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Prologue
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『…とにかく時は一刻を争います。話を進めたい。
連邦局長高田創太の名により本日人事移動が下ったもので。
えー、麻薬取締法違反兼殺人容疑で死刑確定の死刑囚徳田賢良が脱獄し、ホテル『R'e chanteur』に立て籠ってると聞きました。
なんでも官房長官一家がたまたま宿泊しているそうで。
で、明日大使館でちょっとした会合があるため今日中に事件を終息させたいと聞き及びましたが如何ですか?」
『あぁ、はぁ。
大変失礼致しました。警視庁特別本部の、今回指揮官を任されました、前島と申します』
「あぁ、どうも。そちらの状況を手短にどうぞ」
『現在人質は一般市民を含め242人で、現場ではただいま突入に向け、交渉を試みようとしていますが、犯人は一向に姿を見せない。
あちらからの要求はすべて人質であるホテルの支配人がこちらに電話を掛けてきている状態です』
「電話?
…それ、突入は不可能そうですか?」
『官房長の娘さんが、どうも行方知れずでして…犯人からは、下手に動けば娘さんを殺すと』
「うーん。
いまからパソコンに、ホテルの間取りと、その、支配人から掛かってきた電話の音声データ、送れますか?」
パソコンのアドレスを教えると、すぐにデータが送られてきた。
間取りはどの階も西と東に5部屋ずつ。真ん中に通路があり、突き当たりにエレベーター。反対側に非常階段がある。
部屋の間取りは20畳くらいのユニットバス。洗面所とトイレが扉のすぐ右にある。
エレベーターは一般用2台、従業員用1台完備。
屋上が16階にあり、ヘリポートと、主にパーティー用となっている。
一階のエントランスは入って右手に階段。目の前には彫刻。一番奥に受付がある。
一般的な高級ホテル。侵入するには厄介なはずだ。
「どうやって立て籠ったんだろうなこれ」
「3日も立て籠るにしてはちょっとね」
音声データを聞いてみた。
「…ん?」
やけに音がしない。
声の反響も少ない。まるで、声だけ切り取られたような、静けさ。
「これはもしかすると…」
「お、スミダレーダー反応した?」
「なんだよそれ。
聞けばわかる。俺たちはもしかするとここに行ってもあまり意味がないかもしれないな」
「…つまり?」
「こいつは、別のところに移動しているかもな。
最早このホテルに突入したところで、犯人なんていないんじゃないか、これ」
「…え?じゃぁどこに」
「もしくは、このホテル、地下が存在するとかな」
イヤホンマイクを入れてみた。
「ご苦労様でした。
お聞きしたいのですがただいまホテルで、誰か、誰でもいいです。人を確認することができますか?」
『はい?』
「あくまで俺の推理ですが。
これは一般的な高級ホテルですね。犯人が3日も立て籠るのはまず常識的に難しいんじゃないかな。
どうやってフロントを突破したのか。また、支配人の音声データですがね。
雑音があまりにもない。言うなれば、声だけ切り取られたかのような静けさ。
ここから推測するに、もし本当にこの支配人が徳田に人質として身柄を抑えられているならば、このホテル内は考えにくい。
だって、その他242人もいればこんなに無音だなんてあり得ないでしょう、声の反響も少なすぎる。つまりは防音設備がしっかりしたところじゃないかと。つまりだ。
一つは、ホテル以外のところから要求の電話を掛けてきている。二つは、このホテル、実は地下室なんかがあったりして、と思ったわけです。
言ってるうちにそろそろ着きます。これにて一度切ります」
俺たちは一度ホテル付近の月極駐車場に車を停める。小型のスーツケースに拳銃3丁と換えの銃弾を入れ、車を降りて歩いて現場まで向かった。
「ホントにお前はアメリカ映画のヒットマンみたいだね」
「物騒なこと言うなよ。ここは平和じゃないか」
「いまから襲撃しようってヤツがよく言うよ。てか、隣歩かないでよ標的にされるから」
ちょっと屈んで見上げて言われるとホント小動物みたいだ。並んで歩くと少し身長差がある。
「まぁ交通規定とか掛けてるから人通りもないしな。殺されるなら俺だな」
とかのんびり話しているときだった。
潤の横顔、蟀谷あたりに赤い光を見つけた。
俺が視線だけで一歩下がれと言うのを把握したようで、潤は一歩後ろへ下がる。
間があってから何か、ガラスが割れるような音がし、今潤がいたあたりの場所にあった店のガラスが割れていた。
すかさず銃弾が飛んできた方向へ、潤は一発ぶっ放した。
多分、外している。
落ちていた薬莢を見てみると、どうやらライフル弾のようだった。
「バックが警察組織内部ってのはあり得る話だな」
「は?」
「多分そろそろもう一撃来るな、走るぞ!」
取り敢えず公園まで走ろうか。
軍用ライフル、しかも、この型のなんて大体精度は微妙だ。
「公園まで!」
「はぁ!?」
「いいから!」
二発目。
左から同じ方向。
多分、位置的に向こう車線のビルの3階あたりだ。
確認する。
防音出来そうな3階くらいにある…。
あった、カラオケボックス。
「潤、多分あそこだ」
「え?」
GPSをオンにして局長に電話。
『おぅ、着いたか』
「着いてない、逆探よろしくお願いします。大使館前のカラオケボックスにて狙撃犯に撃たれそう!走って公園まで逃げてます!」
『わかった』
連邦局長高田創太の名により本日人事移動が下ったもので。
えー、麻薬取締法違反兼殺人容疑で死刑確定の死刑囚徳田賢良が脱獄し、ホテル『R'e chanteur』に立て籠ってると聞きました。
なんでも官房長官一家がたまたま宿泊しているそうで。
で、明日大使館でちょっとした会合があるため今日中に事件を終息させたいと聞き及びましたが如何ですか?」
『あぁ、はぁ。
大変失礼致しました。警視庁特別本部の、今回指揮官を任されました、前島と申します』
「あぁ、どうも。そちらの状況を手短にどうぞ」
『現在人質は一般市民を含め242人で、現場ではただいま突入に向け、交渉を試みようとしていますが、犯人は一向に姿を見せない。
あちらからの要求はすべて人質であるホテルの支配人がこちらに電話を掛けてきている状態です』
「電話?
…それ、突入は不可能そうですか?」
『官房長の娘さんが、どうも行方知れずでして…犯人からは、下手に動けば娘さんを殺すと』
「うーん。
いまからパソコンに、ホテルの間取りと、その、支配人から掛かってきた電話の音声データ、送れますか?」
パソコンのアドレスを教えると、すぐにデータが送られてきた。
間取りはどの階も西と東に5部屋ずつ。真ん中に通路があり、突き当たりにエレベーター。反対側に非常階段がある。
部屋の間取りは20畳くらいのユニットバス。洗面所とトイレが扉のすぐ右にある。
エレベーターは一般用2台、従業員用1台完備。
屋上が16階にあり、ヘリポートと、主にパーティー用となっている。
一階のエントランスは入って右手に階段。目の前には彫刻。一番奥に受付がある。
一般的な高級ホテル。侵入するには厄介なはずだ。
「どうやって立て籠ったんだろうなこれ」
「3日も立て籠るにしてはちょっとね」
音声データを聞いてみた。
「…ん?」
やけに音がしない。
声の反響も少ない。まるで、声だけ切り取られたような、静けさ。
「これはもしかすると…」
「お、スミダレーダー反応した?」
「なんだよそれ。
聞けばわかる。俺たちはもしかするとここに行ってもあまり意味がないかもしれないな」
「…つまり?」
「こいつは、別のところに移動しているかもな。
最早このホテルに突入したところで、犯人なんていないんじゃないか、これ」
「…え?じゃぁどこに」
「もしくは、このホテル、地下が存在するとかな」
イヤホンマイクを入れてみた。
「ご苦労様でした。
お聞きしたいのですがただいまホテルで、誰か、誰でもいいです。人を確認することができますか?」
『はい?』
「あくまで俺の推理ですが。
これは一般的な高級ホテルですね。犯人が3日も立て籠るのはまず常識的に難しいんじゃないかな。
どうやってフロントを突破したのか。また、支配人の音声データですがね。
雑音があまりにもない。言うなれば、声だけ切り取られたかのような静けさ。
ここから推測するに、もし本当にこの支配人が徳田に人質として身柄を抑えられているならば、このホテル内は考えにくい。
だって、その他242人もいればこんなに無音だなんてあり得ないでしょう、声の反響も少なすぎる。つまりは防音設備がしっかりしたところじゃないかと。つまりだ。
一つは、ホテル以外のところから要求の電話を掛けてきている。二つは、このホテル、実は地下室なんかがあったりして、と思ったわけです。
言ってるうちにそろそろ着きます。これにて一度切ります」
俺たちは一度ホテル付近の月極駐車場に車を停める。小型のスーツケースに拳銃3丁と換えの銃弾を入れ、車を降りて歩いて現場まで向かった。
「ホントにお前はアメリカ映画のヒットマンみたいだね」
「物騒なこと言うなよ。ここは平和じゃないか」
「いまから襲撃しようってヤツがよく言うよ。てか、隣歩かないでよ標的にされるから」
ちょっと屈んで見上げて言われるとホント小動物みたいだ。並んで歩くと少し身長差がある。
「まぁ交通規定とか掛けてるから人通りもないしな。殺されるなら俺だな」
とかのんびり話しているときだった。
潤の横顔、蟀谷あたりに赤い光を見つけた。
俺が視線だけで一歩下がれと言うのを把握したようで、潤は一歩後ろへ下がる。
間があってから何か、ガラスが割れるような音がし、今潤がいたあたりの場所にあった店のガラスが割れていた。
すかさず銃弾が飛んできた方向へ、潤は一発ぶっ放した。
多分、外している。
落ちていた薬莢を見てみると、どうやらライフル弾のようだった。
「バックが警察組織内部ってのはあり得る話だな」
「は?」
「多分そろそろもう一撃来るな、走るぞ!」
取り敢えず公園まで走ろうか。
軍用ライフル、しかも、この型のなんて大体精度は微妙だ。
「公園まで!」
「はぁ!?」
「いいから!」
二発目。
左から同じ方向。
多分、位置的に向こう車線のビルの3階あたりだ。
確認する。
防音出来そうな3階くらいにある…。
あった、カラオケボックス。
「潤、多分あそこだ」
「え?」
GPSをオンにして局長に電話。
『おぅ、着いたか』
「着いてない、逆探よろしくお願いします。大使館前のカラオケボックスにて狙撃犯に撃たれそう!走って公園まで逃げてます!」
『わかった』
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