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10歳

10歳になる俺

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    少々グロい表現があります。お食事中や苦手な方はお控え下さい。あらかじめお伝え致します。


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フェル先生との感動の別れから早くも6年が経った。俺は今日をもって10歳となる。アリスは7歳である。アリスには魔術師としての才能があるようだ。遺伝かな。そして、俺はこの日を強く望でいた。待ちわびていた。約束通りなら、この場所に奴が現れることになる。気を引き締めないと。この6年間は修行を続けた。続けに続けた結果こうなった。

 ディオン      一級魔術師(仮)Lv 32

  体力  327,685,000/327,685,000
  魔力  587,954,000/587,954,000
 
  筋力  185,625,000/185,625,000
  俊敏  223,567,000/223,567,000
  魔攻  317,693,000/317,693,000
  魔防  306,587,000/306,587,000

    スキル
初級魔術Lv 99(R)、中級魔術Lv 82、上級魔術Lv 67、身体強化魔法Lv 99(R)、回復魔術Lv 52、浄化魔法Ⅱ(New)、飛行魔法Ⅲ(New)、詠唱破棄、オートシステム、硬化、リミッター、探知、鍛冶錬金Lv80、薬錬金Lv 67、魔術錬金Lv 42、創造錬金Lv 99(R)、隠蔽Lv 99(R)、鑑定Lv 99(R)

    称号(メニュー更新により追加)

神眼
鑑定スキルの限界を超えたものに与えられる。相手のすべてを見ることができる、がブライバシーに関するものは見ていい範囲を神が決めます。

心の深淵 
    隠蔽スキルが限界を超えたものに与えられる。ステータスを覗こうとしたものに精神的ダメージを与える。

人間を辞めし者 
    怪物同様の力を持つ者に与えられる。オーラがなんか違う?

創造神 
    創造錬金を極めたものに与えられる。神々しさが増します。

    俺は人間を辞めた。兄さんを救うために、みんなを守るために。かなり臭いことを言ってるが気にしない。いつ奴がやって来るか分からないからな。

    今年の誕生パーティは夜からの開催となった。どんどん人が集まってくる。ほとんどは商業会の方々だ。だから聞こえてくるのは仕事の話ばかりである。俺はアリスの側にいた。奴は絶対にアリスを狙ってくるに決まっている。そう思っていた。

    「ぐぁっ!」

    突然父上が倒れた。他の商業仲間たちと楽しく商談していたはずなのに。すぐさま人々の悲鳴が上がる。

    「お兄ちゃん。お父さんが…。」
    「見ちゃダメだ。俺から離れるんじゃない。」
    「うん…。」

    まだアリスは状況が把握出来てない。俺の推測からは毒でも盛られたのか?それよりいつ現れた?分からない。いったいどうなってる。母上っ!急がなきゃ。

    「シアンっ!」
    「…あ、は、はい。」

    手が震えている。かなり動揺しているようで目が小刻みに動いている。この状態のシアンに任せるのは不安だが。

    「シアン、アリスを頼む。」

    確か母上は疲れたから自室で休むと言っていた。俺は急いで母上のいる部屋に。

    『マスター嫌な気配を感じます。』

    そんなことはどうでもいい。扉には鍵が掛かっていたので素手で殴り飛ばす。

    「母上っ!どこに!?」 

    薄暗い部屋の中、興奮がゆっくりと治まってきて同時に異臭が漂い始めた。金属のようで生臭い。吐き気を堪えながら前を見る。嗤った顔がそこにはあった。

    「ククク、ディオン久しぶりだねぇ。君の大好きなマルクス兄さんだよ。」

    吐き気が一瞬にして引いていく。溢れでる醜い感情が俺の心を染め上げる。まだ理性は保てている。

    「生きてることを後悔させてやる。」

    『マスター挑発には乗ってはいけませんよ。』

    わかってる。しかしどうしようもなくなったらもとに戻してくれよ。

    「酷いなぁ。せっかく君のためにプレゼントを作ったのにさぁ。狂っちゃうくらい喜ぶと思ったんだぁ。見てよ僕の足下。」

    奴の足下には…肉塊が転がっていた。もはや誰かもわからないような。しかし俺には分かった。わかったときすでに俺の体は奴を殺しにかかった。
    
    「ぶっ殺す!!」

    奴の顔面を力いっぱいに殴り飛ばした。1億を越える筋力で殴ったのだ。必ず死ぬ!手応えはあった。

    「せっかちだねぇ。でもいい殺意だったよ。僕はね人の醜いものを糧に生きるのさ。つまり君の攻撃は効かないのさ醜い感情に支配された君じゃあねぇ。ざーんねーん!アハハハハハ。」

    『マスター浄化魔法を!』

    一瞬、黒に支配された俺が我に帰る。
   奴は言った。醜いものを糧に生きている。ならば取り出せばいい。醜いものが奴の本体、引きずり出してやる。

    「…浄化魔法展開。付与  封印。」

    魔法の構築にかかった時間はほんのわずか。0.2秒程。奴には地獄を味わってもらおう。永遠に痛みとトラウマを刻む牢獄。

    「タルタロス」
    「なんだ。おい、やめろっ!そんな魔法どこにあった。」
    「創ったのさ。てめぇのために。喜べよ。」

    タルタロス、神話に出てくる牢獄のようなものだ。この存在は神達の恐怖の対象らしい。喜べよ神に下る刑罰と同じいやそれ以上のものが与えられるのだからな。

    「死ぬっ。貴様ぁぁ。私は邪天柱の一人だぞっ。こんなもの、あああああぁぁぁ。」

    この魔法は浄化魔法だがかなり黒い。奴は鎖に繋がれ精神体が引きずり出される。そして黒いいや漆黒に染まった箱に引きずり込まれていった。残ったのは兄さん。奴はもういないはず。

    「兄さんっ。起きて!」

    動かない。奴には心が乗っ取られてただけのはず。なんでだ。何度も何度と兄さんを譜揺さぶる。母上も父上そして兄さんさえも守れなかった。10年も前から分かってたはずなのに。俺しか救えないのに。絶対に成功したはずなのに。

    『マスター。』

   創造錬金、そうだ命を再構築すればいいんだ。なんでも魔力のあるかぎり。俺には創造できる。

   『マスター、無理です。命の創造は神の意志に反します。使えば創造錬金のスキルは永遠に失われます。そして魂をすべて使ってもできるのは醜い塊です。』

    やってみなきゃ分かんないだろっ。それとも試したのかっ!?

    『過去に同じことをした者がいます。』

    それじゃ、生き返らせるのは無理なのか。どうすることもできないのか。ああ、ハハハ。誰も守ることなんかできない。世界は理不尽。どこへ行ってもそうか。向こうでは人による理不尽。こっちじゃ神による命の理不尽か。俺は無力だからだと思ってた、でも力があったって俺に人は守れない。守れなかったんだ。

    「理不尽だなぁ。」
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