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PLAY MUSIC to ECCENTRIC
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保健室からやけに楽しそうな騒ぎ声がする。
なんとなく聞き覚えがある3人分くらいの声に一之江は驚愕した。
あのクソガキ二人と外人被れ野郎、マジか。
健全なるバカ県立高校の保健室で何をしている、定時制が始まる時間帯、保健室の、自分の代わりに週二回から今週だけ常勤で来ていた保険医はどうした。
あいつ、ただのなんか、短期雇いの教員だったよなと、じいさん保険医を思い浮かべる。
考えてみればじいさん、合ったときには16時頃、「眠い」と言っていたなぁ。
あいつらまさかそれを逆手に取って侵入しやがったか。
開け放たれた保健室に真樹をおぶった状態で一之江が入れば案の定、文杜、ナトリ、そして一之江の友人であり高校の部外者である西東がソファーに座って雑談をしていた。
「おっ」
「あ、来た」
「遅いよ陽介」
「なっ、」
何を…。
「何してんだよお前らっ!」
なんでこんなとこで雑談してるのか聞こうとしたが、文杜が真樹を見て今か今かと立ち上がろうとしていたり、ナトリが「さてさて」と一息吐いたり、真樹は真樹で、「あぁ、皆さま…」とぼんやり言ってみたり。
西東と目を合わせればニヤリと笑うだけだし。
こりゃダメだ。だって俺もセンスがなかった。いきなり病院から出て行こうだなんて。
「真樹…、どこにいたんだよ、」
ナトリが少し、感情やらを押し殺したように真樹を見つめて言った。
案外こんなとき、栗村、お前は出ていかないもんなんだなと心の中で三人の関係を見てみることにした。
しばらく、大人は黙っていていようか。今回は全面的にこいつらの問題だ。
そして最後は、大人同士の問題だって、待っているから。
「…ごめん」
文杜が何も言わず無言で座っていたソファから退き、背凭れに腰かける。
そこに立て掛けていたベースは足の間に挟んで一之江を見つめる。
促されたのかと黙って一之江はそこへ真樹を降ろす。
真樹は今空いた場所に座ると、兎に角俯いた。両サイドの仲間二人の視線を感じながら。
ここの問題は兎に角仕方がない。
まずは一之江が西東に、「悪かったなよっちゃん」と、腕組をして対して悪びれていない口上を述べた。
「それ、大して思ってないでしょ」
笑う西東に、一之江もにやけで返す。
そしてやはり二人が見守るのは、三人で。
「何があった」
「…うん」
「お前今日、昼一緒に食うって言ったじゃん」
「ごめん…」
「いやわかんねぇっつうの。なんだよ真樹」
「うるさいなぁ、謝ってんじゃん黙れよハゲ」
「うるせぇけどハゲてねぇよ、何があったんだよ。
ちなみに俺今日屋上でボッチだかんな。そこの狂犬は視聴覚室で」
「あーあー待って、本当にそれは俺もごめんなさいナトリ。でもありがとう。お陰で色々踏ん切りがついたの。だから言わないで」
だが。
「いや待って、なんでボッチなんだし凄い納得いかない」
「いやだからそれはね、」
「いやだからそもそもお前何してたんだっつうの」
「はぁ?だからそれはごめんってしつこく言ってんじゃん」
「え何?お前日本語ワカんないんデスか?」
「なんだコラてめえ」
「こらこらやめなさいよ二人とも」
「いやだから文杜はどうしたのよ」
「いやだからそれはあれだっつってんの」
「は?日本語大丈夫かよ」
「いやそれ君が言うの?」
「待てや待てやだから一番俺がわかってねぇんだっつーのお前ら今日何してたんだよマジで!」
二人揃ってやっぱり閉口。
全然話が進みそうにない。だが見越したのかナトリは溜め息を一息吐いた。
「まぁ今更いいんすよ、ええ。俺別にボッチでもね!二人揃って着信無視しまくってっから視聴覚室に真樹探しに行ったらなんかわかんねぇけど文杜がいたこととかね!」
「だから言うなってばぁ!」
「だから行ってねぇよ視聴覚室!」
「知ってるわぁ!そっからこいつとおまえを探しまくって今に至るんだわこのアホ!」
「はぁ?」
「まぁまぁまぁ」
これは焦れったい。
一度止めに入ろうと西東、声を掛けてみるが、
「いや西東さん待って俺いまヒートアップ」
「はい、かしこまりました」
ナトリに引き下がる勢い。一之江苦笑。
「つかまず二人揃って電話どうした電話!携帯してんだろ何が『オカケニナッタデンワハ、デンパノトドカナイトコロニ』だっ!どこだよ宇宙かよっ!繋がった?とか思ったら無限に広がるピロピロを何故聞かねばならん、屋上で一人弁当食いながらよぉぉ!」
一息でナトリは言いきり、はぁはぁ言っている。
勢いに圧倒されたのか、二人とも「うっ、」だの「あぁ…」だの言っている。漸く、西東二度目の「まぁまぁ」を切り出した。
「君の気持ちはわかるけど大いにねっ。
ええと、取り敢えずあまちゃんは途中まで僕といたから。ねっ。ごめん僕が逃がしたらしい」
「いやまぁはぁ…」
終息。
「まぁほら、全部語り合うのがセンスじゃないでしょ?いつか来るから、そんなとき。
んなん言い出したら僕なんかどんだけ陽介にぶん殴られて僕もこいつをぶん殴んなきゃなんないの死んじゃうからね?マジ。
まぁ語り合うなとは言わない。ただまぁ、何があったか知らないけど言えねぇことは聞かねぇのがいいよ。引き出せねぇのは君たちのセンスだ。そんだけ。
だから僕は今日あまちゃんを迎えに行く事を陽介に許された。僕も陽介の爆走を許した。今更なんも僕たちにはいらない。
あまちゃん、君ってそんなセンス。振り回しやがってクソガキが」
ニコッと笑って西東は言う。
だが、次の瞬間だった。
なんとなく聞き覚えがある3人分くらいの声に一之江は驚愕した。
あのクソガキ二人と外人被れ野郎、マジか。
健全なるバカ県立高校の保健室で何をしている、定時制が始まる時間帯、保健室の、自分の代わりに週二回から今週だけ常勤で来ていた保険医はどうした。
あいつ、ただのなんか、短期雇いの教員だったよなと、じいさん保険医を思い浮かべる。
考えてみればじいさん、合ったときには16時頃、「眠い」と言っていたなぁ。
あいつらまさかそれを逆手に取って侵入しやがったか。
開け放たれた保健室に真樹をおぶった状態で一之江が入れば案の定、文杜、ナトリ、そして一之江の友人であり高校の部外者である西東がソファーに座って雑談をしていた。
「おっ」
「あ、来た」
「遅いよ陽介」
「なっ、」
何を…。
「何してんだよお前らっ!」
なんでこんなとこで雑談してるのか聞こうとしたが、文杜が真樹を見て今か今かと立ち上がろうとしていたり、ナトリが「さてさて」と一息吐いたり、真樹は真樹で、「あぁ、皆さま…」とぼんやり言ってみたり。
西東と目を合わせればニヤリと笑うだけだし。
こりゃダメだ。だって俺もセンスがなかった。いきなり病院から出て行こうだなんて。
「真樹…、どこにいたんだよ、」
ナトリが少し、感情やらを押し殺したように真樹を見つめて言った。
案外こんなとき、栗村、お前は出ていかないもんなんだなと心の中で三人の関係を見てみることにした。
しばらく、大人は黙っていていようか。今回は全面的にこいつらの問題だ。
そして最後は、大人同士の問題だって、待っているから。
「…ごめん」
文杜が何も言わず無言で座っていたソファから退き、背凭れに腰かける。
そこに立て掛けていたベースは足の間に挟んで一之江を見つめる。
促されたのかと黙って一之江はそこへ真樹を降ろす。
真樹は今空いた場所に座ると、兎に角俯いた。両サイドの仲間二人の視線を感じながら。
ここの問題は兎に角仕方がない。
まずは一之江が西東に、「悪かったなよっちゃん」と、腕組をして対して悪びれていない口上を述べた。
「それ、大して思ってないでしょ」
笑う西東に、一之江もにやけで返す。
そしてやはり二人が見守るのは、三人で。
「何があった」
「…うん」
「お前今日、昼一緒に食うって言ったじゃん」
「ごめん…」
「いやわかんねぇっつうの。なんだよ真樹」
「うるさいなぁ、謝ってんじゃん黙れよハゲ」
「うるせぇけどハゲてねぇよ、何があったんだよ。
ちなみに俺今日屋上でボッチだかんな。そこの狂犬は視聴覚室で」
「あーあー待って、本当にそれは俺もごめんなさいナトリ。でもありがとう。お陰で色々踏ん切りがついたの。だから言わないで」
だが。
「いや待って、なんでボッチなんだし凄い納得いかない」
「いやだからそれはね、」
「いやだからそもそもお前何してたんだっつうの」
「はぁ?だからそれはごめんってしつこく言ってんじゃん」
「え何?お前日本語ワカんないんデスか?」
「なんだコラてめえ」
「こらこらやめなさいよ二人とも」
「いやだから文杜はどうしたのよ」
「いやだからそれはあれだっつってんの」
「は?日本語大丈夫かよ」
「いやそれ君が言うの?」
「待てや待てやだから一番俺がわかってねぇんだっつーのお前ら今日何してたんだよマジで!」
二人揃ってやっぱり閉口。
全然話が進みそうにない。だが見越したのかナトリは溜め息を一息吐いた。
「まぁ今更いいんすよ、ええ。俺別にボッチでもね!二人揃って着信無視しまくってっから視聴覚室に真樹探しに行ったらなんかわかんねぇけど文杜がいたこととかね!」
「だから言うなってばぁ!」
「だから行ってねぇよ視聴覚室!」
「知ってるわぁ!そっからこいつとおまえを探しまくって今に至るんだわこのアホ!」
「はぁ?」
「まぁまぁまぁ」
これは焦れったい。
一度止めに入ろうと西東、声を掛けてみるが、
「いや西東さん待って俺いまヒートアップ」
「はい、かしこまりました」
ナトリに引き下がる勢い。一之江苦笑。
「つかまず二人揃って電話どうした電話!携帯してんだろ何が『オカケニナッタデンワハ、デンパノトドカナイトコロニ』だっ!どこだよ宇宙かよっ!繋がった?とか思ったら無限に広がるピロピロを何故聞かねばならん、屋上で一人弁当食いながらよぉぉ!」
一息でナトリは言いきり、はぁはぁ言っている。
勢いに圧倒されたのか、二人とも「うっ、」だの「あぁ…」だの言っている。漸く、西東二度目の「まぁまぁ」を切り出した。
「君の気持ちはわかるけど大いにねっ。
ええと、取り敢えずあまちゃんは途中まで僕といたから。ねっ。ごめん僕が逃がしたらしい」
「いやまぁはぁ…」
終息。
「まぁほら、全部語り合うのがセンスじゃないでしょ?いつか来るから、そんなとき。
んなん言い出したら僕なんかどんだけ陽介にぶん殴られて僕もこいつをぶん殴んなきゃなんないの死んじゃうからね?マジ。
まぁ語り合うなとは言わない。ただまぁ、何があったか知らないけど言えねぇことは聞かねぇのがいいよ。引き出せねぇのは君たちのセンスだ。そんだけ。
だから僕は今日あまちゃんを迎えに行く事を陽介に許された。僕も陽介の爆走を許した。今更なんも僕たちにはいらない。
あまちゃん、君ってそんなセンス。振り回しやがってクソガキが」
ニコッと笑って西東は言う。
だが、次の瞬間だった。
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