Slow Down

二色燕𠀋

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PLAY MUSIC to ECCENTRIC

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「てか、医者がね、ぶっ殺すは言っちゃいけないよねぇ?どう思う君たち」
「まぁヤブだし」
「Vテンだし」
「そもそもよーちゃん、頭のネジ錆びてんじゃん」

 総批判。心の中で一人、一之江はずっこける。
 しかし案外狂犬は「でもさぁ、」と、ほのぼのとした笑顔で言う。

「この中の誰よりも常識人だね気に入らないけど」

 なんて。
 なんて可愛いやつ!

 意外にも庇ってくれたやつはお前だったかと、頭を撫でてやろうと一之江は手を伸ばそうとしたが、やめた。なんせ実は狂犬だ。噛まれたら多分病気になる。

「気に入らねぇけど今真樹を連れて来たのもあんただしな。あんたには、悔しいが俺にねぇもんがある」
「…どうかな、それは」

 そして素直に、文杜は一之江の前に立つ。

 殴られるか?と一之江は身構え、組んでいた腕もほどいた瞬間、文杜は直角に腰を曲げ、頭を下げる。

「悔しいけどありがとうございました。そんだけ」

 頭をあげた文杜はわりと素直そうな表情だった。そのツンデレ具合に一之江は態度に出さず、唖然とした。

 何があったかは知らんがまぁ、なにか、まだ、自分は生徒に与えたのかもしれないと陳腐なことを考えてみてふと、文杜の先に、あの真樹に似た2年生を思い浮かべた。

「お前、頭打ったか」
「まぁそーねぇ、あんたは錆びてるが俺は飛んでんのかもな、ネジ」

 なるほどな。

「拾うの大変だな」
「拾わねぇのが多分文杜だろ」

 そう言うのは一番の理解者、ナトリだった。

 うん、メチレンブルー卒業かもな。違う水槽へ、移して、そして。
 なぁよっちゃん。

 一之江が意味ある瞳で見つめてみれば、西東はそれに微笑んだ。

 俺はけして明るい未来が見たいとか、そんな陳腐なことは多分望んでないんだよ。
ただ、見つめる先、そりゃぁ、明るかったら幸せじゃん?お前の言いたいこと、わかった気はするよ。

 小さな幸せ、そりゃぁどんだけ青く澄んでるかわかんないな。病的かもしんなくて、下手すりゃそのままdead end.

 でも、夢って終わるんだよ、どんな結末だって、いつかは。
 だからこそ観たいじゃないか、死ぬまではせめて、眠るような泥酔で。エゴだってなんだって、リズムのようにごちゃ混ぜにした安眠の中で。

「真樹」

 呼べば反抗的な目で見つめ返されるそれに、微かな可能性を見出だすように。大人の勝手な子供じみた言い分。

 構わない。言ったるわ。
 だが俺はな。

「俺はな、悪いが出来た人間じゃねぇんだ、真樹。てめえらを更正させられるほど大人でもなんでもねぇ、ただのクソみてぇな金持ちの医者だ」

 人間なんてわかっちゃいねぇのさ。

 その一之江の一言に真樹は動揺したように、瞳の凶器を捨て泳がせる。

 それくらいで揺らいでんじゃねぇよ。
 俺は全部、捨てちまえばいいと、

「俺はな、お前みたいな、クソみたいなガキだったんだよ、真樹。人生ナメくさって、でもお前ほどもがいて生きちゃいなくて、だって、全ては手の中にあったんだ。
酷くつまらなくて、だから人の気持ちなんてわからなかった。なんで人が死んで悲しいのか、そんなことすらわからずにずっと医者になることばかりを考えて、友人が病に倒れようがなにも思わなかった。これは本当だ、真樹」

 「え、ここに来てんな話を」とナトリが口を挟もうとするなか、「気持ちがわかるやつは黙ってろ」と一之江が制する。

「だから、少し…長く、浸かっていたいのさ、水色の、その水に」
「よーちゃん、それは、」

 なんて。

「くっせぇセリフだなぁ、陽介、喧嘩売ってるの?僕に。なぁ、君た…」
「パンクだ」

 真樹はただ、哀しそうな、しかし微笑んでいるようにも見える微妙な表情でそう返した。

 もしかすると、わからない。

 ただたんに、そうそれはただ。
 心地良い、誰かはわからない。たくさんは聴いてこなかったかもしれない数々のオルタナやらフォークやらの中から引っ張ることは出来なかったけれども確実に、心地良いリズムとして共鳴を呼んだような、そうでないような、新しいビートを、感じたのかもしれない。

 思い出した。あの日屋上で二人に自分が言った、「人でなしになるほどに」何かをしようと言う、何気ない一言を。

 走っている。ぶっ放している。だけど今立ち止まったからには振り返って見てみよう。
 なにをしてんの?俺は何を見て誰と出会ってなに刻んでんの?

「いいじゃん、それ。よーちゃん。ねぇ、そう、」

 そうか。
 漸く、ちゃんと笑ってくれた表情は。

 あぁなんて、ここに来て漸く見えてきた、空気泡のような、美しくも儚いものに思えてならなくて。

 やはりそうか、大人じゃ、俺では、よっちゃんでは、届かないんだよ。そんくらいエキセントリックでなければ、夢じゃないのかと思えて。

 哀しくも儚いが、スッキリとした呼吸の一貫で、命の閃きなんだと、一之江は久々に泣きたくなる甘さを感じた。

 サイダーではなく、ソーダ水。ソールドアウトだなんてナンセンス、スローダウン、お前らそんな、煌めきなんだ。
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