殺したいほど、「    」

二色燕𠀋

文字の大きさ
5 / 17

5

しおりを挟む
「…大丈夫じゃねぇよなそれ」
「はい、アキヒコはいー」
「大丈夫じゃねぇだろどう見てもっ!バカ!」

 ぶっ叩きたくなってしまったが「いーからアキヒコ!ほら!なんで来たの全く!信じらんない!」と、律はハナちゃんママに、スタッフルームへ連行された。

 うぅぅ、ひっく、としゃくりながら律は今日の洗いざらいを話した。

 「ほらほら拭きなさい」とおしぼりを渡され、ちょっとの抵抗感から目頭のみを拭くことにする。

「…でぇ、さっきのDMが高校の初彼擬きでも~ぐちゃぐちゃ」
「うわあナニソレ…引くわ~…。
 あれ、りっちゃん初めて会ったとき童貞だったじゃん」
「はい~。あいつは擬きなんで何もなかったんですぅ~」
「なるほどね」
「いざとなったらちんこに萎えたんですよあれ~、すぐ彼女作ったあいつ」
「………晃彦に近いわね、なんか」
「そう何、あいつ、なんで来たの。さっきの写真写ったの?俺」
「顔は写してないけど元彼ならわかるやつ」

 ちらっと見せてくる画面。なるほど見切れてるけど顔以外、というところだ。
 …端と、ほうれん草をつまんだ手元。

 え?なんか自分の認識以上に細く見えるけど何この草食男子感。え?なんだろうハナちゃんママがデカいから?よくわかったなあいつ。

「…晃彦、よく来るんだ」
「んーたまによたまに。会わなかったでしょ?
 りっちゃんにはあんまりピンと来ないだろうけど、27なんて仕事もまだ必死なもんよ、なかなか来れないって」
「……そっかぁ、」
「アキヒコはりっちゃんを諦めてないのよ」
「…いや、俺は晃彦の、浮気現場ってゆうか自宅だけど直撃だったんだって」
「うんそうよねぇ、あのバカアキヒコ。今更何、て感じだけどさ。社長かアキヒコかで言ったらアキヒコの方がマシな気がしてきた、なんか…」
「……だって、晃彦は女もいけるもん。そういうことじゃん?」

 修羅場には、ならなかった。ただただ引いた。が、それよりもあの頃は切なかった。

 いや、いまでも切ない、少し。やっぱりそういう人とは付き合わない方がいい、と。
 社長にしても、それをずっと引きずっている。

「まぁ、当時からずっとアキヒコには言ってるけどね、クソバカ最低いっぺん死んで来いって。社長さんそれを余裕で越えたわあたしの中で」
「…でも、」

 言葉に詰まれば「全くバカ律」と言われる。

「自己顕示も独占欲も強すぎて引くわ社長。サイコパスよね。あんたいつか刺し殺されちゃうわよ」
「…きっとそういうんじゃないですよ。
 なんか、晃彦もそうで。学ばなかったのかも。行きずり良くない…、俺が悪い、ホントに」
「ハプニングならパツイチにしなさいよって最初に教えたでしょ?
 全体的になんか…ニブチンなのか鋭すぎんのかハッキリしてよ。あの男あんたを離す気ないと思うけどっ」
「うぅ~、ハナちゃんママ今ちょっとキたカッコい~、抱いて~」
「あたしはパツイチはパツイチって断固として決めてますから。言ったでしょ、あんたひょろくてちょろくてタイプじゃない、あたしもネコだし。あんたなんて初じゃなきゃ食わねーわよ全く。スパッと切っちゃいなさいよ女々しい!」

 痛そう~…、いや違う。でもこうまでノンケやらで外れを引くといっそ切りたい気もしてきた。勢いでこのまま美容外科行こうかな。

 あぁダメだ昔からそう、自分はどこか変に自暴自棄なんだ。もう多分それはゲス野郎からの流れを汲んでいる。

 大人になれない。何故だろう。流されやすいからだ、間違いなく。

 そうすればいざとなった時に楽なのだ、これだけは学べた。けどノリに乗れない、いちいち考えすぎて仕方がない。

「…なんであと一歩行かないのよ、流れちゃってるじゃないの」
「だって、」
「だってもクソもないわ。
 …まぁ残念ながらわからなくもないけど。あたしはだから恋するのは辞めました」
「……ハナちゃんママカッコい~っ」
「何がカッコいいもんかただの怠けよ怠け。最近は夜中にラーメン食っても罪悪感も湧かないわ」

 「髪食ってるわよ」と言いながら髪を耳に掛けてくれるハナちゃんママにふぅ、あぁもう……と力が抜けそうになった時。
 ケータイの着信音にビクッとした。

 見なくてもわかるけど、いや、なら理由がわからないと謎の恐怖に画面をチラ見するとわかってはいた、「志津沼社長」。

 「やめなさい、」と言われるのと同時には取ってしまった反射神経、自分の畜生具合に傷付く。

『あぁ、駒越くん?』

 ごく平然な様子の社長に、確かにサイコパスだなこの人、とまた少し激昂してくる。

「はい」
『おや……?いま自宅じゃないね?』

 全くいちいち…。

「はい、出ていますがどうしましたか」
『明日の件だけどヒラハラさんって子が来るから。その連絡。弟の会社の子』
「……弟の会社」
『丁度良い子がいたよ』

 あちら側はなんとなく無音だが、もしやいままで探していたのだろうか……20時48分。
 マジだなこの人。

「…畏まりました。
 社長、今会社ですか」
『うん。終わったし夕飯を』
「幸い俺もまだ近くにいますんでお伺いしても宜しいですか。大至急で30…15分も掛からないと思います」
『ははは、二丁目?別にいいけど何?』
「お会いしてお話致します」

 切った。
 自分でもビックリするくらいに声が低かったような。
 ハナちゃんママも呆れというか、明らかに「……怖っ」と引いている。

「……ん、待ちなさい、りっちゃ」

 財布から適当に金を出し「ママありがとう」と感情を押し殺して店を出た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

博愛主義の成れの果て

135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。 俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。 そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

処理中です...