ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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The 16th episode

8

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 潤の不機嫌は医療大付近で終了した。

 道路の看板やらなにやらで目的地付近に来たあたりで、そっぽ向いていたのから急に動きだし、改造高田支給ケータイと車のコードを繋ぎ、そのケータイをいじって画面を確認し始める。

「ユミル」
「どしたの」
「爆弾は第二棟にありそうだね。一棟とか言ってたけどさぁ。まぁ、少なくとも遠隔操作タイプのやつはね。
 まぁまだ正直正確な位置特定まで出来ないからスクリーンショットで愛蘭ちゃんに電波の波数送っとくわ。
 多分…いま見た感じ大学まで2km切った現在で電波わかんねぇのはわりと短距離操作型、つまりそんなに破壊力あるやつじゃないと思うよ」
「スゴいネ潤ちゃん」
「まぁね。伊達に変態プログラムハッカー系の仕事こなしてないよねー。
 ただなぁ、第一棟も気になるよな。流星と俺はそっち行く?
 そもそもさぁ、病院真隣だからって理由だけで爆弾仕込むのとかナンセンスだと思わない?俺的にはねぇ、なんとなく一棟のが怪しい気がすんだよね」
「なるほどな。二棟に駆けつけてるうちに一棟に匿ってた副部長と証拠をどかん的なやつか」
「可能性ありじゃね?まぁ賭けでしかねぇけど」
「したらどうすっかな」
「場馴れからすりゃぁ俺と流星とユミルが一棟、マトリーズと瞬、諒斗に副部長がいるとされてる二棟を任せたいがそうだなぁ…外れた時を考えると痛手。あとはそのパターン、二棟に指揮官がいなくなる」
「わかった。
 賭けだ。ユミルと瞬、諒斗は一棟で爆弾処理やら資料集め。フェイクなら二棟に来い。
 マトリーズと俺たちが二棟へ行こう」
「二棟の爆弾はどうするんですか?こっちは確実にいま確認出来たんでしょう?」

 至極全うな答えが辻井の口を吐いた。
待っていました。いや、待ってねぇけど。

「俺と潤が処理しよう」
「はぁ!?」
「潤、お前解析出来たなら分解くらい」
「勘弁してよ殺す気かよ」
「まぁいいけどお前の頭と俺のなんとなくな経験でなんとかなんだろ」
「はぁ!?ねぇお前ってバカなの?ねぇ爆弾って爆薬とかぁ、詰められてる殺人兵器ですよ?」
「でも小規模なんだろ?
 お前ナメんなよ、俺戦地でどんだけ手榴弾作ってぶん投げたと思ってんだよ」
「威張るなよクソ野郎!はぁ!?スナイパーってそんなんでしたっけ!?」
「いや潤ちゃんわりかしガチだねぇ。爆薬に関してはリュウは人でなしレベルの知識量だよ」
「気持ち悪っ。近寄んなマジ伝染うつる。お前ってなに?」
「ただ最近のはなー、ちょっと医療品じみてて怖いんだよなー。だからお前」
「いや一緒にしないでマジ俺そんな…」

 言っていて皆の目線を感じたらしい。自分でも思い当たったのか「あっ、」と詰まる。

「え、もしかして俺もわりかしやべぇ?」

 それには皆無言。自覚なかったのかこの変態サイコパス美人。それからつくまで「何か言ってよ!」とうるさいことこの上なかった。

 しかしそれも少し。大学の敷地が見えた途端にユミルは戦闘モード全開。車は一棟の、裏口に止めた。

「さぁて、さて」

 戦闘ということで我々特本部は、なんというか毎回の如く弾詰めなりなんなりをして体勢を整えていたが、マトリーズはそれに少し臆しているように見える。だが気にしない、それこそ特本部。

 しかしそんな特本部の諒斗や潤でもビビっていたのは両性具有宇宙人、ユミルであった。

 一見すればジャニさんに気に入られそうでひ弱そうな、てゆうか最近流行りのハーフタレントみたいなひょろい長身の彼が、「開けて」と指示してトランクを開ければ様々な銃に、多分爆弾処理用の道具一式に、なにより懐から出すのがコルト。最早こいつは映画でしか見ない人材だろう、日本人では。

 潤すら苦笑し「いつの間に詰んだの」としか言いようがなくなっている。確かに至極全うすぎて潤の良さ(うるせぇツッコミセンス)がスナイプされている。

「あのぅ千種ちくささん」
「なにそれキモチ悪い」
「はい、銃刀法違反で逮捕とかいうのはもういいですよ君には。部長の俺も言えねぇしな。ただ…。
 大学にレミントンってどうなのよ。んなサブマシンガンいつ使うの。仮に医療系大学だよ?」
「え?だってテロ集団でしょ?」
「君って単細胞を越えてくるねすげぇな。もういいです。持ってってもいいけどぶっ放したらルイジアナに返すからなマジ」
「えぇぇぇ!ヤダなんでどうしてだってテロでしょ」
「いまのその、サブマシンガン背負ってるお前写メってやろーか?どうみてもゲリラだよ日本、ここ日本!
 せめてハンドガンにしてよ」
「Fucking out you!」
「ははは…Shut up you!」

 たまには強く反撃してやろう。
 タバコに火をつけ、煙を掛けてやれば「fuck! shit!」とめちゃくちゃ罵ってくる。おぉ、イングリッシュモードだ。スイッチ入ってるねユミルさん。

「Oh,sorry.」
「You’re annoyi!(うぜぇ)」
「あーはいはいbreak a leg、break a leg.」

 流石に雑すぎたか。しかしユミルはユミルで火がついたらしい。「Kiss my ass,fucking 野郎」と、顔に似合わずドスの利いた声で言い残し、サブマシンガンを背負ったまま第一棟に一人歩いて行ってしまった。諒斗と瞬が遅れを取ってそれについて行く。

「あぁぁ、機嫌損ねたね、あのユミルが。くたばれってお前相当だよ」
「化け物はあんくらいがいいんだよ」
「あれあいつら対処出来るかね」
「ぶん回されて強くなる叩き上げ方式、悪くないっしょ」
「お前今回ヤケだよね」
「まぁね。事案が事案だからな」

 と言ってるうちに潤はなぜか歯を食い縛り自分の足元に一発撃ち込んだ。

何故だどうしたトチ狂い。
マトリーズ吉川も唖然としていた。辻井はそんな潤をじっと見つめている。

「っふはぁ、」
「なんだよどうしたよお前怖いな、え?」
「いや病み上がりだからほら、いざってときに腹の傷開いたら嫌じゃん?」
「あ、なるほどな。気持ち悪いなお前も大概」
「案外可愛いっすね星川さん」
「あ?どーしたのマトリーズゲイ寄り」

なんだそのあだ名。
そしてその不穏当睨み、どうかと思うよ潤。仮に今日初対面でしょうが。

「…ほらほらいいからいくぞお前ら。吉川くんが一人今日置いていかれてるからなマジ」

 場を強制総括。これも俺の仕事ですね。
 俺たちは第二棟へ足を運ぶ。さぁ戦地だ。
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