ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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※The 26th episode

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 年末年始を迎えたが、あまり正直、祥ちゃんがいる自宅に帰りたくなかった。

 祥ちゃんはどうやら俺が入院中に部署を訪ねたようだし、何より、流星と知り合いのようだった。

俺はそれすら知らなくて。
祥ちゃんには流星の話をしたことがたくさんあったけど、どうにも流星を知らない体だったんだ。

 つまりは祥ちゃんと流星が知り合いならば、祥ちゃんは大分前から俺にそれを意図的に隠していたんだと思う。その理由が、わからない。

 なんとなく、個人的に気まずかった。
そしてそれは、俺に居心地の良い場所ではないし、何より少し寂しかった。

本当はどこか、祥ちゃんが寂しい人かも知れないと、わかっていたけど。

 帰りたくなかった。
 どうしたか、って言ったら。

「あっ…あん、」

 俺の下で。
 昨晩知り合った、明るい茶髪の緩いパーマの女が喘いでいる。
 この女は飲んだくれた俺の会計を済ませてくれた。
 多分年上。年上で一人バーにいてやけに絡んできて確信した。こいつは絶対いけるし金持ってるだろうなと。バックも服も然り気無くブランドだし。

 案の定、だからこうしてベットの上で「ははっ、エロいね」とか言って盛り上げているわけで。ましてやまとわりつかれたら面倒だなと、「エロすぎて大丈夫かよ、おねーさん」と半ばデリカシーを吐き捨てて抱いているわけだが。

しかしなぁ。
わかっていたがこの手の女。
 緩い。遊び慣れている。大体23時にバーに一人でいて俺みたいな若い男にベタベタする女はそんなもんだとは承知だけど。

 よがるように首に手を回され「はいはい、」と、両足持ち上げて突きまくって朝を迎える。外れだわ、と朝帰りをするようになる。

 ラブホテルで知らないヤツと遊ぶという結果になったのだ。

 んな廃れた生活を数日やって、そろそろ帰らんとなと思った年明け3日目。数日前のことだった。
 ラブホテルから一人出て行けば、なんだか気配を感じて。
 振り向いたら見知った前髪がにやにやと近付いて来たわけで。

「…あんた、案外廃れてんのな」
「…えっと…辻井、だっけ」

 何故こんなとこで出くわすのか、3が日に。こいつは頭が可笑しいのかと思ったがふいにふらっと背中に凭れてきて「そーそー」と。
 非常に酒臭かった。

「…ちょっと何、ウザイ」
「私服そんな感じなんだねぇ。俺は女装とかしてんじゃないかなあーって思ってた。カジュアルー」

んなわけあるか。

 カジュアルっつーか、ニットカーディガン(厚手)とコートくらいねぇと寒くて死ぬわ。最近のはみんな長くて助かる。

「そーゆーお前みたいな変態がやっぱ、タートルなんて着るんだな前髪」

オラついてるダンスユニットかヒップホップか韓国人くらいしか今やきっと着ない。なんとなく。

 ふと顔近く俺を眺めた辻井は目を丸くした後に「くはっ、」と笑いやがった。

つかなんなんだよ。

 最早抱きつかれたような(ラブホの前で、同姓に)のが嫌で、離れてやろうとするもぐいっと引っ張られ「は?」とか言えば、目の前にスマホ画面。
 ふらっと俺の肩に掛けた右手のそれには、俺が昨夜ここにあの女と入っていく姿が写されていた。 
 本気でイラついたのでスマホをバシッと辻井から奪い取り、離れて向かい合う。

「なんのつもりだよ気色悪ぃな」
「たまたま撮っちゃった。俺近くで飲んでたんだよねぇ」
「あっそう。で?」

歌舞伎町にでも行ってたんかクソ野郎。にしても角度的には背中だな。お前絶対ストーカーだろ、マジで。

「あんたもわりと遊ぶんだね。こんなキャバ嬢みたいな女でも」
「まぁな。ワンナイトだけどな」
「案外動揺しないのな」
「動揺っつーか、マジで何?お前これストーカーだろマジで。
 けどんな写メ別に痛くも痒くもないけど?」
「あっそう」

 にやにや笑いながらこっちを見てくる。
なんなんだこいつマジで。

「いやぁまぁ俺もたまたまこの辺にいたからさ」
「嘘だろ絶対」
「まぁね。嘘と言えば嘘。けどまぁこの界隈で遊んでたのは事実。普通会わないよね」
「キモいホントに」
「まぁまどろっこしこたぁいいや。俺とどう?」
「は?」

 すっごい自信満々にラブホを親指で示しましたけど。
なに、こいつ。日本人じゃないのこの感性。

「…いやぁあんた乗ってくれるかなとか」
「何故そうなった。全然お前の思考回路がわから」
「ぶちょーに送っちゃうよ?これ」
「え、どうぞ。
 多分お前二度と目を会わせてもらえないぞ。あいつ童貞っぽいから」
「じゃ荒川さん」
「んー」

 ちょっと怒られそうではある。
が、

「多分慣れてる」
「あんたそんな遊び人なの?」
「うっさいなぁ」

お前に言われたくないわクソ前髪。

「大体お前勘違いしてない?俺ゲイじゃないから」
「ん?」
「バイセクシャルだからね」

だからお前みたいなヒップホップは無理だからね。
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