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朝に愁いじ夢見るを
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…私にはあの、み空の心底楽しそうな笑顔が頭に残ってしまった。
ふっと、それは一階の空き部屋のような場所だった。布団もあるし恐らく、こういった飛び込みなどで使うのかもしれない、空き部屋の割に整頓されている部屋。
はっとすれば私の視界に邑楽が居らず、ただ下でもぞもぞと私の逸物を出し、「あらどうなるかしら」と当たり前に咥えたのだった。
あまりに情緒もない始まりに驚き、「ちょっ、待て、」と肩あたりを手で押したが、彼はまるで“自分”を見せつけるような瞳、動作で私の逸物を起立させていく。
…そういえば一番最初に言われたな、上方と違い江戸っ子気質なので、だなんて。
「あたしねぇ、田崎殿」
いや、君が声を掛けているそれは私の一部でしかないのだが。
子供の暑さにかっとする。
舐め回しながら彼はさらに、少し弱まってしまった私の手を引っ張り乳首を触らせてきては「人の物が欲しくなるんですよ」と喋る。
「…は、」
見上げた彼はにやっと笑窪を作り「あんた、み空さんの客だったんでしょう?」と言った。
彼は私に触らせている乳首にいちいち声を漏らす。そして、前触れもなく手を引いて笑い、押し倒させるように布団へ寝転んだ。
脱いでいく、でもなく私を脱がすようにそれから身体に舌を這わせる彼は「楼主はああ言ったけど」と、音を立てて私の肌を吸い始めた。
「三郎さんの物をあんたも取ってるよね、今。どう?あたし、三郎さんから一分貰ったの」
…心付けとか言ってたなそういえば。あいつは確かにどこに行っても金を配る。
「どんな気分…?ねえ、」
ずりずり、とした動作で着物をはだけさせた邑楽は胸だけに飽き足らず肌、勿論逸物も触らせてくる。
確かに…手に吸い付いてくるような。しかし若い女程ではなくまだ、成長過程だと思わされる、柔らかいような固いような感触。
こんな時期から“女”になれば身体付きまで変わりそうだなと、み空を思い浮かべた。
彼も男なのだが、彼は私なんかより柔らかみがある。
「あの年寄りよりも、どう?若いでしょ?」
「まぁ…確かに、」
足の張りや肉付きやらと、わからなくもないのだが。
「…み空が気になるのか?」
「ん?まぁね。あの人、ここで一番なんでしょ?女も取らないような」
「…ん?」
「知らないの?一流の男娼は男としか寝ないんだよ?確かにあたしと違って“男娼”だけどさ、今あんななのにそんな待遇ってなんなんだろうなって」
そうなのか…。
「三流落ちすらしない穀潰しの年寄りなんて、蹴飛ばしてやりたくなるのが男でしょ?」
……なるほどな。
私がその、邑楽の盛りな逸物に触れてやれば「あん」だなんて、声を出す。
君が目指しているのは確か、役者だったよな。
「…こっち集中して欲しいな」
「んーん、もっと」
「そうだなぁ」
あっさりぐっと入れてやれば肩に手をやり「あはは、激し、」と無邪気に笑う。
「意外とそうなんだね、田崎さん」
私が邑楽の足を持ち上げ動けばその度に喘いでくる。少し、耳触りな程だ。
「あたし、そんなにいい?」
そのわりによく喋る、得意気な目で。まぁそれも若さだろうけど。
「…君は疲れるかもしれないなぁ、だからさ、」
…結構無理にずりっと邑楽の奥へ向かえばこちらは痛い、彼も多分そうだろうが「ぃあ、…んもっと、」と作る。
「優しくして…?」
「…大丈夫、24文、あげるよ。沢山食べた方がいい」
「…………」
漸く邑楽が黙ったので「役者なら落語は聞くか?」と聞いてみた。
ふいっと彼は…作り笑顔が一気に崩れつまらなそうに横を向き「野暮った、」と本音を吐いた。
「…馬鹿にしてんの?」
「身を案じているんだが」
「あーもういーや萎えちまった」
意外と力強く私を押し飛ばした彼は「…見返してやるよ、」とはっきり宣言した。
「あたしあっちじゃ石川藤四郎でやってんだ。そのうち観に来なよ、まだ、いまはだけど…絶対に売れてやるから」
「……っはは、若いってのは勇気を貰うな」
それは、案外素直な感想だった。
それを察したのかはわからないが、彼は私と目を合わせ漸く「じゃ、やる?」と持ち掛けてきた。
私が答えずにいると焦れたように「あぁもう!」と、やはり手を引き自分に寄せ、触れとばかりに私の手を各所に当てていく。
結局、射精を手伝わされたようなものだった。
私は約束通り24文を出したが「いらない」といじける彼の部屋に24文を置いたまま去った。
…本当に意地があるのなら学ぶといい。これで金を投げるようではまだまだだが、こうして男の自尊心を折るのは心が痛いものだ。
だから次は、み空に会おう。返事も考えたのだし。彼は笑ってくれるだろうか。
君たちに普通なことは、確かに私には普通ではない。だが…様々な普通がある。
一切もいなかった私に番台はチラッと私を見たが、「毎度」としか言わなかった。
このときに私は漸く、筆を一本取ろうと考えたのかもしれないと、今なら振り返る。私も、成り上がりではなく、成り下がったのだと。
ふっと、それは一階の空き部屋のような場所だった。布団もあるし恐らく、こういった飛び込みなどで使うのかもしれない、空き部屋の割に整頓されている部屋。
はっとすれば私の視界に邑楽が居らず、ただ下でもぞもぞと私の逸物を出し、「あらどうなるかしら」と当たり前に咥えたのだった。
あまりに情緒もない始まりに驚き、「ちょっ、待て、」と肩あたりを手で押したが、彼はまるで“自分”を見せつけるような瞳、動作で私の逸物を起立させていく。
…そういえば一番最初に言われたな、上方と違い江戸っ子気質なので、だなんて。
「あたしねぇ、田崎殿」
いや、君が声を掛けているそれは私の一部でしかないのだが。
子供の暑さにかっとする。
舐め回しながら彼はさらに、少し弱まってしまった私の手を引っ張り乳首を触らせてきては「人の物が欲しくなるんですよ」と喋る。
「…は、」
見上げた彼はにやっと笑窪を作り「あんた、み空さんの客だったんでしょう?」と言った。
彼は私に触らせている乳首にいちいち声を漏らす。そして、前触れもなく手を引いて笑い、押し倒させるように布団へ寝転んだ。
脱いでいく、でもなく私を脱がすようにそれから身体に舌を這わせる彼は「楼主はああ言ったけど」と、音を立てて私の肌を吸い始めた。
「三郎さんの物をあんたも取ってるよね、今。どう?あたし、三郎さんから一分貰ったの」
…心付けとか言ってたなそういえば。あいつは確かにどこに行っても金を配る。
「どんな気分…?ねえ、」
ずりずり、とした動作で着物をはだけさせた邑楽は胸だけに飽き足らず肌、勿論逸物も触らせてくる。
確かに…手に吸い付いてくるような。しかし若い女程ではなくまだ、成長過程だと思わされる、柔らかいような固いような感触。
こんな時期から“女”になれば身体付きまで変わりそうだなと、み空を思い浮かべた。
彼も男なのだが、彼は私なんかより柔らかみがある。
「あの年寄りよりも、どう?若いでしょ?」
「まぁ…確かに、」
足の張りや肉付きやらと、わからなくもないのだが。
「…み空が気になるのか?」
「ん?まぁね。あの人、ここで一番なんでしょ?女も取らないような」
「…ん?」
「知らないの?一流の男娼は男としか寝ないんだよ?確かにあたしと違って“男娼”だけどさ、今あんななのにそんな待遇ってなんなんだろうなって」
そうなのか…。
「三流落ちすらしない穀潰しの年寄りなんて、蹴飛ばしてやりたくなるのが男でしょ?」
……なるほどな。
私がその、邑楽の盛りな逸物に触れてやれば「あん」だなんて、声を出す。
君が目指しているのは確か、役者だったよな。
「…こっち集中して欲しいな」
「んーん、もっと」
「そうだなぁ」
あっさりぐっと入れてやれば肩に手をやり「あはは、激し、」と無邪気に笑う。
「意外とそうなんだね、田崎さん」
私が邑楽の足を持ち上げ動けばその度に喘いでくる。少し、耳触りな程だ。
「あたし、そんなにいい?」
そのわりによく喋る、得意気な目で。まぁそれも若さだろうけど。
「…君は疲れるかもしれないなぁ、だからさ、」
…結構無理にずりっと邑楽の奥へ向かえばこちらは痛い、彼も多分そうだろうが「ぃあ、…んもっと、」と作る。
「優しくして…?」
「…大丈夫、24文、あげるよ。沢山食べた方がいい」
「…………」
漸く邑楽が黙ったので「役者なら落語は聞くか?」と聞いてみた。
ふいっと彼は…作り笑顔が一気に崩れつまらなそうに横を向き「野暮った、」と本音を吐いた。
「…馬鹿にしてんの?」
「身を案じているんだが」
「あーもういーや萎えちまった」
意外と力強く私を押し飛ばした彼は「…見返してやるよ、」とはっきり宣言した。
「あたしあっちじゃ石川藤四郎でやってんだ。そのうち観に来なよ、まだ、いまはだけど…絶対に売れてやるから」
「……っはは、若いってのは勇気を貰うな」
それは、案外素直な感想だった。
それを察したのかはわからないが、彼は私と目を合わせ漸く「じゃ、やる?」と持ち掛けてきた。
私が答えずにいると焦れたように「あぁもう!」と、やはり手を引き自分に寄せ、触れとばかりに私の手を各所に当てていく。
結局、射精を手伝わされたようなものだった。
私は約束通り24文を出したが「いらない」といじける彼の部屋に24文を置いたまま去った。
…本当に意地があるのなら学ぶといい。これで金を投げるようではまだまだだが、こうして男の自尊心を折るのは心が痛いものだ。
だから次は、み空に会おう。返事も考えたのだし。彼は笑ってくれるだろうか。
君たちに普通なことは、確かに私には普通ではない。だが…様々な普通がある。
一切もいなかった私に番台はチラッと私を見たが、「毎度」としか言わなかった。
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