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アンビバレンス
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どこか。
自分の認識では「道」でしかない、雑多で当たり前なビルの前で「ここ、ここ」と、半井は地下を指差した。
言われて見てみると、階段を降りた入口付近、壁側のコンクリートに「Welcome」と大きく書かれた看板を見つける。
位置的には「地下0.5階」といった認識なんだろうか。全然Welcomeを感じない、寂しさすら感じるような場所。
見上げてみると、他にテナントが入っているのかも微妙なビルだった。
半井よく見つけたなぁと、感心して無機質な階段を降りる。
店内に誰かがいるようには見えないが、サインボードは「Open」となっている…。
半井は、変にデザイン性のあるレトロな扉を開けた。
カランと音が鳴る。
微かにエミネムか何か、ヒップホップが流れている世界観に、まるで外とは違う、迷い込んでしまったような感覚に陥った。
…あの、原宿竹下通りの店と、空気感があんまり変わらないんだけど…。
外国人に粘られた日が頭を過る。あの人たちも「Oh,Welcome、ヨコソ、アリガト、ヨコソ!」としきりに言っていた。
店内にはいくつかの棚と、アクセサリーが展示品のように掛けられていた。
どちらかといえば、発注を中心に商売をしているのかもしれない。
「いらっしゃーい」
…あ、多分この人声低い。
聞こえるか聞こえないかの声が聞こえた。MID1 Fでこの雰囲気か、新さん並みの低さかも。
いつの間にかふらっと、白だか銀だかの髪に黒パーカー、首筋に大きなタトゥーを入れた若い男がそこにいた。
男はカウンターショーケースの向こうで座り、自然な動作でタバコに火をつける。
目が死んでいる。
どこの人か…大体は日本人なんだろうが、ハーフかもしれない、顔は整っている。
けれど間違いなく接客向きではないその男は、首を傾げて半井を見、「あ、この前の?」と、ぼんやりとした口調でそう言った。
やっぱり低めだ。新さんより僅かに高いくらい。
…いやあの人が驚きの低さなんだよな、あれ絶対マイク入らない…。
「あーどうもハゼくん!前回はお世話になりやした!」とアットホームに言う半井に、凄いな!警戒心0、明るい!と心の中で本当に感心しする。
一瞬だけ、ハゼと目が合った。
ハゼ…多分日本人か…とても、年下とは思えないカンロク…と圧倒されたままになる。
ハゼはタバコを指に挟んで頬杖をつき、三白眼で半井を見上げ「あ、それ」と呟いた。
「そうそう、ありがとねめっちゃ良いわ~!」
「あぁそう。重くないっすか?」
「うんダイジョーブ!」
「よかったよかった。まぁごゆっくりどーぞ、それとも注文?」
「そうそう、俺らバンドやってるんだけどさ、」
低いけど籠り声でゆっくりだ、話し方セイさんタイプ…と思う最中にまた目が合う。
今度はがっつりこちらを見ながら「あぁ、みたいっすね」と言い、そしてふっ、とハゼは笑った。
「全っ然ジャンルがなんか、わかりませんけども。グッズだったりします?」
「当たりー!流石だね。
こっちボーカルギターなんだけどさ、話してみたのよ、で、ちょっと来てみたんだ」
ハゼがくいっと頭を下げるので、自分もくいっと頭を下げる。
「あーまぁ聞きますよ、何作ります?ちょっと一人なんで、場合によっては時間掛かりますけど。アクセで間違いない感じ?」
「がいいかな~って。あ、でもそう、何個にしよっかな、どーすっかね?」
半井が急にこちらへ話しを投げてきたので「えっ、」と、全く意識がここにいなかった、ビックリする。
「…まずは何作るか決めないと個数とか決めれないんじゃないっすか?
もし微妙なら俺専門外でも、普通にグッズ屋コミュニティあるんで、まずは固めたらどうでしょう」
…てゆうか、こんなに曖昧な感じで来ちゃったけど。ノリで来られても迷惑なんじゃないか?
「あ、まぁ…えっと、急に何も決めず来ちゃったんで…半井、今日はちょっと見るくらいにしない?もう少し決めてからの方が」
「まぁいいっすよ、暇なんで。なんか案も出しましょうか?」
「えっ、そーなの?」
「暇なんで。ちょっとリーフレット持ってきますね」
そう言ってハゼはすぐ奥、カーテンだけの簡易的な場所から出入りし、チラシのようなものを眺めながら「最近じゃジッポとか地味にキてますよね」と言った。
「まぁジッポだと、中身は別の業者を俺が手配して、になりますけど。俺金属削るくらいなんで」
「あー、ジッポかぁ、それもいいけど…俺らそういえば誰もタバコ吸わないね」
「そうだねぇ…」
「あ、そーなんすね?へー」
「そうそう、俺その前に慧にピルケースよくない?て話したよね」
あ、忘れかけてた。
「あ、そっち系っすか?」
よくわからない回答が来る。
…少しだけ話が動いてきた。
「いや、グッズ作るよ~ハゼく~ん」
「…まぁでしょうけど。そう言えばどうでした?あれ」
「あ、うん、一回使った。なんか頭冴えたわ」
まずは黙って事を見ていようと思ったのだが、「あーあんた鉄分足りてないでしょ」と、ついにハゼから直接話を振られてしまった。
「えっ、そうかな」
「…まぁいいけど。この人にもあげたんだけど俺サプリも売ってんだよね。ついでにいる?」
「あ、」
「まぁいいか、まずはグッズね」
…なんだか、のらりくらりとした人…。
自分の認識では「道」でしかない、雑多で当たり前なビルの前で「ここ、ここ」と、半井は地下を指差した。
言われて見てみると、階段を降りた入口付近、壁側のコンクリートに「Welcome」と大きく書かれた看板を見つける。
位置的には「地下0.5階」といった認識なんだろうか。全然Welcomeを感じない、寂しさすら感じるような場所。
見上げてみると、他にテナントが入っているのかも微妙なビルだった。
半井よく見つけたなぁと、感心して無機質な階段を降りる。
店内に誰かがいるようには見えないが、サインボードは「Open」となっている…。
半井は、変にデザイン性のあるレトロな扉を開けた。
カランと音が鳴る。
微かにエミネムか何か、ヒップホップが流れている世界観に、まるで外とは違う、迷い込んでしまったような感覚に陥った。
…あの、原宿竹下通りの店と、空気感があんまり変わらないんだけど…。
外国人に粘られた日が頭を過る。あの人たちも「Oh,Welcome、ヨコソ、アリガト、ヨコソ!」としきりに言っていた。
店内にはいくつかの棚と、アクセサリーが展示品のように掛けられていた。
どちらかといえば、発注を中心に商売をしているのかもしれない。
「いらっしゃーい」
…あ、多分この人声低い。
聞こえるか聞こえないかの声が聞こえた。MID1 Fでこの雰囲気か、新さん並みの低さかも。
いつの間にかふらっと、白だか銀だかの髪に黒パーカー、首筋に大きなタトゥーを入れた若い男がそこにいた。
男はカウンターショーケースの向こうで座り、自然な動作でタバコに火をつける。
目が死んでいる。
どこの人か…大体は日本人なんだろうが、ハーフかもしれない、顔は整っている。
けれど間違いなく接客向きではないその男は、首を傾げて半井を見、「あ、この前の?」と、ぼんやりとした口調でそう言った。
やっぱり低めだ。新さんより僅かに高いくらい。
…いやあの人が驚きの低さなんだよな、あれ絶対マイク入らない…。
「あーどうもハゼくん!前回はお世話になりやした!」とアットホームに言う半井に、凄いな!警戒心0、明るい!と心の中で本当に感心しする。
一瞬だけ、ハゼと目が合った。
ハゼ…多分日本人か…とても、年下とは思えないカンロク…と圧倒されたままになる。
ハゼはタバコを指に挟んで頬杖をつき、三白眼で半井を見上げ「あ、それ」と呟いた。
「そうそう、ありがとねめっちゃ良いわ~!」
「あぁそう。重くないっすか?」
「うんダイジョーブ!」
「よかったよかった。まぁごゆっくりどーぞ、それとも注文?」
「そうそう、俺らバンドやってるんだけどさ、」
低いけど籠り声でゆっくりだ、話し方セイさんタイプ…と思う最中にまた目が合う。
今度はがっつりこちらを見ながら「あぁ、みたいっすね」と言い、そしてふっ、とハゼは笑った。
「全っ然ジャンルがなんか、わかりませんけども。グッズだったりします?」
「当たりー!流石だね。
こっちボーカルギターなんだけどさ、話してみたのよ、で、ちょっと来てみたんだ」
ハゼがくいっと頭を下げるので、自分もくいっと頭を下げる。
「あーまぁ聞きますよ、何作ります?ちょっと一人なんで、場合によっては時間掛かりますけど。アクセで間違いない感じ?」
「がいいかな~って。あ、でもそう、何個にしよっかな、どーすっかね?」
半井が急にこちらへ話しを投げてきたので「えっ、」と、全く意識がここにいなかった、ビックリする。
「…まずは何作るか決めないと個数とか決めれないんじゃないっすか?
もし微妙なら俺専門外でも、普通にグッズ屋コミュニティあるんで、まずは固めたらどうでしょう」
…てゆうか、こんなに曖昧な感じで来ちゃったけど。ノリで来られても迷惑なんじゃないか?
「あ、まぁ…えっと、急に何も決めず来ちゃったんで…半井、今日はちょっと見るくらいにしない?もう少し決めてからの方が」
「まぁいいっすよ、暇なんで。なんか案も出しましょうか?」
「えっ、そーなの?」
「暇なんで。ちょっとリーフレット持ってきますね」
そう言ってハゼはすぐ奥、カーテンだけの簡易的な場所から出入りし、チラシのようなものを眺めながら「最近じゃジッポとか地味にキてますよね」と言った。
「まぁジッポだと、中身は別の業者を俺が手配して、になりますけど。俺金属削るくらいなんで」
「あー、ジッポかぁ、それもいいけど…俺らそういえば誰もタバコ吸わないね」
「そうだねぇ…」
「あ、そーなんすね?へー」
「そうそう、俺その前に慧にピルケースよくない?て話したよね」
あ、忘れかけてた。
「あ、そっち系っすか?」
よくわからない回答が来る。
…少しだけ話が動いてきた。
「いや、グッズ作るよ~ハゼく~ん」
「…まぁでしょうけど。そう言えばどうでした?あれ」
「あ、うん、一回使った。なんか頭冴えたわ」
まずは黙って事を見ていようと思ったのだが、「あーあんた鉄分足りてないでしょ」と、ついにハゼから直接話を振られてしまった。
「えっ、そうかな」
「…まぁいいけど。この人にもあげたんだけど俺サプリも売ってんだよね。ついでにいる?」
「あ、」
「まぁいいか、まずはグッズね」
…なんだか、のらりくらりとした人…。
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