ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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The 1st episode

6

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 その日は現場検証をして終了。

 最終的に銃弾の痕や血痕、その他損傷が見られ、結局明日の会合は別所にという結論になり、捜査自体も犯人逮捕という形で強引に終幕しようとしていた。

 ほぼ徹夜状態で現場検証をし、夜中に猪越さんと一度抜けてホテルの様子を見に行った。
 何人もの警察官が緊急車両で運ばれていくが、皆顔に白い布が被せられていた。

 その中に。
 前島さんらしき人物もいたが、最早わからなかった。

 家族や自衛隊などの雑踏の中、結局は遠目からしかわからない。俺たちはいくら手帳を見せたところで“危険区域”に入ることは敵わなかった。

 やるせない気持ちのまま現場で朝を迎え、下された結論が、強引に終幕となると、俺はなんてみんなに声を掛けていいのかわからなかった。

 だけど。

『君は君のやり方を信じて』

 これだけは忘れてはいけない。そう胸に刻んだ。

 朝になって一時解散。そこからどうなるか。一応、本日中にと言う話だった。そして俺たちFBIの仕事は事件の指揮と援護だったが、それは終息に向けての人事移動だった。

 一応捜査は警視庁とマトリが持つ形にはなった。
 多分これでチームは解散だろう。
 最後は一人一人に頭を下げて挨拶をし、現場を離れた。

「壽美田さん」

 最後、猪越さんと別れるとき。

「…呼んでくれてありがとうございました。また、会えたら…」
「…こちらこそ」

 きっともう…。

 帰りは俺が潤を乗せて家まで送る。

「着いたら起こしてやるよ」

 そう言ってんのに。
ダルそうながらも潤は始終喋っていた。
俺がいない間のことやらなにやら。

 後半は聞き流すのも面倒になって返事も返さなかった。

「お前は?」

 だけどふとそう振ってくるから。

「へ?」
「いや、俺ばっか喋って疲れたから」
「…もっと前にやめとけよ。
 別に。これと言って話せるようなこともないなぁ…。楽しいことは、特に」
「なんだよつまんねぇな。どうせ寝るなら聞いてやろうかと思ったのに」

 タバコを取り出す。火をつけると、「アメスピ」と、潤が呟く。

「ん?」
「アメスピの青いヤツ。あの人も吸ってたね…」

 思い出す、過去の面影。

 開けたてのアメスピの箱を何度か叩きひょいっと一本抜き、タバコが抜きやすくなったところで何故か潤に箱を奪われ、3本くらい抜いたと思えば、自分の箱を開けて4本出し、すり替えた。

「何してんのお前」
「気分によってタバコを変えられる、ロシアンタバコ」
「ふざけんなよお前、お前確かメンソールだよな」
「イエス」
「てかいつから吸ってんだよ。吸ってなかったよな」
「うんまぁね。
大丈夫大丈夫臭い移りしないよ一ミリだもん」
「はぁ!?そんなの森林浴いけよ」
「偏屈だなぁ。銘柄はほら」

 ちらっと見てみる。白いパッケージだ。

「キャスターって根強いよな。JTすげぇよな」
「甘いな流星。これはキャスターじゃない。ウィンストンキャスターだよ」
「え?なにそのインチキ臭ぇ感じお前らしいな」
「んだよどーゆー意味だよ。キャスターがウィンストンに吸収されたんだよ」
「…JT強いわやっぱ」

 そんだけ言うなら吸ってみたけど。
 潤は一口で咳き込んでいた。

「すぐなくなるしこれさ、お前嘘だよインチキだよ。空気だよ」
「なん…だよ…これ!お前常にバーベキューかよ!」

 これに懲りたらもうやらないだろう。さっそく懲りたのか俺の箱に2本返して、2本“キャスター”を持っていった。

「吸い終わんねぇし…気持ち悪…」
「じゃぁ返せ。俺は吸った気しないんだ」

 アメスピの火は消えていた。

「あー、ほら。これ吸い続けないと消えるんだよ燃焼剤ないから」
「…どっちが薬中だよ」
「お前のより遥かに身体にはマシだからな」
「あー、タバコやめようかな」
「それがいい」
「まぁ海外行っても思い出せるね」

 …そうか。

「てか寝てろようるせぇな。よく疲れないなお前」
「もうちょっとだし目が覚めた」
「あっそう」

 それから潤の口数は少しだけ減ったが、やっぱりずっと喋っていた。

 潤のマンションの付近で車を停めると、
「今からガキんとこ行くの?」
と聞かれた。

「まぁな」
「よほど気に入ったんだなお前」
「うーん、そうかもな」
「まぁほどほどに。じゃぁな」

 そう言って潤はマンションの方に消えていった。

 あぁ、終わった。
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