ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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※The 26th episode

4

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 結果的に。
 2時間は過ごした。

 辻井は相当絶倫だった。酔っているにしちゃホントに猿のようだった。
 しかし
俺もそれからノってしまった。もう、まるで恋人のようにゲロ甘だった。
 いや正直、若干俺もテンション上がっちまったのもあったが相当疲れた。

「大丈夫?ごめんねマジ。
 良すぎて動画にしたかったホントに」

 本気で心配しているだろう手つきで髪とか撫でてくるのはいいが、軽い。非常に言葉が軽い。

しかしどうにも。

 だらけた俺の、ぶっ刺された傷口二ヶ所をすらりと、慈しむように撫でる辻井は心配そうに、「どうしたのこれ」と言ってきて。
 なんだ?まだヤんのか、並のねちっこい手付きだが、表情は案じてくれているらしく。

 俺が黙っていれば「痛かったでしょ」と続ける。

「まぁ、」

死ぬかと思ったわどっちもね。

 辻井は少し悲しそうに笑い、タバコを吸って言う。

「あー。2時間過ぎたね。帰りは送りますよ。
 會澤が持ってたホストの跡地だけどさ、聞く?」
「…もうどっちでもいい」
「一個は宗教団体の主張所、一個は『合法ドラッグ』と看板があったよ」

まさか。

「お前、それでこの辺にいたの?」
「うんまぁね。一応あんたと約束した仕事だし。だから年始なんだよ」
「…あそう」

宗教団体じゃ、確かに年始は重要かもな。

「俺この件で二課の五十嵐さんと初めて会ったわ。あんたら嫌われてんのな、警視庁から」
「てか、流星がな」

なんせあん時。
一人死刑囚殺してるからね、あいつ。まぁ俺のせいだけど。

「あぁ、そうそう。もう「あんな胡散臭い若造」ってさ。日の当たらねぇから調子込みやがってって、そりゃぁ凄いディスってたわ」
「あいつ、俺のせいで死刑囚一人射殺したからね」
「え?」
「いや…まぁ、潜入捜査の一貫で?」

 薬盛られて危うく死にそうになったとは言えねぇよな。

「…なにそれ」
「素行の悪さでぶっ殺されそうになったんだよ俺」
「はぁ?なに、その傷?もしかして」
「これは別件」
「嫌な予感しかしない話だね。
 けど…ふっ、」

 何故か辻井は笑って。しまいには止まらなかったらしい。「くっ…はははは」と本格的に笑い始めた。

「…ま、なんだかんだ言ってあんた、人が良いねぇ。大切なのねお仲間が」
「別に」

長いこと一人だったから正直鬱陶しいときばっかだし。

「ま、じゃぁさ」

 タバコは捨て、俺を見下ろした辻井は言った。

「ここの張り込みは俺がやるから。あんたは部署で大人しくしてて」
「…は?」
「俺、あれからマトリ気まずいし。どっちも顔知れてもいなそうだから、張り込むなら俺かな」
「なんで?」
「まぁ…。
 惚れちゃったから、で」
「ん?」
「あんたの魂は買ったよ。かっこいいけど危なっかしい」

なんだこの上から目線。
あれ、あんまり褒められた事でもないけど。

「…うぜぇ」
「まぁそう言わず。あと次2時間くらいはあるし、無駄話でも付き合って」

 とか言いながら首筋に声を掛けてくるあたりどうかと思ったが。

「鬱陶しいわ、このクソ前髪!」

 起き上がって押し倒してやれば「お?お?」と挑戦的で。
 キスするように顔を近付けては睨んで言ってやった。

「勘違いしてんじゃねぇよシャバ僧が」

 しかし笑う辻井。
 「んな強気に上乗られたの初だわ」だそうで。

悪いがこっちとら小せぇ時から大分開発されてんだよクソが。

 なんでこんなことになったんだか。風呂すらまだ入ってないのが救いだわと、辻井に跨がって腰を落として。
 「いいんか?クソ野郎」とか言えばなんだかんだ互いにまたノッちゃって。
 猿みたいに今度はゆっくりもう2時間過ごした。

 これきりと思えば最早関係ないと、つまりはタガを外しまくったわけである。
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