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2話
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結局、俺は治験の説明会に参加してみることにした。
説明会の当日、この日はとても蒸し暑かった。半袖Tシャツに、短パンとサンダル。こんなラフで良いのかと多少の不安もあったが、この夏の蒸し暑さが俺をこうさせた。
説明会が開かれる会場は都会から少し離れた田舎の方だった。その為、電車から見える風景が少しずつ緑がかっていき、乗客もだんだん少なくなっていった。
電車の窓からは陽がさしこみ、冷房の効いた車内で電車の走行音だけが聞こえる。その居心地の良さに、俺はいつの間にか目を閉じていた。
「閉まるドアにご注意ください。」
電車のアナウンスに目を覚ます。窓から見えた駅の名前は、俺が降りるべき場所だった。ハッとして降りようとしたときには電車は既に動き出しており、俺は静かに座り直した。
次の駅に到着し、反対方向のプラットフォームへと向かう。次の電車が来るのは20分後だ。誰もいないプラットフォームで1人ベンチに座る。セミの鳴き声を聴きながら、昔祖母の家の近くで両親と虫取りをした微かな記憶を思い出していた。記憶とは、まあ非常に美化されるもので、俺の記憶はもはや事実から既にかけ離れているのかもしれないが、その記憶は美しくて...
俺は泣いていた。泣くといっても涙が数滴たれるくらいだ。この涙も夏の暑さがすぐに蒸発させてしまう。電車の到着アナウンスが流れ、俺は立ち上がった。
説明会の当日、この日はとても蒸し暑かった。半袖Tシャツに、短パンとサンダル。こんなラフで良いのかと多少の不安もあったが、この夏の蒸し暑さが俺をこうさせた。
説明会が開かれる会場は都会から少し離れた田舎の方だった。その為、電車から見える風景が少しずつ緑がかっていき、乗客もだんだん少なくなっていった。
電車の窓からは陽がさしこみ、冷房の効いた車内で電車の走行音だけが聞こえる。その居心地の良さに、俺はいつの間にか目を閉じていた。
「閉まるドアにご注意ください。」
電車のアナウンスに目を覚ます。窓から見えた駅の名前は、俺が降りるべき場所だった。ハッとして降りようとしたときには電車は既に動き出しており、俺は静かに座り直した。
次の駅に到着し、反対方向のプラットフォームへと向かう。次の電車が来るのは20分後だ。誰もいないプラットフォームで1人ベンチに座る。セミの鳴き声を聴きながら、昔祖母の家の近くで両親と虫取りをした微かな記憶を思い出していた。記憶とは、まあ非常に美化されるもので、俺の記憶はもはや事実から既にかけ離れているのかもしれないが、その記憶は美しくて...
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