ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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※The 26th episode

3

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「あと、潔癖なわりにちゅー出来るし」
「は、はぁ…?」
「つかなんならここまで来ちゃってるし」
「え、何?」
「あんまこんなに攻めてると苛めてる気分になるね嫌だね。出来れば同意の上がいいんだけど俺あんたが初同姓だし」
「何を言ってるか凄い伝わらないけど」

お前本当に頭は大丈夫か。

 「あぁ、もう、」と焦れた辻井は強引に首筋を舐めてきて。

「ひやぁぁ」

 悲鳴しか出ない状態。ムードもクソもねぇけどシャツのボタンに手をかけられたら「待った嫌だここ!」くらいしか出ていかないのがなに自分。ここじゃなかったらええんか俺。

「え?なに?VIPがよかった?」

 うわぁぁ掛かる吐息凄い場違い。
頭のなか綿菓子かなんかなのかよ。

 けど自棄になってきた。第一こうぐいぐい来られると俺って動けない。忌々しいわぁ~。

「あの、前髪、さん、」

 取り敢えずボタンの手は確保。
 しかし首筋。
わりと俺、弱かったりしちゃってな。声が情けないわ。

「んー?」

 と間抜けに言うその音波振動すら「ちょっ、」とかなっちゃって。

「わかったマジでわかったうんホントにわかったここは嫌だ玄関だし、ねえ!」

 前髪を最早鷲掴み顔を覗いてやる。
 ぽけっとした顔で見つめてくるのが憎たらしい~。

「なんでもいーから風呂入って酒臭いんだよ!」
「逃げる気?」
「いやもうここまで来たら諦めるわぁぁ!一緒に入ろうとか言われたらゲロ吐くしぃ!」
「あーね。伊達じゃないね潔癖」
「したらまず話し合おうはい決めたっ!風呂入ってマジ」

ついでに頭冷やしてきて。

「いや、話し合おうって言うのはどっちがどっちかみたいなことでいいの?」
「あー…」

めんどくせぇ。
どんだけの性欲なのお前。

ここまで来たら。
ぐっすり寝ちまうもありだな。

「はいはいうんそーです」

 と俺がテキトーに返せば、「え、テキトーだね」と更にめんどくせぇ。お前は女子か、童貞か。
いや、同姓童貞か。めんどいな。

 取り敢えずヤツは洗面所に押しやった。ホントは俺かて風呂入りたいわばっちい。

 さてどーすっかなとタバコに火をつけ考える。

なにしてんの俺。
いや、まぁでも。
帰りたくはないな。なんならここまで拒否んなくてもいいかな。公衆便所的なやつ。

自棄だ。
まさか金出してくれるんだろうが出してくんないなら凄い損じゃん。なら楽しむ方向に行くべき?逃げたら絶対出勤の初日あたりめんどそうだし。

あーもう嫌だ嫌だ。このまま間違って風呂で溺死してくんねぇかな。

いや腹括るか。俺も男だ。
え、本気でかこれ。

 モヤモヤイライラしてたらタバコがなくなった。揉み消す。

排他的に済ましてしまおうか2時間7000円(祝日料金)。いつもと大差ねぇし。

つか、俺女と寝た後。マジで元気ないから好きに最早使ったらいいわ。うんよし腹括った。諦めの良さは俺ってピカイチだよな。
長官よかキモくねぇしまぁいいか。

 更に鬱になりそうな手前で辻井、ガウンを着て登場。
 意外とがっしりしてるなおい。流石ヒップホップと眺めていれば「なに?見惚れた?」とバカナルシスト発言。

死んで欲しい。これで下手だったら殺していい案件だと思う。

「…俺疲れてるからマジ勝手にして」
「あそう?はーい」

 とか言って辻井はベットに座り、にっこり笑ってはガウンを開けた。

 うん、わかってたけど立派な息子やな。いまやもうイクんじゃね?レベルでピサの斜塔と化している。

「よろしく~」

はっ?

「い、いきなりそれ?」
「あ、話し合うんだっけ?好きにして?で俺はてっきりタチかと」
「そうじゃなくて。いやそれでいいんだけど、いやよくないけどムードもへったくれもないわけ?」
「意外とわがままだね。まさかそんな女子発言くると思わなかっ」

ぷっちん。

「やったるわクソッタレぇぇ!公衆便所ナメんじゃねぇぞ若造ぅぅぅ!」

 辻井は笑った。
 お陰で少し、ピサの斜塔は下を向いた。

「ムード結局ないよねあんた!」
「あぁ!?」
「潤さん」

 急にマジな声色。欲情の笑みを浮かべる辻井。
え、キレてる俺のがおかしいの?これ。

「お願いしまーす」 

 にやりと笑う辻井の元に。
しゃーねぇ。

 足元にしゃがんでピサの斜塔を口にすれば「抵抗ないんだ」と茶化されるが頭に来ない。これさっき多分俺があの女にやってのけた「デリカシー吐き捨て」だ。
 ちらっと見上げれば、んな乱雑な言葉を使っても、なかなか、辻井は欲の見える火照った表情を浮かべていて。
 目が合えば滑らかに情緒ある手つきで頭を撫でられた。

俺に惚れてんの、もしかしてマジなの?

「…あんた、その顔堪んないわ」

変態臭え。

 お前、でも確かに嬉しそうだねと思えばその手は髪から流れ、頬に右手があてられる。
 俺が俯いたら今度その手はシャツのボタンをひとつはずして胸に滑った。

ふうん。お前。
盛り上げようとはしてくれんだね。

 慈悲深く、やんわり触れる手に、まぁ少しずつその気になってきたので口から離して辻井を見上げ、勢い任せにベットに乗り上げ、自分でニットカーディガンをその場に脱ぎ捨てる。
 シャツを開いていれば、唇を寄せてきて、吸いながらパンツのチャックを開けて開かれ、後ろに手を入れられた。

 戦闘開始の合図だった。
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