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Prologue
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嫌な予感ほど、よく当たる。
職業柄、勘は冴えている方で、テレビの占い等も観ない質なのだが。
たまたまその日、時刻が知りたいがためにつけたテレビで流れた占いで、おとめ座が5位と言う微妙さ、さらに別の番組でやっていた血液型占いのO型が3位という、これも凄くモヤモヤする結果だった。
テレビの占い通りにいけば、俺は今日一日、とても微妙ななるのだろうと思って出勤した。
出勤して開口一番、
「人事移動が出た」と言われてしまった。
「え?どこに?」
「うーん、厚労省」
なんだそれ。
「いや、待って待ってどーゆー…」
「マトリんとこ行って来て。いま警視庁と合同でかなりのヤマを追ってるらしくてさ。こっちも要請が来た。捜査要請及び人員要請だ。
突入していい。ただ指揮を取ってきて」
それって要するに。
どう頑張っても俺が仲裁というか、警視庁と厚労省の橋渡しをしろ、ということだろうよ。理解。
「何、不満なの?」
不機嫌そうに、上司はデスクを指で叩きながら俺に言ってきた。
「不満でも行くんでしょ?情報だけください」
そんなに不機嫌そうならこっちも不機嫌に返してやらぁ。
「ああ。まずこれね」
上司、高田創太は、口元だけで笑い、俺にペラペラな紙の資料を渡してきた。
目尻に寄る皺が深い。よほどのヤマなのだろう。
上司に手招きされ、仕方なく高田の隣に立つと、パソコンを指差される。高田は下がった眼鏡を静かに上げ、俺の顔を見てきた。
さっぱりぴんとこない。
どうやら、死刑囚のようだが…。
「時間がないからざっくり説明するけど」
え、時間がないって?
「…君その顔、まさかニュース観てない?」
「観ましたけど、は?」
「まぁいい。この死刑囚、徳田賢良が脱獄して、まぁ立て籠ってるわけよ」
「は?へ?」
「場所はここ」
パソコンの画面が切り替わる。
大使館の目と鼻の先の高級ホテル『R'e chanteur』。
「うわぁ…なるほど。」
「しかも明日、外交官がフランスの書記官と対談するんだよね」
「…立て籠り3日目って資料にはありますね」
紙資料と画面を交互に見ながら言う。なんとなく、特殊捜査の理由だけはわかった。
だがまだわからない。
「そう。つまり今日中に終息したいわけだがこいつがな、まぁ、ジャンキーだったわけだよ」
「はい…まぁそのジャンキーを捕らえてバックを押さえろと?」
「まぁただ、こっちに要請してきてるくらいだから、最悪…」
「わかりました」
紙資料だけ持って出ようとすると、「車は呼んである。今回の相棒だ」と高田から声が掛かる。
ドアが閉まる音とともに舌打ちをしてやった。
下まで行くと、見馴れた、組織兼用の白い車が停まっている。
誰かと思って見てみると、相手は凄く嫌そうな顔を隠しもしない奴だった。
俺だって嫌だ。
なんでよりによってこいつが。
仕方ない。
助手席に乗ると、「…久しぶりだね、元気?」と、やっぱり嫌さを隠しもしない口調で俺に体裁を述べた。
ヤツの名前は星川潤。同期であり戦友だ。
色白で、光に当たると茶色っぽい真っ直ぐな髪。鼻筋が通った、どちらかと言えば中性的な顔立ちの、美形男子と言ったところだ。長身だし、普通にしていればモテるのだろうが…。
「まぁな」
タバコを咥えたところで、ライターがないことに気が付いた。
潤が「ないの?」と言ってライターを出してくるがそれには甘んじず、俺は車のシガーライターを使った。
「相変わらず嫌味な男だね」
「あぁ、まぁな」
潤はそんな俺に溜め息を吐いて自分もタバコを咥えてライターで火をつけた。
車の無線が入る。
「はい、星川です」
『そっちに壽美田は行った?』
「はいー。王子は確保しました。不機嫌ですよ」
『…君のそーゆー皮肉っぽいところじゃないの?まぁいい。大使館前のホテルへ向かってくれ』
「俺らホテルでいいんですか?」
『むしろ突入するのはお前らが要だよ』
ちらっと睨むように潤は俺を見る。全くこいつは仕方のない奴だ。
「局長、それ、俺らの仕事ですか?」
『は?』
「んなの、警察の仕事でしょ?」
『我々の仕事は捜査だ。我々に重要な情報を持ってくる。それだけやればいいよ。
徳田は逃がすなよ。逃げる可能性があるから』
「…具体的に?」
『逃がすくらいなら殺して来いよってこと。
そして、俺は警察を信用していないと言うことです』
高田の無線は一方的に切れた。
「なるほどねぇ…」
「面倒くせぇな」
確かに、厄介な仕事を任されたものだ。
「あのさ」
「なに?」
「俺まともに資料読んでねぇんだけど、情報頂戴」
「あー、そっか。
3日くらい前から死刑囚の徳田賢良が大使館前のホテルに立て籠ってるんだけど」
「明日フランスの書記官と対談があるから今日中に終息させたいと言われた」
「うん。一応きている情報は死刑囚がジャンキーで、このジャンキーがね…。
そもそも、徳田のバックが厄介な組織かもしれなくてね」
「て言うと?」
「…7年前の事件、あるだろ?」
言いにくそうに潤は言い、ちらっと俺を見た。
あぁ、なるほど。
職業柄、勘は冴えている方で、テレビの占い等も観ない質なのだが。
たまたまその日、時刻が知りたいがためにつけたテレビで流れた占いで、おとめ座が5位と言う微妙さ、さらに別の番組でやっていた血液型占いのO型が3位という、これも凄くモヤモヤする結果だった。
テレビの占い通りにいけば、俺は今日一日、とても微妙ななるのだろうと思って出勤した。
出勤して開口一番、
「人事移動が出た」と言われてしまった。
「え?どこに?」
「うーん、厚労省」
なんだそれ。
「いや、待って待ってどーゆー…」
「マトリんとこ行って来て。いま警視庁と合同でかなりのヤマを追ってるらしくてさ。こっちも要請が来た。捜査要請及び人員要請だ。
突入していい。ただ指揮を取ってきて」
それって要するに。
どう頑張っても俺が仲裁というか、警視庁と厚労省の橋渡しをしろ、ということだろうよ。理解。
「何、不満なの?」
不機嫌そうに、上司はデスクを指で叩きながら俺に言ってきた。
「不満でも行くんでしょ?情報だけください」
そんなに不機嫌そうならこっちも不機嫌に返してやらぁ。
「ああ。まずこれね」
上司、高田創太は、口元だけで笑い、俺にペラペラな紙の資料を渡してきた。
目尻に寄る皺が深い。よほどのヤマなのだろう。
上司に手招きされ、仕方なく高田の隣に立つと、パソコンを指差される。高田は下がった眼鏡を静かに上げ、俺の顔を見てきた。
さっぱりぴんとこない。
どうやら、死刑囚のようだが…。
「時間がないからざっくり説明するけど」
え、時間がないって?
「…君その顔、まさかニュース観てない?」
「観ましたけど、は?」
「まぁいい。この死刑囚、徳田賢良が脱獄して、まぁ立て籠ってるわけよ」
「は?へ?」
「場所はここ」
パソコンの画面が切り替わる。
大使館の目と鼻の先の高級ホテル『R'e chanteur』。
「うわぁ…なるほど。」
「しかも明日、外交官がフランスの書記官と対談するんだよね」
「…立て籠り3日目って資料にはありますね」
紙資料と画面を交互に見ながら言う。なんとなく、特殊捜査の理由だけはわかった。
だがまだわからない。
「そう。つまり今日中に終息したいわけだがこいつがな、まぁ、ジャンキーだったわけだよ」
「はい…まぁそのジャンキーを捕らえてバックを押さえろと?」
「まぁただ、こっちに要請してきてるくらいだから、最悪…」
「わかりました」
紙資料だけ持って出ようとすると、「車は呼んである。今回の相棒だ」と高田から声が掛かる。
ドアが閉まる音とともに舌打ちをしてやった。
下まで行くと、見馴れた、組織兼用の白い車が停まっている。
誰かと思って見てみると、相手は凄く嫌そうな顔を隠しもしない奴だった。
俺だって嫌だ。
なんでよりによってこいつが。
仕方ない。
助手席に乗ると、「…久しぶりだね、元気?」と、やっぱり嫌さを隠しもしない口調で俺に体裁を述べた。
ヤツの名前は星川潤。同期であり戦友だ。
色白で、光に当たると茶色っぽい真っ直ぐな髪。鼻筋が通った、どちらかと言えば中性的な顔立ちの、美形男子と言ったところだ。長身だし、普通にしていればモテるのだろうが…。
「まぁな」
タバコを咥えたところで、ライターがないことに気が付いた。
潤が「ないの?」と言ってライターを出してくるがそれには甘んじず、俺は車のシガーライターを使った。
「相変わらず嫌味な男だね」
「あぁ、まぁな」
潤はそんな俺に溜め息を吐いて自分もタバコを咥えてライターで火をつけた。
車の無線が入る。
「はい、星川です」
『そっちに壽美田は行った?』
「はいー。王子は確保しました。不機嫌ですよ」
『…君のそーゆー皮肉っぽいところじゃないの?まぁいい。大使館前のホテルへ向かってくれ』
「俺らホテルでいいんですか?」
『むしろ突入するのはお前らが要だよ』
ちらっと睨むように潤は俺を見る。全くこいつは仕方のない奴だ。
「局長、それ、俺らの仕事ですか?」
『は?』
「んなの、警察の仕事でしょ?」
『我々の仕事は捜査だ。我々に重要な情報を持ってくる。それだけやればいいよ。
徳田は逃がすなよ。逃げる可能性があるから』
「…具体的に?」
『逃がすくらいなら殺して来いよってこと。
そして、俺は警察を信用していないと言うことです』
高田の無線は一方的に切れた。
「なるほどねぇ…」
「面倒くせぇな」
確かに、厄介な仕事を任されたものだ。
「あのさ」
「なに?」
「俺まともに資料読んでねぇんだけど、情報頂戴」
「あー、そっか。
3日くらい前から死刑囚の徳田賢良が大使館前のホテルに立て籠ってるんだけど」
「明日フランスの書記官と対談があるから今日中に終息させたいと言われた」
「うん。一応きている情報は死刑囚がジャンキーで、このジャンキーがね…。
そもそも、徳田のバックが厄介な組織かもしれなくてね」
「て言うと?」
「…7年前の事件、あるだろ?」
言いにくそうに潤は言い、ちらっと俺を見た。
あぁ、なるほど。
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