Slow Down

二色燕𠀋

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I'm ソーダ

9

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 頭の中で、結局サブカルチャーが流れ続けて。

 ただ、彼の唄の中毒性には、まさしく毒性があり、自分にはやはり合わないなという気がしながら真樹は学校を後にした。

 なんとなく気分は、まさしくスローダウン。何がどうとかいうわけではなく、だからまぁ、スローダウン。あまり誰にも会いたくない、器が狭いとわかっている。

 ケータイの電源も先程から切っておいた。
 どうせ、ナトリか文杜か西東氏かよーちゃんからしか来ないでしょう。ほといてください。そのうち気が向いたら行きますよ、副作用だわ鬱病だわと、擦れた気持ちで真樹はぼんやりと公園に赴いた。

 だが不思議だ。こんな日はギター持って、ギターすら弾かない。
 ホントぼんやりと外を眺めて殺伐とした心情を詞に連ねてみようとしてもうだつが上がらない。多分、書いて傷付くのはわかっているのだ。listen to the心情、I'm slow down.

 これは一種の自傷癖に思えてならない。
 手首切ろうが薬飲もうがどうせ死ねない。ならば苦しむように自分を殺しに掛かるような詞だのコードだの音楽だのをその場その場で残してやろう、それほどの自己満足で、そのクセ自分が傷付くのは嫌だ。

 じゃぁ俺ってなんだってんだ。よくわかんねぇし、この感性。きっと誰もだから、俺なんてわかんねぇよ。


空が欲しいなぁ そんな贅沢に憧れて
後先見えていない 君の孤独を許せない
簡単に 死にたくなる ただ ただ


 取り敢えずこれをメモした。
 君の孤独ってきっと、さぁ、誰だろうなぁ。答えは凄く単純だ。今ここにはトラ猫と自分しかいないから。

 風が凪いでいた。青空なのか曇っているのかよくわからない天気で。

 切実な音楽が、ギターが一本、印象的なリードギターバリに音を主張するベースと、バシバシ不眠症になりそうなくらいにぶっ叩きまくってるタイコ。
 さっきまでの4人バンドと違う、3pを聴きながら、なんか自分の詞をさっと書けちゃうあたり俺って実は変態かなぁ、よくいやぁ、インスピレーションなのかこれ、けっ、くだらねぇなぁ俺。

 けど結局風は気持ちいいや。猫もほどよく重いよ。日常は流れてる。水のように、毎日毎日循環するそれは水道管のような、はたまた血の巡り、血管循環器みたいだな。これはなかなか止まらない。そう、出来ている。

「今日は弾かないの?」

 ふと、地面にハイソックスと生足、それから柔らかい色のチェックの膝上スカート、灰色のブレザーが見えて、カメラが光った。

 昨日のあの子だ。

 真樹が答えずにいるとその子が勝手に隣に座るから、戸惑う。

 だって、めっちゃ美人だし。

 イヤホンを外せば、「今日は?」と美人に聞かれた。

「ん?は?」
「それ、弾かないの?」
「えっ、はぁ」
「なぁんだ。
 ねぇねぇじゃぁさ、お話ししませんか?」

 いやそういう気分じゃないのでと真樹が言おうとしているうちに美人はぐいぐい近寄ってきて、なんか膝に手を置かれて体重掛けられて、てゆうかおっぱい見えそうやん。これ女子としてどうなんだよ。なんだこの女、なんか、あれか。

「あの、」

 流石に突き返してやろうかと意を決したら美人は離れた。そして「あ、すみません」と俯く。

「いや…その…。
 なんか嬉しくなっちゃて、また会えたことに。私あんまり、友達いないから」

 それってなんか自覚あるもんなのかぁ。
 すげぇなぁ。なんか。

「もしよかったら…今日一日だけ、友達やって」
「いいよ、俺今日友達いないし」

 てか多分だけど。
 お前の目的、それじゃないっしょ。

 真樹は皮肉を心の中で言う。だが最早そう、歌詞みたいなもので。

 気持ちは擦れていて殺伐的。だからこそ、人に壁があり、寛容に一見見えるこれは、優しさではなく。

 真樹はそのままその子の手を取って引き、キスをした。
 嫌がる素振りもなく、なんならすんなり舌まで入れてきた。

 やっぱりな、このアバズレ。
 ギター持ってるバンド野郎だからって調子乗りやがってこの金持ち天才女子高が。現状これか。会って瞬殺。笑えるな日常。

 脳内の片隅がドス黒く、大半は男子高生エロ万歳。そのノリでおっぱい揉めて急上昇。ひぇい美人。やべぇぜほどよくデカすぎない。手に収まるサイズit's a 微乳。センスある俺。

 抱きついてきて耳元で言われる、「外じゃなぁい、」なんて女の体裁に、一瞬冷めて顔を見てやればやっぱり美人。

 伏せた目で美人に言われた一言は「家、親いないの。近くだから…」何その急展開。最早この女わりと慣れてんな。だがいいさ。まぁ、俺もお前くらい頭おかしいからね。

 久しぶりの意欲増進にある意味過呼吸。無気力からの脱出方法にいまは道徳は無用である。というか今日は少し、真樹は開き直っている。

 仕方ねぇ仕方ねぇ、だって、鬱ってるし。人生ファック日常キルミー。
 キルミー?これってなんだっけ。

 そんなことを考えながら真樹は結局名前も思い出せなかったロングヘアーが綺麗な金持ちお嬢様女子高の女の家までそのまま押し掛けて抱いてしまった自分のクズっぷりに吐き気がした。

 「ああん好き」とか「愛してる」とか言われても何も返せない無感情な自分がどこかにいて、興奮しようがしまいがこの行為は成立してしまう。欲望と愛情のジレンマを感じた。

 自分は何にこんなに渇望、渇いた望みを見出だそうとしているのか。わからなくなってしまって、ダルさと共にそのまま帰って一度寝た。

 どうして自分は今こんなに痺れている?なんの感情を持ってしてそう、涙腺が狂わずその感情を塞き止めるのか。自分は何が欲しい、何を感じたい。

 いつからそう、こんなにも。
 自分が嫌いになって、好きになってあげられなくなったのだろうか。

 気付いたときにはもう、こうだった気もする。16年ずっと、暗い中、蹲って『大丈夫』と言ってきてたまにこうして外に出ると、見えてしまう世界。

 アラームを掛けたケータイが鳴ってる。しかしアラームではない。うるさい。まだ、まだ学校には早い。

 真樹はダルさに思わずケータイをぶん投げて部屋に籠った。チャイムが鳴って、布団の中で踞った。

 知らない聞こえない、あれは危ない。

「あまちゃん、どうしたの」

 聞こえない聞こえない聞こえない。

「あまちゃん、ねぇ」

 どうやって入ってきた。
 よーちゃんか。何故どうして。
 でもそう、そうなんだ。

 駆けつけた西東は布団を剥ぎ取った。
 硬直した彼が一言、強ばった表情で言った。「あぃじょぶ、」と。

 痛々しいまでのそれに思わず。

「はい、はいはい」

 西東は転がり込んで真樹を抱き締めた。
 真樹は一瞬ピクッとしてから、多分静かに泣き出し、それから静かに寝息を立てたのだった。
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