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会合から数日が経ったある日。
律は山に戻る許可をもらった。一時的なものだったが、嬉しいことに変わりはない。
(信用があるのか、ないのか)
律は一人ではなかった。見張りの兵士が二人いる。その片方が食堂で殴った兵士なので、雰囲気はかなり悪い。
(もう逃げるつもりはないんだけど)
そんなことを考えつつ、都の関門を抜けて峠に入る。
そのときだった。
「ゔっ!」
頭に衝撃が走り、地面に伏せる。
最後に見えたのはあの兵士の嘲笑だった。
「律、起きなさい」
目を開けると、そこにはくたびれた男がいた。養父の鴟梟である。
「夢?」
「違います」
律は飛び起きて、鴟梟に抱きついた。苦しいと背中を叩かれ手を離す。
どうして、と訊ねる前にあたりの異変に気がついた。鬼がいるのである。
それも女や子供、老人ばかりだ。物置のような場所で、幽閉されているようだった。
「いったいなにが」
「我々は、勇州に囚われているのです」
簡潔すぎる物言いに律の疑問が深まる。
「待ってよ鴟梟。ちゃんと説明して」
鴟梟曰く。生活に必要な物資を得るために鬼の里に戻ったが、もぬけの殻になっていたらしい。
そして、運悪く捕まりその先に彼らがいたのだそうだ。
「男たちは?」
「つい先程出て行ったようです」
そのとき、物置の扉が開く。やってきたのは黒蟒だった。
あの方がいまの鬼の長です、と鴟梟が小声で言った。
(なんだって?)
黒蟒は律に目を留めると、
「鴟梟の様子を見るに、やはりお前が兄の子か」
侮蔑の表情で言った。
「人間と交わり子をつくるなど愚かにもほどがある」
意味がわからず鴟梟を見る。鴟梟は床をじっと見つめたまま口を開く。
「律。あなたは、かつて鬼の里を治めていた長の娘なのです」
つまり、律を見て兄の子だと話すあの男は、律の叔父ということになる。
衝撃の事実に律は呆気にとられたが、すぐに疑問が浮かぶ。
「なぜ鬼の長が人の国を治めている」
「気づいたのだ。平和ぼけした兄を殺した時にな」
その声には狂気が混じっていた。
「人間と交わるなど言語道断。本来、鬼は人より強い。山に隠れ住むのはおかしいだろう?」
だから鬼の国をつくることにしたのだと黒蟒。他の鬼たちは暗い表情で黙り込んでいる。律は眉を顰める。
「……だから殺すのか?」
「邪魔者は排除するべきだ。皆、それを望んでいる」
「女子供を閉じ込め、男たちを無理やり働かせているんだろう」
「っ、半端者が知ったような口を!」
黒蟒が刀を抜いて振りあげるが、鴟梟が体当たりをしてかばう。床に血が飛び散る。
「鴟梟!」
「お前も兄同様に馬鹿な男だ。死んだ者にいつまでも仕えて」
「ふざけるな。仲間をこんな目に合わせておいてなにが長だ」
「いずれ正しかったとわかる。お前は茨州を併合してから殺してやろう」
黒蟒はそう言って、部屋を出て行った。
律は山に戻る許可をもらった。一時的なものだったが、嬉しいことに変わりはない。
(信用があるのか、ないのか)
律は一人ではなかった。見張りの兵士が二人いる。その片方が食堂で殴った兵士なので、雰囲気はかなり悪い。
(もう逃げるつもりはないんだけど)
そんなことを考えつつ、都の関門を抜けて峠に入る。
そのときだった。
「ゔっ!」
頭に衝撃が走り、地面に伏せる。
最後に見えたのはあの兵士の嘲笑だった。
「律、起きなさい」
目を開けると、そこにはくたびれた男がいた。養父の鴟梟である。
「夢?」
「違います」
律は飛び起きて、鴟梟に抱きついた。苦しいと背中を叩かれ手を離す。
どうして、と訊ねる前にあたりの異変に気がついた。鬼がいるのである。
それも女や子供、老人ばかりだ。物置のような場所で、幽閉されているようだった。
「いったいなにが」
「我々は、勇州に囚われているのです」
簡潔すぎる物言いに律の疑問が深まる。
「待ってよ鴟梟。ちゃんと説明して」
鴟梟曰く。生活に必要な物資を得るために鬼の里に戻ったが、もぬけの殻になっていたらしい。
そして、運悪く捕まりその先に彼らがいたのだそうだ。
「男たちは?」
「つい先程出て行ったようです」
そのとき、物置の扉が開く。やってきたのは黒蟒だった。
あの方がいまの鬼の長です、と鴟梟が小声で言った。
(なんだって?)
黒蟒は律に目を留めると、
「鴟梟の様子を見るに、やはりお前が兄の子か」
侮蔑の表情で言った。
「人間と交わり子をつくるなど愚かにもほどがある」
意味がわからず鴟梟を見る。鴟梟は床をじっと見つめたまま口を開く。
「律。あなたは、かつて鬼の里を治めていた長の娘なのです」
つまり、律を見て兄の子だと話すあの男は、律の叔父ということになる。
衝撃の事実に律は呆気にとられたが、すぐに疑問が浮かぶ。
「なぜ鬼の長が人の国を治めている」
「気づいたのだ。平和ぼけした兄を殺した時にな」
その声には狂気が混じっていた。
「人間と交わるなど言語道断。本来、鬼は人より強い。山に隠れ住むのはおかしいだろう?」
だから鬼の国をつくることにしたのだと黒蟒。他の鬼たちは暗い表情で黙り込んでいる。律は眉を顰める。
「……だから殺すのか?」
「邪魔者は排除するべきだ。皆、それを望んでいる」
「女子供を閉じ込め、男たちを無理やり働かせているんだろう」
「っ、半端者が知ったような口を!」
黒蟒が刀を抜いて振りあげるが、鴟梟が体当たりをしてかばう。床に血が飛び散る。
「鴟梟!」
「お前も兄同様に馬鹿な男だ。死んだ者にいつまでも仕えて」
「ふざけるな。仲間をこんな目に合わせておいてなにが長だ」
「いずれ正しかったとわかる。お前は茨州を併合してから殺してやろう」
黒蟒はそう言って、部屋を出て行った。
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