのである。
よくある昔話、といえばそうである。
この画家の教え子の祖父に、その村の出身だという者がいた。その老人が子どもの頃、海の神様に娘を捧げる儀式を見たという。大人も子どもも、白い着物を着ていた。棺を乗せた小舟を、数人の男衆が押して、海に流していた。小舟は海の上を漂い、遠ざかっていった。赤い着物を着た鬼が、娘が入った棺を乗せた小舟に向かって、一心に手を合わせて、硬く目を閉じていた。椿の花のように赤い着物だったと、その老人は言っていなかったか。
勘定すると、今年がその儀式に当たる年である。
街に電柱の立つ時代である。神への祈りで災厄を退けることができると信じられていた時代の儀式が、そのまま残っているとも思わない。老人が見た小舟に乗せられた棺の中に、娘はいなかったかもしれない。小舟に向かって祈る姿をしていた者も、まさか、本当の鬼ではなかっただろう。老人、とはいうものの、画家とそれほど変わらぬ歳である。小舟に乗せられた棺よりも、その周りを飾る、色とりどりの花の方が、その老人の心に、鮮やかに残っていた。
それでも画家は、その儀式を見たいと思った。棺を乗せた小舟が、海に流されていく姿を、写したかった。その小舟に向かって、祈る鬼の姿を写したかった。
ザワザワと、風が鳴る。
画家の魂を、呼んでいるようだ。妻が死んで以来、その一部をどこかに落としてきた画家の魂に、お前はまだ生きているのだぞと、囁いているようだ。
喜び、なのだろうか。
若い頃、他人の評価に怯えて展覧会に出展することすらなかった画家の絵を、死んだ妻だけが、褒めてくれた。妻は、画家の描く空の色をその目に映し、画家の描いた空気を肌で感じ、画家の描く風景の中で遊んでいた。あなたの絵が本当に好きなのだと、妻は言っていた。
画家は、人を喜ばせる為に絵を描いたことは、一度もない。自分が描きたい風景を、自分勝手に描いていただけだ。そんな絵を、妻は好きだと言ってくれていた。本当に好きなのだ、と。
画家は画家の為に、描かなければならない。
画家の絵を愛してくれた妻は、もういない。今、画家が画家の為に描いた絵を誰かが見てくれたところで、褒めてもらえるとも思わない。
褒めて欲しいわけではない。
描かなければならない、と思っただけだ。
画家の為に。
ザワザワザワ……
胸が鳴る。
次第に、画家の額には冷たい汗が湧いてきた。掌で額を擦ると、ヌメヌメと、気持ちの悪い感触だった。掌に汗がついて、光っている。腹の底から、熱いものが湧きたって、喉がヒリヒリと渇いてくる。抑えがたい、画家の欲望だった。
黄金の鱗を持つ娘は、愛児。
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