Slow Down

二色燕𠀋

文字の大きさ
50 / 110
白昼夢の痙攣

※11

しおりを挟む
 どうやらそれが彼の中でスイッチだったようで。

 振り向いた穂先輩の視点は野獣のような、煌々としたものに変わった。
 扉の前に立つ穂先輩は腕組みをして緩く凭れ、「初めて?」と文杜に問う。

 右手首の包帯が気になる。

「男って」
「うん、まぁ」
「まぁ、そうだよね、普通。でもお前から言ったんだよ」
「そうでした、はい」
「やめとく?」
「いえ、やめませんけど」

 得意の喧嘩屋根性が出てしまった。まぁ、実際言ってしまったのは自分だ、それも確かにあるが。

 穂先輩がにっこり笑って前髪を右手で掻き上げた。あぁ、ダメだそれ。やっぱちらつく。

 しかし一定の距離感は詰まらない。これは不思議な距離感だな、そう思いつつ文杜はしかし冷静に、ベースをまずはギターケースにしまい、一息吐いた。その事情を先輩は見守っている。

「どする?」
「あんたそれでいいの」
「なにが?」
「なんでもない」

 ちらっと、放送室のガラスの向こう側のスタジオを文杜は見る。

「校内放送は自動的に鳴るよ」
「へぇ、はぁ、」
「別のこと考えてた?」
「そうっすね。あの台押しちゃってあんあん、まぁ床だったらチャイムの合間にあんあん、流れたらすげぇだろうなぁとか、そんな楽しいしょーもないこと」
「ふっ、」

 手で押さえる前にちらっと見えた八重歯がやっぱりキュートで。

「それ楽しいかも」
「けどさぁ」

 なんだか見ちゃいけないものを見た気分。例えるならあの雨の日の、君の綺麗だった空虚な、ビー玉のような目みたいな。

 目の前に来てみれば身長は自分と同じくらい。まぁ普通そう。でもどうして見上げるようなあざとさがあるのか。

 近くで見てみれば穂は二重で、鼻が高く案外はっきりした顔をしていた。
 手を伸ばし耳に髪の毛を掛ければ、傷んでいるのがわかった。血管が綺麗だな、そう思えばもう、耳元に口付けるように言う。

「やっぱ、誰にも邪魔されたくないからこっちがいい」

 穂の肩が揺れている。よく見れば首筋にも小さな黒子があって。

「おもろいね、あんた」
「文杜です」
「わりとノって来た」
「ノせるのうまいじゃん。けど悪いね。俺ギターもあんま上手くないし、セックスなんて女の子としかしたことないから」

 言いながら文杜は穂のシャツのボタンを外して行く。穂は恥じらって俯き、その手を包帯の手で制した。

「待った、待って。
 せめて座らないか、あの、立ったままとかそれもいいけど後々辛い」

 急な、切実な願いに。

「ふ、
はははは!マジか、へぇ、まぁうん、そうだよね、ごめんなさい。はい。じゃぁお願い聞いてあげるからいざとなったら助けてね先輩」
「…どうかな」
「案外ツンデレだね。じゃぁはい、肩掴まってください」
「だから嫌だって、手首痛いし」
「違うから。いいからじゃあ左腕回して。早くこう、がっつり」

 不信感抱きつつ渋々穂は、なんなら嫌だって言ったし、もうええ首閉める勢いでいったろか、くらいでがっつり左腕を文杜の首の後ろに回した。
 「お、いいねぇ」煽られたかと思えばフワッと身体が浮いた。が、

「いだっ、」

テーブルに落とす勢い。最早押し倒された?よくわからないことになっていたが取り敢えず穂は腰を強打した。

 文杜は文杜で「案外重っ」と、やはり落としたらしかった。
 なのに穂の腕がなかなか体制的に抜けなかったせいか文杜は首が痛かったらしい、手で軽く押さえてる。机も少しずれた。

 しかしこうなって見て二人見つめ合えば、どちらともなく笑い出す。

「ムードとか」
「ないっすね。まぁこれから作る。俺もうわりと完勃ち。こんなでも」
「ふ、ははっ、」

 取り敢えず乗せきれなかった穂の足を乗せ、自分も机に跨がってみてやはり目につく、包帯。

「これ、どうしたの?」

 やはりちらつく。

「あぁ、打撲ってか怪我。捻った。なんで?」
「いや、なんでもないけど。てか腰ごめんなさい大丈夫?痛くないですか?」
「ははっ、お前さ、なんかこう、優しいねぇ。初めてだわ。まぁ、いいよ。痛いけど…ね」

 言いながらベルトに手を掛けてくる、右手で。それが少し興奮に繋がった。

「せっかちだなぁ…」

 文杜は文杜で再び脱がせに掛かる。
 意外と場の雰囲気で興奮しているらしい。というより最早、溜まっている。それは紛れもない事実だし何より、真樹に少し似ている。それが一番デカい。

 しかし彼はやはり真樹よりも男子体型だった。スリムで綺麗。ケロイドは当たり前ながら、なく。

「意外と筋肉質だね。腕とか」

 そう穂に言われて。
 あぁ、そういえば指弾き、腕の筋肉使うんだよなぁ、とか考えていたら、急に半身を起こすもんだからどうしたかと思えば、一気にパンツごと下着を下げられ、にやっと笑ってくわえられてしまったもんだから、快感。黒子とか、興奮。

 ただ少ししてから気付いた。多分体勢を代えてみた時のことだと思う。確かに、なんとなく彼には「助けてね」つまりはリードしてね、とは言ったが。

 彼が上になっていざというとき。
 腕をなんとなくかばっていた穂がふと、脱ぎ捨てていた制服のパンツのポケットから取り出したのは、オカモトの0.01ミリ。包装をくわえ、破ろうとしたときに笑った顔がまた妖艶で。

「ホントはダメらしいんだけど、これしかないからいい?」
「え?」
「薄いとさ。保険の先生が言ってた」

 あの野郎ぉぉぉ!
 怒りが勝って急に萎えかけるも「おっとぉ、」とまたくわえられてしまっては、まるで拷問だ。ただ一言言った。

「あんたいいのかそんなんで」
「んー?」

 あぁ話しかけなければよかった。

「ごめんなさいごめんなさい」

 しかしまたあげた穂の顔が、その汗に濡れた顔が綺麗。濁りがない。ヤバい死にそう。これが恋かも。とか柄にねぇ、センスもねぇ。だけどヤバい。

 それから流れ作業のように手慣れて装着され、上に乗られたが、気付いた点パート2。

 苦しそう。

 だけど、穂はあまり声を立てない。息だけ。なんなら押し殺しているような現象に文杜は違和感を感じた。

 試しに意地悪で少し腰を上げてみても顔を辛そうにするばかりで、思わず「ごめんなさい」と謝る。漸く済んで苦しそうににやっと笑ったのに最早文杜は殺された。心が一発で撃ち抜かれた。

「はぁ…支えて、」
「あい、はいぃ」

 それから最早。
 何がどうなってどうなったか皆目わからないくらい無我夢中。ただただどこかで追いかけ、離す。
 
 背骨を舌で撫で上げて、
痙攣するように身を縮まらせても、だけど首筋を許容してはくれない。あのビー玉のような茶色い潤んだ目をして薄く微笑んで口付けて、掻き回すように髪を撫でてはくれない。

 やはり夢と人物、現実は違う。「顔見たいから」と、一度離れて自然と相手を前向きにさせてみれば。

 嬉々として次の一手を待つ相手に。想像の世界で想い人を抱いた。声が、違かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...