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第百八十八話 END

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 リカオンはさもそれが当然といった顔で答える。

「そうですが? なにか問題でも?」

 そのときマニウスが言った。

「だから晩餐会のときにあれだけ帝国の話を聞きたがったのですね?」

「そうです。こうなるのではないかと思ってましたから」

 あまりにも堂々としたその態度にアウルスは無言になり、そしてため息をついた。

「アンジー、君を望めばこういうこともあるとは覚悟していたが……」

 そこでスパルタカスが一歩前に出る。

「私も、閣下がロベリアを離れ帝国へ行くなら護衛として生涯閣下のそばについて行く所存です」

 そう言うとスパルタカスはアルメリアの前に跪く。

「この命尽きるまで、閣下のそばで変わらぬ愛と忠誠を」

「スパルタカス?! そんな、騎士団を離れるなんてダメですわ。貴男は騎士団に必要な存在ですもの」

「では閣下にとって私は必要ない存在だと?」

「もちろん、違いますわ! スパルタカスにもたくさん助けてもらいましたもの」

 それを聞いてスパルタカスは微笑む。

「ありがとうごさいます。これから誠心誠意お仕えいたします」

「はい……。え? それってどういうことですの?」

 戸惑うアルメリアにルーカスが声をかける。

「アルメリア、私も今後は騎士を志すつもりですが、スパルタカスについて行こうと思っています」

「え? ルーカス? まって、貴男は公爵家の跡取りですわよね?」

「そうですが、妹のエミリーがいますから平気です」

 そう言われアルメリアは頭を抱えた。そこにルーファスが声をかける。

「彼らの自由意思ですから、そこは受け入れてあげてはどうでしょうか」

 アルメリアは顔を上げてルーファスを見つめる。

「そんなに簡単に決められませんわ」

「そうでしょうか、彼らは決して諦めないと思いますよ?」

 ルーファスがそう言うと、スパルタカスとルーカスが即座に反応する。

「当たり前だ、私たちの決断はそんなに軽いものではない! 閣下のことをそう簡単に諦めることができると思うか?」

 そう言われ、ルーファスは一瞬黙ると首を振った。

「そうですよね……私もその気持ちはよくわかります。かくいう私も……」

 そう言って黙り込んだ。アウルスはルーファスを見つめると言った。

「まさかルフス、お前もか……」

「えぇ、ヒフラの孤児院にいたころからですかね」

 そう言って微笑んだ。

 そこでアルメリアは、はっとしてルーファスに聞きたかったことを思い出し質問する。

「ルフス、貴男はヒフラで会ったあのルフスですの?」

 ルーファスは苦笑する。

「そうです。騙していたようで申し訳ありません」

 アルメリアは驚いて質問する。

「でも、ルフスは癖っ毛で髪の色も……」

 そう言うとルーファスは恥ずかしそうに頭を掻いて答える。

「あの頃はほとんど水浴びもしていませんでしたからね、髪の毛が埃っぽくて赤毛の癖毛に見えたかもしれませんね。ですが元々この髪色と髪質なのです」

「でも、ルフスは一度は帝国へ行ったのでしょう?」

 その質問にアウルスが答える。

「チューベローズを調べるために彼には潜伏してもらった」

 そう言われて突然バッドエンドの内容を思い出す。帝国はロベリア国に潜入し、貴族たちを調べていたと言った。そして最後に写し出されたスチルには、皇帝の背後に神官のような人が描かれていたのだが、それはルーファスにとても似ていた。

 そこでダチュラがルーファスに媚びた理由がわかった。ダチュラはルーファスが帝国のスパイだと知っていたのだろう。

 無言でそんなことを考えていると、ルーファスはアルメリアが騙されていたことに怒ったのだと思ったらしく突然頭を下げた。

「騙していてすみませんでした!」

 アルメリアは慌てて答える。

「ルフスが謝る必要はありませんわ。だってそれがルフスの役割だったのでしょう? それよりも、ヒフラで一緒に遊んだルフスと全然違っていて驚きましたわ」

 ルーファスは苦笑いをした。

「あの頃はやんちゃでしたからね」

 アルメリアを背後から抱きしめたままのアウルスが口を出す。

「ルフス、今さらアルメリアに手を出そうと考えているわけではないだろうな?」

 ルーファスは苦笑する。

「今さらと言うか、最初から諦めるのが早すぎたのではないかと今なら思います」

「渡さないからな」

「それを選ぶのはアルメリアですよ。ね?」

 そう言ってルーファスはアルメリアの顔を覗き込む。慌ててアウルスがルーファスからアルメリアを引き離した。

「アルメリアは私のものだ!」

 その台詞にムスカリが言う。

「まだわからないだろう?」

 アドニスは頷く。

「選ぶのはアルメリアですからね」

 リカオンは微笑む。

「僕はいつも一番そばにいますから、陛下よりもお嬢様と近いと言えます。そのうちお嬢様も気が変わるかもしれませんね」

 スパルタカスが胸に手を当てて言う。

「私もおそばで閣下を護ります。それだけでも幸せなのです」

 その後ろでルーカスが頷く。

「本当にその通りです。お守りできることを幸せに思います」

 リアムはアルメリアの手を取る。

「ロベリア国と帝国は良好な関係ですよね? ではアルメリアが帝国へ行くのなら、彼女が帝国とロベリア国を繋ぐためにも、頻繁に我々と会う必要がある。ならば私にもチャンスはありますね」

 アルメリアは思わず叫ぶ。

「もう! みなさんわたくしをからかっていますのね?!」

 一瞬全員動きを止めアルメリアを見つめると、声を出して笑った。アルメリアを抱きしめているアウルスがアルメリアの耳元で囁く。

「全員本気だよ。私は今後も苦労しそうだ……」




 こうしてアルメリアは断罪を避け、ロベリア国を救うことができたのだった。

 アルメリアの物語はまだまだ続くのだが、それはまた別のお話。
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