男装少女の武勲譚

窓見景色

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 律は悔しそうに顔を歪め、鴟梟の手当てをする。

「やっと会えたのに死ぬつもり?」
「派手に見せただけで傷は浅い、いたっ。痛いです律」
「もうしないで」
「すみません」

 まわりの鬼たちは遠巻きに見ていたが、一人の女が布を手渡してくれる。

「……これ使いな」
「ありがとう」
「いいんだ。鴟梟さんには世話になったから」
「……」

 布を受け取り止血を終えると、律は立ち上がる。

「鴟梟、男たちは出立したんだよね」
「はい。戦の準備をしていました」

 佑鎮が子供の頃に見たという鬼の私兵。今も茨州が無事ということは、十数年なにをしていたのか。なぜ今日動くのか。

(機会を待っていたのかもしれない)

 襲う機会いくらでもあったはず。しかし最大限の効果を待っていて、それが今日だというのなら。

(そうか! 増援!)

 北方民族の襲撃でがら空きになった背中を狙うつもりだ。楊領主の杞憂が杞憂ではなかったということになる。

(早く楊領主に伝えないと)

「用はどうしてるんだ?」
「見張りつきですが、外に」

 鴟梟が答える。律はそれを聞くと、すぐに扉を叩いた。見張りの兵士が扉を開けた。

「なんだ」
「小用だ」

 予想通り、外に連れ出される。律は人気のないところまでいくと、男の首に手刀を入れた。
 その衣服を奪い、物置に戻り、外から鍵を開けた。

「さあ、今のうちに逃げよう」

 鴟梟が立ちあがるが、他の者は動かない。

(くそ、時間がないのに)

 律が苛立ちを含んだ声で言う。

「そう。ここにいたいならいるといい」
「律、言い方があるでしょう」

 発破をかける律をたしなめる鴟梟。鴟梟が諭すように皆に声をかける。

「平和を望むのであれば、ここを去るべきでしょう。戦に巻き込まれた男たちのことを忘れてはいけません」

 鬼たちは互いに顔を見合わせると、部屋の外に出た。

 戦に連れていかれたのだろう。警備は手薄だった。黒蟒の姿も見えない。
 見張りの兵士を一人ずつ倒しながら外へ出る道を探す。

 厩舎を見つけ、荷馬車で脱出することにした。馬が二頭で引く荷馬車が二台。そこに鬼たちをぎゅうぎゅうと押し込め、なんとか関門を出た。

 あたりの景色山になったとき。律は荷馬車の馬を一匹もらうと、先に行くことにする。

 女たちを連れて楊領主にこの事を伝えてほしいと鴟梟に頼む。この頭巾を見せればきっと無碍にはしないはずだと。

「律、これを持っていきなさい」

 綺麗な石の首飾りを渡される。

「鬼の長である証です。斬られたときに取り返しておきました」

 律はそれを受け取り馬に跨ると、戦場へ急いだ。
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