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色々、半週間が一気に怒涛と化してしまったが、律の辞表は火曜日で無事に判子を押され、受理された。
平原さんの今後、長いことを考えれば明るい。勿論まだ三日では至らないところも見えるけれど、自分が言い出した手前、あっさり手を引く、という感覚だった。
あっさり……だが、やはり帰りはハナちゃんママの店に寄っていた。
「あらりっちゃん」
そこは変わらずに、いつも通り。
ただ晴れやかに笑うことを忘れず「…今度こそ本当に退職祝いです」と報告をしたのだった。
「…あら、こんなにあっさり?」
話ながら律を奥の席に……。
と、思いきや。
奥にはあの晃彦が既に座っていて、何も言わずに手を上げてきた。
マジか、晃彦。
でも、そういえば自分が火曜日にここへ来るというのは…初めてかもしれない。
しかし動揺も一瞬で、爽やかなもんだと自分を俯瞰しつつ、律は晃彦から一席開けた場所に座り「メキシコークで」とはっ飛ばすことに決めた。
「…なんか、随分さっぱりしてるわね、りっちゃん」
「うん。なんというか…。
さっぱりしているわりにはどこか感傷的な気もして」
「まぁ、恋が終わるのはそんなものよねぇ」
そっか。
ハナちゃんママの一言で、まるで思い出したような感覚。
終わったのか。
「あれからもう、多分SNSも落ち着いてきてるぞ」
ケータイを弄る晃彦を見て、やっぱり知っていたのかと、でも不思議と、あの件はもう遠く感じて「そう、」とだけ返しておいた。
メキシコークが来て取り敢えず乾杯。
「さて、りっちゃんこの後はどーするの?」
「…実はあまり考えてなくて」
「あらぁ」
「有給の間に職探しでもしたいけど、少し脱力中というか…」
「辞めたことないもんねりっちゃん」
「そう。ずっと仕事仕事仕事~でいままで来てたから、なんか力抜けちゃったみたいです」
「鬱病になる前に動けると良いけどね、まぁそんときはウチに飲みに来なさいね」
「鬱病?」
「こう、一人で籠ってるとまずは3日目にヤバイ、なんかしないとって罪悪感がキテね~、でも何もしてない、て…」
「うわぁ…なんか想像出来ない…」
「あ~なんかそれわかるかもというか俺は想像出来るかも…。
仕事に就いてみてなんか、これしかねぇかも感がいま俺の現状だもんな…」
染々言う晃彦は律を眺めて「律、」とやはり話し掛けてくる。
「…今ならわかるかも、少しは。でもだからこそ俺は律がわからない」
「まぁ、」
「仕事を理由にしてたと言うわりには、俺のシャーペン、切れたことなかったもんな…」
あ、こういうパターン絶対悪いやつだ…と思いつつ、思い出しそうになったところで「まだ少し休みなさいよ」とハナちゃんママは言ってくれた。
「あ、そうだね確かに」
「そうよ、まぁたあんたは独り善がりなんだから」
「そうだねぇ」
…やっぱ、大人になったなぁ、晃彦も。
「まぁ、俺もわかったというか、昔は言ってあげなかったけど俺が悪いからねぇ」
ぱんっ。
「ほらこうなるから!」と、ハナちゃんママが手を叩く。
「何言ってんのりっちゃん。こいつがクソバカなんだからねっ!」
というか、晃彦は酒を持ったまま固まってしまったようだ。
「…律、そんなこと思ってたんだ…」
「そうだよ?晃彦は性別を越えられるからねぇ、あ、やっぱそうなんだね…て、こっちには負い目になるかもよってはっきり言っとくけどさ」
「………俺クソバカゲス野郎だなっ!」
そして急に突っ伏すのだから「ほらこうなるじゃん」とハナちゃんママの言葉を借りた。
「やーっとねやーっと。りっちゃんよく言ったわ」
「うん」
「まぁでも、りっちゃんは押し弱すぎというか気にしすぎだからねぇ、なるべくしてなったんじゃない?あんたら身体の相性超悪そう」
「そこは教授が偉大でしたから」
「道を開いただけですわよ、穴と一緒に」
「あーあーあーっ!複雑だから俺の前でその話しないでっ、」
「あんたそんなんでよくハプバー通えたわね全く」
「あ、でも男と浮気された方が“腹立つ~っ、殺した~い”って感覚にはなるかも。うんやっぱ凄くクズだね」
「わ~ホンット、いやぁでもも~わかったよ!今後ないね間違いなく!」
今後とか…。
ビールをがんっとして、まるでポジティブに起き上がった晃彦に「ちょっと割らないでよね」とハナちゃんママは冷たく言った。
「…律ぅ~、」
「いや、今後とかなんも考えてないから。それを良くも悪くもと考えてれば良いんじゃない?」
しれっと言う律の隣に晃彦が来ようかというとき、店のドアがカランと音を立てた。
「いらっしゃ~い」と言うハナちゃんママがすぐ、良い男を見つけた目線を送っているのはわかったが、それよりも「こんばんは」と言った声に聞き覚えがあり、律もドアの方を見る。
何故か社長がいた。
「しゃ、社長!?」
言った瞬間、ハナちゃんママも晃彦も固まったのがわかる。
「あぁ。何飲みますぅ?」と言い、律と晃彦の間の席に社長を促したハナちゃんママは手の平を返したような声色、態度。
そのまま何も知らずにそこに座った社長は「あぁ…えっと車なので、烏龍茶を」と更に微妙な空気が漂った。
平原さんの今後、長いことを考えれば明るい。勿論まだ三日では至らないところも見えるけれど、自分が言い出した手前、あっさり手を引く、という感覚だった。
あっさり……だが、やはり帰りはハナちゃんママの店に寄っていた。
「あらりっちゃん」
そこは変わらずに、いつも通り。
ただ晴れやかに笑うことを忘れず「…今度こそ本当に退職祝いです」と報告をしたのだった。
「…あら、こんなにあっさり?」
話ながら律を奥の席に……。
と、思いきや。
奥にはあの晃彦が既に座っていて、何も言わずに手を上げてきた。
マジか、晃彦。
でも、そういえば自分が火曜日にここへ来るというのは…初めてかもしれない。
しかし動揺も一瞬で、爽やかなもんだと自分を俯瞰しつつ、律は晃彦から一席開けた場所に座り「メキシコークで」とはっ飛ばすことに決めた。
「…なんか、随分さっぱりしてるわね、りっちゃん」
「うん。なんというか…。
さっぱりしているわりにはどこか感傷的な気もして」
「まぁ、恋が終わるのはそんなものよねぇ」
そっか。
ハナちゃんママの一言で、まるで思い出したような感覚。
終わったのか。
「あれからもう、多分SNSも落ち着いてきてるぞ」
ケータイを弄る晃彦を見て、やっぱり知っていたのかと、でも不思議と、あの件はもう遠く感じて「そう、」とだけ返しておいた。
メキシコークが来て取り敢えず乾杯。
「さて、りっちゃんこの後はどーするの?」
「…実はあまり考えてなくて」
「あらぁ」
「有給の間に職探しでもしたいけど、少し脱力中というか…」
「辞めたことないもんねりっちゃん」
「そう。ずっと仕事仕事仕事~でいままで来てたから、なんか力抜けちゃったみたいです」
「鬱病になる前に動けると良いけどね、まぁそんときはウチに飲みに来なさいね」
「鬱病?」
「こう、一人で籠ってるとまずは3日目にヤバイ、なんかしないとって罪悪感がキテね~、でも何もしてない、て…」
「うわぁ…なんか想像出来ない…」
「あ~なんかそれわかるかもというか俺は想像出来るかも…。
仕事に就いてみてなんか、これしかねぇかも感がいま俺の現状だもんな…」
染々言う晃彦は律を眺めて「律、」とやはり話し掛けてくる。
「…今ならわかるかも、少しは。でもだからこそ俺は律がわからない」
「まぁ、」
「仕事を理由にしてたと言うわりには、俺のシャーペン、切れたことなかったもんな…」
あ、こういうパターン絶対悪いやつだ…と思いつつ、思い出しそうになったところで「まだ少し休みなさいよ」とハナちゃんママは言ってくれた。
「あ、そうだね確かに」
「そうよ、まぁたあんたは独り善がりなんだから」
「そうだねぇ」
…やっぱ、大人になったなぁ、晃彦も。
「まぁ、俺もわかったというか、昔は言ってあげなかったけど俺が悪いからねぇ」
ぱんっ。
「ほらこうなるから!」と、ハナちゃんママが手を叩く。
「何言ってんのりっちゃん。こいつがクソバカなんだからねっ!」
というか、晃彦は酒を持ったまま固まってしまったようだ。
「…律、そんなこと思ってたんだ…」
「そうだよ?晃彦は性別を越えられるからねぇ、あ、やっぱそうなんだね…て、こっちには負い目になるかもよってはっきり言っとくけどさ」
「………俺クソバカゲス野郎だなっ!」
そして急に突っ伏すのだから「ほらこうなるじゃん」とハナちゃんママの言葉を借りた。
「やーっとねやーっと。りっちゃんよく言ったわ」
「うん」
「まぁでも、りっちゃんは押し弱すぎというか気にしすぎだからねぇ、なるべくしてなったんじゃない?あんたら身体の相性超悪そう」
「そこは教授が偉大でしたから」
「道を開いただけですわよ、穴と一緒に」
「あーあーあーっ!複雑だから俺の前でその話しないでっ、」
「あんたそんなんでよくハプバー通えたわね全く」
「あ、でも男と浮気された方が“腹立つ~っ、殺した~い”って感覚にはなるかも。うんやっぱ凄くクズだね」
「わ~ホンット、いやぁでもも~わかったよ!今後ないね間違いなく!」
今後とか…。
ビールをがんっとして、まるでポジティブに起き上がった晃彦に「ちょっと割らないでよね」とハナちゃんママは冷たく言った。
「…律ぅ~、」
「いや、今後とかなんも考えてないから。それを良くも悪くもと考えてれば良いんじゃない?」
しれっと言う律の隣に晃彦が来ようかというとき、店のドアがカランと音を立てた。
「いらっしゃ~い」と言うハナちゃんママがすぐ、良い男を見つけた目線を送っているのはわかったが、それよりも「こんばんは」と言った声に聞き覚えがあり、律もドアの方を見る。
何故か社長がいた。
「しゃ、社長!?」
言った瞬間、ハナちゃんママも晃彦も固まったのがわかる。
「あぁ。何飲みますぅ?」と言い、律と晃彦の間の席に社長を促したハナちゃんママは手の平を返したような声色、態度。
そのまま何も知らずにそこに座った社長は「あぁ…えっと車なので、烏龍茶を」と更に微妙な空気が漂った。
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