51 / 110
白昼夢の痙攣
12
しおりを挟む
終わってしまえば虚しさが募って仕方がない。叫びそうになる。君の名前を。多分自分は酷い男で。
ぶっちゃけあれは、ワンナイトであればダルいなぁというのが感想だった。相手も相手でダルいならちゃっちゃとやめちまえばいいのに、とか思っていた。
もちろんリードする男側としてはなんとなくそんなんも、言えないし雰囲気を女って作る、別にまぁ言わないけど。だからワンナイトも実はめんどくさいなぁ、と言う感想。
相手が女性でないだけあって、あの余韻がない。その点をどうやら先輩はお分かりのようで、自分と同じ思考らしい。
何事もないかのように穂はさっさと制服を着ていた。
腕を痛そうにふらふらさせながら、落ちてしまったプリントと、シャーペンを拾い上げて。またそれに向かった彼は右手でシャーペンを握る。
行為でわかってはいたが、やはり右利きだった。なんで捻ったのだろう。
「その腕なんで捻っちゃったの?」
制服を着ながらタバコをくわえ、なんとなく文杜は聞いてみた。
ふと、先輩が淡々と見上げたもんだからあぁ、癖だと気付き、「あ、ごめんなさい」と、ケータイ灰皿を探せば、「え?」と目を丸くされた。
「いや、ごめんなさい、謹慎中でしたね。なんかタバコとか」
「いや…別にいいよ?」
「え?」
「ふっ、」
本日何度目かわからない、八重歯を少し隠しちゃう笑いを見せてくれた。
なんだか、少し。
あぁでも本当に少し。
胸が痛い。
「文杜くん、だっけ?君、やっぱり優しいね。
これはね、ちょっと、うーん、まぁ、ほら組み手!で、手引っ張られたときに捻った。体育で」
にっこり笑ってくれているけど、ダルそうに言うそれ。
なんとなく嘘っぽいなぁ。なんて、思って。
「ねぇあのさ。どう?忘れられた?」
そしてその話題変換。そんなのは、むしろ。
「忘れらんねぇや、まだ、まだ」
ワンナイト、めんどくさいなぁ、というタイプの文杜だったのだけど。この人、穂の淡白さ。こちらが怖くなるほど、何故か切ないような気がしてしまって。だって俺は多分、そう。
「まぁ、そんなもんか。いいね、どんな人?」
なんて聞かれてしまっては。
核心に迫られた気がしてしまって脳が思考の停止を始めた気がした。
「忘れたいって、言ったじゃん?」
あぁ、そうだった。
だけど、そう、だけど。
「いやぁ、しかし凄いなぁその人。俺わりと頑張っ」
「穂、さん」
「ん?」
「あの…」
どうして平気でそんなこと言えるのか。
俺あんたに多分、少なくともここ3日分くらいの欲求を吸い取られながら、けどそんくらい、だからあんたが頑張るくらいにまぁ激しくも愛した、と言うのは凄く、でも。
「忘れらんねぇからさ、また会ってくれないかな?
別に普通に話すのだって、いいから」
「勘弁してよ」
八重歯の見える、黒子の見える笑顔で、しかし明らかなる、いままでにない拒絶が見えたくせに。
少し伏せた顔。上げてくれるまで間があって。上げてくれた時の穂の八重歯が見えない笑顔がどうにもただ、寂しそうだった。けどそれも。
素直に、綺麗だった。
時として愛情は歪んでいる、そう、感じてしまって。
「またヤるならいいよ」
「…あんたしばらくはここにいるの?」
「まぁ、うん」
「わかった。また明日くるよ。今日はありがとう、ごめんね、こんな俺で」
また会えるならいい。
「…うん、」
「じゃぁ、俺、もう行きます。次、体育なんですよ。あの、筋肉先生。だから行かないと」
文杜が微笑むと、穂は笑顔を失して見つめた。
少し言葉が、胸に刺さってしまってなんだかそう、刺さった場所が痙攣しているような、そんな感触がしていて気色が悪くなっている。これは抜いたら一気に溢れて止まらなくなりそう。刺したまま、いまは。
「わかった…」
少しだくだくと、ナイフの回りを溢れた鮮血。痙攣は始まる。動かなくなる前。こんな時にナイフを抜いたら、死んでしまう。
ただ、いま溢れているその血は、ベースギターの去り行く背中を無意識に追いかけて手を取ろうとしてしまったところだったが、あと一歩で終わってしまった。
そうだそんなもんなんだと、お互いどうにか息を沈めた。ただ虚しいのは、ここが白昼夢だから、かもしれなくて。
それから文杜は体育で筋肉先生こと浦部先生に、然り気無く授業で組み手はあるか聞いてみた。
「ねぇけどやるか?」が返答だった。
イライラが再熱して。
それから、ナトリに、バイト前に二人で一之江総合病院に寄ろうと持ち掛けられた。
なんでも一之江のクソ野郎が3日入院するため、真樹の主治医がその間変わった、処方されていたコントールもその主治医と一之江の判断で変わった、なので挨拶がてら取りに来い、とのことだ。
ある意味文杜にとって今、会いたくないが絶好に会いたい相手だった。
そんな訳で二人で学校帰り、バイト前に一之江総合病院へ寄った。
一之江が入院する、3階消化器内科の305の個室に赴くと、わりと元気そうな一之江と、短髪な、30代くらいのママさんバレー感のある女性医師が雑談していた。
「こんにちは、わざわざどうも。天崎くんの担当になりました、二条麻子と申します。よろしくお願いいたします。
天崎くんには説明したんだけど、薬、今日の夜から処方になってるので、説明だけしようかなと」
わざわざそれだけの為にどうやら二条先生はいてくれたようで。
説明をしたら、「じゃぁ、よろしくお願いね」と言って二条先生はさっさと帰ってしまった。
「色々まぁ、悪いなお前ら」
柄にもなく一之江が謝る。ナトリが、「ホントだよ、バカ」と返すが、文杜は素直にはなれない心境で。
「オカモト先生3日?」
「みたいだな。ぶっちゃけまぁ異常はないから今日明日には医院長権限発動して帰ろうかと思ったんだが」
「なぁ、先生」
文杜はここへ来てから初めて言葉を発した。一之江もナトリも、文杜の“先生”発言に違和感を覚え、二人は会話をやめた。
「“打撲”ってさぁ、どんなもんで治るの?」
「…打撲したのか?まぁ、1週間くらいじゃねぇか、物によるが」
「へぇ。
あ、そうそう。0.01ミリ。あれよかったわぁ、ホント。3日分くらいの鬱憤がなぁ、一気にすっ飛んだよ、一之江先生!」
文杜のなんとなくな一之江に対する苛立ちを感じ取り、ナトリは「お前なに言ってんだ?」と少し困惑。
だが当の一之江はどうにも思い当たっていない様子。
「はぁ?」と、言ってみてすぐ、何故か閃きのように原因にぶち当たり言葉を呑む。
そして文杜のなんとなくを察してしまい、だが信じられず、「…何故?」と、検討外れに返答をした。
「…このクソ野郎、」
何故。
こちらが聞きたい。
何故こんなにイライラしてんのか。
低く言い放った文杜に一之江は言葉を探した。どうやら、凄く巡り巡っている。そしてこいつは非常に面倒で多大な勘違いをしているようだ。
「…会ったのか、しかし不思議なもんだな」
「会ったって、誰にだよ?」
しかしそう返されればこれもまた腹は立つもんで。
「はぁ、そうねぇ、俺の知り合いとでも言っとこうか?患者かな」
「殺すぞてめぇ」
「何に腹立ててるかか知らんが、俺は診察には来たやつしか入れませんよ?そして先生ですからぁ?それなりに道徳の行き届いた健全な対処をする。例えばそう、お前みたいなバカが0.01ミリのコンドーム見せびらかしてきたら取り上げるわ、バーカ!」
獣のような文杜の殺気が少し和らいだ。
「まぁ好きにしろとは、言うがな。てか、てめぇらさっさとバイト行けよ」
しっしと、ざったそうに一之江に手でやられ。
立ち尽くした文杜にナトリは「行くぞ、」と肩を叩いた。
「何があったか知らんが、お前顔が凶悪。前髪下ろした方がいいぞ今日は」
あぁ、そうか。
センスねぇな俺と、改めて痛感してその場は引き下がるように、ナトリに連れられ、病室を去った。気付けば夕日が射していた。
ぶっちゃけあれは、ワンナイトであればダルいなぁというのが感想だった。相手も相手でダルいならちゃっちゃとやめちまえばいいのに、とか思っていた。
もちろんリードする男側としてはなんとなくそんなんも、言えないし雰囲気を女って作る、別にまぁ言わないけど。だからワンナイトも実はめんどくさいなぁ、と言う感想。
相手が女性でないだけあって、あの余韻がない。その点をどうやら先輩はお分かりのようで、自分と同じ思考らしい。
何事もないかのように穂はさっさと制服を着ていた。
腕を痛そうにふらふらさせながら、落ちてしまったプリントと、シャーペンを拾い上げて。またそれに向かった彼は右手でシャーペンを握る。
行為でわかってはいたが、やはり右利きだった。なんで捻ったのだろう。
「その腕なんで捻っちゃったの?」
制服を着ながらタバコをくわえ、なんとなく文杜は聞いてみた。
ふと、先輩が淡々と見上げたもんだからあぁ、癖だと気付き、「あ、ごめんなさい」と、ケータイ灰皿を探せば、「え?」と目を丸くされた。
「いや、ごめんなさい、謹慎中でしたね。なんかタバコとか」
「いや…別にいいよ?」
「え?」
「ふっ、」
本日何度目かわからない、八重歯を少し隠しちゃう笑いを見せてくれた。
なんだか、少し。
あぁでも本当に少し。
胸が痛い。
「文杜くん、だっけ?君、やっぱり優しいね。
これはね、ちょっと、うーん、まぁ、ほら組み手!で、手引っ張られたときに捻った。体育で」
にっこり笑ってくれているけど、ダルそうに言うそれ。
なんとなく嘘っぽいなぁ。なんて、思って。
「ねぇあのさ。どう?忘れられた?」
そしてその話題変換。そんなのは、むしろ。
「忘れらんねぇや、まだ、まだ」
ワンナイト、めんどくさいなぁ、というタイプの文杜だったのだけど。この人、穂の淡白さ。こちらが怖くなるほど、何故か切ないような気がしてしまって。だって俺は多分、そう。
「まぁ、そんなもんか。いいね、どんな人?」
なんて聞かれてしまっては。
核心に迫られた気がしてしまって脳が思考の停止を始めた気がした。
「忘れたいって、言ったじゃん?」
あぁ、そうだった。
だけど、そう、だけど。
「いやぁ、しかし凄いなぁその人。俺わりと頑張っ」
「穂、さん」
「ん?」
「あの…」
どうして平気でそんなこと言えるのか。
俺あんたに多分、少なくともここ3日分くらいの欲求を吸い取られながら、けどそんくらい、だからあんたが頑張るくらいにまぁ激しくも愛した、と言うのは凄く、でも。
「忘れらんねぇからさ、また会ってくれないかな?
別に普通に話すのだって、いいから」
「勘弁してよ」
八重歯の見える、黒子の見える笑顔で、しかし明らかなる、いままでにない拒絶が見えたくせに。
少し伏せた顔。上げてくれるまで間があって。上げてくれた時の穂の八重歯が見えない笑顔がどうにもただ、寂しそうだった。けどそれも。
素直に、綺麗だった。
時として愛情は歪んでいる、そう、感じてしまって。
「またヤるならいいよ」
「…あんたしばらくはここにいるの?」
「まぁ、うん」
「わかった。また明日くるよ。今日はありがとう、ごめんね、こんな俺で」
また会えるならいい。
「…うん、」
「じゃぁ、俺、もう行きます。次、体育なんですよ。あの、筋肉先生。だから行かないと」
文杜が微笑むと、穂は笑顔を失して見つめた。
少し言葉が、胸に刺さってしまってなんだかそう、刺さった場所が痙攣しているような、そんな感触がしていて気色が悪くなっている。これは抜いたら一気に溢れて止まらなくなりそう。刺したまま、いまは。
「わかった…」
少しだくだくと、ナイフの回りを溢れた鮮血。痙攣は始まる。動かなくなる前。こんな時にナイフを抜いたら、死んでしまう。
ただ、いま溢れているその血は、ベースギターの去り行く背中を無意識に追いかけて手を取ろうとしてしまったところだったが、あと一歩で終わってしまった。
そうだそんなもんなんだと、お互いどうにか息を沈めた。ただ虚しいのは、ここが白昼夢だから、かもしれなくて。
それから文杜は体育で筋肉先生こと浦部先生に、然り気無く授業で組み手はあるか聞いてみた。
「ねぇけどやるか?」が返答だった。
イライラが再熱して。
それから、ナトリに、バイト前に二人で一之江総合病院に寄ろうと持ち掛けられた。
なんでも一之江のクソ野郎が3日入院するため、真樹の主治医がその間変わった、処方されていたコントールもその主治医と一之江の判断で変わった、なので挨拶がてら取りに来い、とのことだ。
ある意味文杜にとって今、会いたくないが絶好に会いたい相手だった。
そんな訳で二人で学校帰り、バイト前に一之江総合病院へ寄った。
一之江が入院する、3階消化器内科の305の個室に赴くと、わりと元気そうな一之江と、短髪な、30代くらいのママさんバレー感のある女性医師が雑談していた。
「こんにちは、わざわざどうも。天崎くんの担当になりました、二条麻子と申します。よろしくお願いいたします。
天崎くんには説明したんだけど、薬、今日の夜から処方になってるので、説明だけしようかなと」
わざわざそれだけの為にどうやら二条先生はいてくれたようで。
説明をしたら、「じゃぁ、よろしくお願いね」と言って二条先生はさっさと帰ってしまった。
「色々まぁ、悪いなお前ら」
柄にもなく一之江が謝る。ナトリが、「ホントだよ、バカ」と返すが、文杜は素直にはなれない心境で。
「オカモト先生3日?」
「みたいだな。ぶっちゃけまぁ異常はないから今日明日には医院長権限発動して帰ろうかと思ったんだが」
「なぁ、先生」
文杜はここへ来てから初めて言葉を発した。一之江もナトリも、文杜の“先生”発言に違和感を覚え、二人は会話をやめた。
「“打撲”ってさぁ、どんなもんで治るの?」
「…打撲したのか?まぁ、1週間くらいじゃねぇか、物によるが」
「へぇ。
あ、そうそう。0.01ミリ。あれよかったわぁ、ホント。3日分くらいの鬱憤がなぁ、一気にすっ飛んだよ、一之江先生!」
文杜のなんとなくな一之江に対する苛立ちを感じ取り、ナトリは「お前なに言ってんだ?」と少し困惑。
だが当の一之江はどうにも思い当たっていない様子。
「はぁ?」と、言ってみてすぐ、何故か閃きのように原因にぶち当たり言葉を呑む。
そして文杜のなんとなくを察してしまい、だが信じられず、「…何故?」と、検討外れに返答をした。
「…このクソ野郎、」
何故。
こちらが聞きたい。
何故こんなにイライラしてんのか。
低く言い放った文杜に一之江は言葉を探した。どうやら、凄く巡り巡っている。そしてこいつは非常に面倒で多大な勘違いをしているようだ。
「…会ったのか、しかし不思議なもんだな」
「会ったって、誰にだよ?」
しかしそう返されればこれもまた腹は立つもんで。
「はぁ、そうねぇ、俺の知り合いとでも言っとこうか?患者かな」
「殺すぞてめぇ」
「何に腹立ててるかか知らんが、俺は診察には来たやつしか入れませんよ?そして先生ですからぁ?それなりに道徳の行き届いた健全な対処をする。例えばそう、お前みたいなバカが0.01ミリのコンドーム見せびらかしてきたら取り上げるわ、バーカ!」
獣のような文杜の殺気が少し和らいだ。
「まぁ好きにしろとは、言うがな。てか、てめぇらさっさとバイト行けよ」
しっしと、ざったそうに一之江に手でやられ。
立ち尽くした文杜にナトリは「行くぞ、」と肩を叩いた。
「何があったか知らんが、お前顔が凶悪。前髪下ろした方がいいぞ今日は」
あぁ、そうか。
センスねぇな俺と、改めて痛感してその場は引き下がるように、ナトリに連れられ、病室を去った。気付けば夕日が射していた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる