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…よかった、順調に行きそうだ。
「…まぁ、食うか、駒越くん。時間もないけど、じゃあ、車の中でだって聞く」
「あ、はい、そうですね…すみません」
「…ははっ。
駒込くんの悪いところはね、平原さん。超詰めるんだよ、こーやってさ。俺は当たり前に着いてきたけどそうだな、飯くらいちゃんと食わないとだよなぁ」
「そうなんですね?」
「うんまぁ。あまり邪魔され過ぎてもイラッとするけど、俺も仕事人間だからさ。でも、合わせることも必要だよな」
あんたが仕事人間だから俺も合わせてきましたけどね。
けど、そう。互いにブレーキを掛けることも大切だ。その匙加減はこれから彼女が学んでいくところなのだろう……。
少し、寂しくなった。
本来、まぁ、仕事は嫌いじゃない。好きでは絶対にないけれど。
ただどうやらこうやって思うくらいには、思い入れはあったようだ。
平原さんはその後の社内会議でも、すっかり慣れた様子でちゃんとメモを取ることが出来ていた。
メモもまだ少し無駄はあるし、Tシャツの件もあと一歩踏み込んでくれたら良い。
でも、まさか一日で「あとは馴染んで社を掴むのみだな」という状態になるとは思わなかった。
この点はガッツリ食らいついてくれている。なるほど社長若妻となるだけある裁量なのかも、そう思った。
…何より、いざというとき女性というのは、上手く一歩引くことが出来たりするようだ。
素直に感心してしまった。男同士では変に、どうしょもないことで頑なになってしまう事がある。こればかりは恐らく「本能」というものだろうか、ならば、自分には勝てない。
…本当に三日で済みそうだ。
まぁ、そうなんだろう。社長が選んだのだから。
一通り終わり、彼女は「疲れました…」と、素直に言ってきた。
「うん、よく休んでね。月曜日も忙しいから…」
スケジュール帳を纏めている。
18時だった。
社長がふと席を立ち出て行ったのを見計らった彼女は「あの…」と、もしかして少しは弱音も出るかなぁと律がふらっと構えたときだった。
「…駒越さん、彼女さん、年下の方なんですか?」
…予想していた話題に全く繋がらず、「え?」と、少しフリーズしてしまった。
彼女は若干もじもじとしながら「実は……」と上目遣いに言い、それから右の項あたりを触り、何かを訴えてくる。
え、なんだろうこれ、全然読めないと律が困惑していると、「…言わない方が良いのかもですが、さっき見えた気がして…」と凄く気まずそう。
……もしかして……っ!?
じわじわ意味がわかってくると「え?嘘っ?え?何が?」と、自分でも驚くくらいに早口になっていた。
「でもなんか見えるか見えないかってのがちょっと色っぽいけど…」
解説をしないでおくれっ!!
爆破されたくなる。
「……駒越さん、仕事以外でなんとなく…優しいというかおっとりというか天然?ゆるふわ?そうなので…きっとそういうグイグイな彼女さん、ぴったりなんでしょうね…」
…情報が過多。
「……待ってよくわからない、かも」
「あ、いやすみません。大丈夫ですよ全然見えないですから…ただ、一度髪のなんか風だかなんだかで見えただけでもしかしてかも、ってさっき」
…変な日本語はあれか、この子。実は対処に困った時、だったりして。
「…平原さん」
「…はい?」
「もしかしてあのパフェ、あの時咄嗟に調べたの?」
ちょっとホントに凄いかもしれない。
まさかの事で全然話題が違う場所に行き着いてしまい、平原さんがポカンとしてしまった。
いや、普通に自分が考えすぎなのかもしれないけど…。
「……あ、お昼の」
「あ、ごめん変に反れちゃった。いや、動揺したときに変な日本語になるのかなって今ちょっと思って…」
「………変ですか!?」
「え」
あ。
超失礼かもこれ。あまりに動揺して一瞬だけキャパ越えたのかな俺、なんか変な人になってるかも。
ふう、俯瞰だ俯瞰。俯瞰しろ落ち着け…。
まぁ、自分は空気のクセにたまに凄くダメらしいからな…ハナちゃんママに言われたことがあると、思い出す。
しかし今度は平原さんが「あはははは!」と、急に笑ったのでヤバイ、カオスが連鎖してしまったかもしれないと思えば、
「流石ですね、見ててくれたんですか?なんだか嬉しいです!」
え。
どうしよう、なんかもう、よくわかんないや。
いや、それはきっと平原さんの方が、だよなぁ…と考えると「全然出てこなくてー」と砕けて言ってくれた。
「実は社長さん、なんか私のこと無理なのかもって最初、気になっちゃって」
「…あぁ、あぁ、そうか」
社長が悪いな、それは。確かに客観的に見れば少し、大体は付き合いにくい人なのかも。
サイコパスだし。
「…なんとなく、一緒についている間にまわる所なら、行きつけを教えるよ。正直たくさん行ったから…洗い出すのは難しくて」
「ありがとうございます」
「いやいや、急に変なこと言って」
「いえ…凄いです駒越さん。長年やってらしたんですよね?」
「んー…いや、秘書はたった3年で」
「されど、ですかね?」
場の空気が良くなった。
後輩、可愛いかもしれない。
そういえば自分は、こうして新人に教える機会があまりなかった。
まぁ、全部社長のせいだな。
こちらの空気が良くなったところで、社長が「飲み物買ってきたよ」と帰ってきた。
「あ、少し過ぎちゃったね。
さて、行かなきゃな…お疲れ様ね、二人とも」
いつもなら呼ばれるわけだけど。
ちらっとこちらの顔色を伺った平原さんは「そうですね」と然り気無く手帳をしまい、帰る準備を始めた。
社長もそれに合わせるのだからなるほど、意外と息も合うのかもしれないなと、染々思う。
「…まぁ、食うか、駒越くん。時間もないけど、じゃあ、車の中でだって聞く」
「あ、はい、そうですね…すみません」
「…ははっ。
駒込くんの悪いところはね、平原さん。超詰めるんだよ、こーやってさ。俺は当たり前に着いてきたけどそうだな、飯くらいちゃんと食わないとだよなぁ」
「そうなんですね?」
「うんまぁ。あまり邪魔され過ぎてもイラッとするけど、俺も仕事人間だからさ。でも、合わせることも必要だよな」
あんたが仕事人間だから俺も合わせてきましたけどね。
けど、そう。互いにブレーキを掛けることも大切だ。その匙加減はこれから彼女が学んでいくところなのだろう……。
少し、寂しくなった。
本来、まぁ、仕事は嫌いじゃない。好きでは絶対にないけれど。
ただどうやらこうやって思うくらいには、思い入れはあったようだ。
平原さんはその後の社内会議でも、すっかり慣れた様子でちゃんとメモを取ることが出来ていた。
メモもまだ少し無駄はあるし、Tシャツの件もあと一歩踏み込んでくれたら良い。
でも、まさか一日で「あとは馴染んで社を掴むのみだな」という状態になるとは思わなかった。
この点はガッツリ食らいついてくれている。なるほど社長若妻となるだけある裁量なのかも、そう思った。
…何より、いざというとき女性というのは、上手く一歩引くことが出来たりするようだ。
素直に感心してしまった。男同士では変に、どうしょもないことで頑なになってしまう事がある。こればかりは恐らく「本能」というものだろうか、ならば、自分には勝てない。
…本当に三日で済みそうだ。
まぁ、そうなんだろう。社長が選んだのだから。
一通り終わり、彼女は「疲れました…」と、素直に言ってきた。
「うん、よく休んでね。月曜日も忙しいから…」
スケジュール帳を纏めている。
18時だった。
社長がふと席を立ち出て行ったのを見計らった彼女は「あの…」と、もしかして少しは弱音も出るかなぁと律がふらっと構えたときだった。
「…駒越さん、彼女さん、年下の方なんですか?」
…予想していた話題に全く繋がらず、「え?」と、少しフリーズしてしまった。
彼女は若干もじもじとしながら「実は……」と上目遣いに言い、それから右の項あたりを触り、何かを訴えてくる。
え、なんだろうこれ、全然読めないと律が困惑していると、「…言わない方が良いのかもですが、さっき見えた気がして…」と凄く気まずそう。
……もしかして……っ!?
じわじわ意味がわかってくると「え?嘘っ?え?何が?」と、自分でも驚くくらいに早口になっていた。
「でもなんか見えるか見えないかってのがちょっと色っぽいけど…」
解説をしないでおくれっ!!
爆破されたくなる。
「……駒越さん、仕事以外でなんとなく…優しいというかおっとりというか天然?ゆるふわ?そうなので…きっとそういうグイグイな彼女さん、ぴったりなんでしょうね…」
…情報が過多。
「……待ってよくわからない、かも」
「あ、いやすみません。大丈夫ですよ全然見えないですから…ただ、一度髪のなんか風だかなんだかで見えただけでもしかしてかも、ってさっき」
…変な日本語はあれか、この子。実は対処に困った時、だったりして。
「…平原さん」
「…はい?」
「もしかしてあのパフェ、あの時咄嗟に調べたの?」
ちょっとホントに凄いかもしれない。
まさかの事で全然話題が違う場所に行き着いてしまい、平原さんがポカンとしてしまった。
いや、普通に自分が考えすぎなのかもしれないけど…。
「……あ、お昼の」
「あ、ごめん変に反れちゃった。いや、動揺したときに変な日本語になるのかなって今ちょっと思って…」
「………変ですか!?」
「え」
あ。
超失礼かもこれ。あまりに動揺して一瞬だけキャパ越えたのかな俺、なんか変な人になってるかも。
ふう、俯瞰だ俯瞰。俯瞰しろ落ち着け…。
まぁ、自分は空気のクセにたまに凄くダメらしいからな…ハナちゃんママに言われたことがあると、思い出す。
しかし今度は平原さんが「あはははは!」と、急に笑ったのでヤバイ、カオスが連鎖してしまったかもしれないと思えば、
「流石ですね、見ててくれたんですか?なんだか嬉しいです!」
え。
どうしよう、なんかもう、よくわかんないや。
いや、それはきっと平原さんの方が、だよなぁ…と考えると「全然出てこなくてー」と砕けて言ってくれた。
「実は社長さん、なんか私のこと無理なのかもって最初、気になっちゃって」
「…あぁ、あぁ、そうか」
社長が悪いな、それは。確かに客観的に見れば少し、大体は付き合いにくい人なのかも。
サイコパスだし。
「…なんとなく、一緒についている間にまわる所なら、行きつけを教えるよ。正直たくさん行ったから…洗い出すのは難しくて」
「ありがとうございます」
「いやいや、急に変なこと言って」
「いえ…凄いです駒越さん。長年やってらしたんですよね?」
「んー…いや、秘書はたった3年で」
「されど、ですかね?」
場の空気が良くなった。
後輩、可愛いかもしれない。
そういえば自分は、こうして新人に教える機会があまりなかった。
まぁ、全部社長のせいだな。
こちらの空気が良くなったところで、社長が「飲み物買ってきたよ」と帰ってきた。
「あ、少し過ぎちゃったね。
さて、行かなきゃな…お疲れ様ね、二人とも」
いつもなら呼ばれるわけだけど。
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