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The 30th episode
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ひとまずは仲間を見舞おう、言わずとも政宗は“千種ユミル”の病室、508へ案内してくれた。
なんとなく、何がどうというわけではないが大変だった、という物々しい雰囲気が個室に漂っているような気がした。
朝日も入れないカーテンやら、落ちきりそうな点滴やら。いまは静かに眠るユミルの目尻から髪にかけてが涙で湿っている。
だが悪夢は見ていないらしい。何もない穏やかな表情に眠りの深さが伺える。
まともに寝れない緊張感でユミルとは共に仕事をしてきたのか、俺は。
不覚にも泣きそうなほど、俺は仲間を知ることはなかったのかと知る。
「あぁ、点滴なくなりそうだな。まぁ、そろそろ看護士来るかな」
ぼーっとして疲れは見えるが政宗もユミルの顔を見ては「嘘みたいに寝てやがるな」と少し表情を緩めた。
「泣き叫ぶわ暴れるわで凄かったんだぜマジで。羽交い締めにしたら看護師にビビられたわ」
「多分俺でもビビりますよ」
「経過を見てだけど、明日くらいにはなんとかなるかもってさ」
「それなら…よかった」
子供のように眠るユミルを初めて見た。37歳、もうあれは詐称書類だと思いたい。けどそれも、ミステリアス要素かなぁと、こんな風にぼんやりと仲間を思うのだってそうだ。
樹実は一体どうだったのかな。樹実樹実って俺はうるせぇのか?当たり前かも。それだって全部背中にある。あのサブマシンガンとは、違っているはずだから。
「ちょっと看護士に言ってから行きましょうか」
「どこに?まさか山下んとこ?」
「そりゃぁ」
「俺もう一回行ったからいいわ…」
何故か政宗は気まずそう。
は?なんなの一体。まさか殴ったりしたの?
「いや、あのー混み入った話をしたいから」
「俺はしたんで、」
「殴りました?まさか」
ギクッと聴こえそうな程に政宗は動揺したようで、ピクッとした。
あーあーあーあー。
ったくなんなのこのゴリラ先輩。
「それ祥真生きてますかゴリラ先輩」
「流石にその辺は加減したと思いますよ」
「は?してないのね?」
「いやー、した、したよしたした」
「胡散臭ぇ。まぁどうせ死なないからいいけど」
「良い性格してんなー…この鉄面皮」
「はい、行きますよ」
「えぇ~…マジで気まずいんだけど、俺絶対「もう来たんですか」って言われ」
腕を引っ張れば「話聞けよ気が短いなっ!」と言われるが、構わない。
「気が短いは正直あんたには言われたくないよね」
「うん、わかるけどさぁ~…」
「可愛い女の子だったら考えたんですけどね。ゴリラおっさんとキチガイ腹黒なら同情の余地なし」
「あと性格破綻美人」
「あんなクソ野郎も論外ですね。心配する価値なし」
「もぉ~…!ほんっとに口悪い。冷たい。誰に教わったんだよ」
「樹実だよ」とか言いながら先輩を引っ張って行く。知るか全く。俺にはそんなん関係ないし。けど今後のことは関係大だし。
エレベーターまで引っ張ってきて「何階ですか」と聞いても答えない。そう来たかゴリラ。
舌打ちしてケータイを片手にすれば「わーかったよ7!702!」と答えたので即7のボタンと閉を連打した。
「常識とか道徳とかぁ!」
「世間知らずの人殺しなんで」
「なんなの~!生理中かよイライラしやがってぇ~」
「あそれ潤も政宗に陰口で言ってたわ流行ってるんですか?」
「何言っちゃってんだよお前ら!」
5階から7階にあっさり着き、02にもあっさり着いた。 渋々先輩は不機嫌そうに、ドアを開ける俺の後ろにいた。
祥真の胡散臭い笑顔と「なんだ?」と首を傾げる潤は祥真のベットの端に座ってる。お前らホントになんなんだ。
「あっれ荒川さん、顔だしてくれたようでありがとうございます」
「うるせーよ、お前ホントに嫌いだわ」
うわぁ。
何この団地の主婦たちみたいな小競り合い。凄いめんどくさそうだが潤が「政宗もう来ちゃったの!?」と口にする。
「もう会えないと思ってましたよ荒川さん」
「この鉄面皮が用事があるってよ!」
はは~ん。
「二度と面見せんなクソクレイジー破壊野郎。
こんなとこですか政宗」
「流星って性格悪いね相変わらず」
「お前ほどじゃないと思うぞ祥真。お前流石だな~、死んでねーのな」
こっちはこっちで仲が悪い。これは互いに自覚あり。
「俺の存在凄いいらない」と潤がぼやくが「まぁ待てまぁ待て」と宥める。
「まずは環の司法解剖結果を見てお前は息を荒げろ潤。
祥真、お前元気そうだよな。明日からルイジアナ行くぞ」
潤には書類を渡し、祥真にはそう告げる。
「あー、はいはいケリーね。なんで君が?会ってやる気になったわけ?」
「そうだな」
「詳しく聞こうじゃない」
祥真のマジモードスイッチを押したところで「なにこれっ、」と潤の怒りスイッチも入り、一気に場が殺伐と纏まった。
なんとなく、何がどうというわけではないが大変だった、という物々しい雰囲気が個室に漂っているような気がした。
朝日も入れないカーテンやら、落ちきりそうな点滴やら。いまは静かに眠るユミルの目尻から髪にかけてが涙で湿っている。
だが悪夢は見ていないらしい。何もない穏やかな表情に眠りの深さが伺える。
まともに寝れない緊張感でユミルとは共に仕事をしてきたのか、俺は。
不覚にも泣きそうなほど、俺は仲間を知ることはなかったのかと知る。
「あぁ、点滴なくなりそうだな。まぁ、そろそろ看護士来るかな」
ぼーっとして疲れは見えるが政宗もユミルの顔を見ては「嘘みたいに寝てやがるな」と少し表情を緩めた。
「泣き叫ぶわ暴れるわで凄かったんだぜマジで。羽交い締めにしたら看護師にビビられたわ」
「多分俺でもビビりますよ」
「経過を見てだけど、明日くらいにはなんとかなるかもってさ」
「それなら…よかった」
子供のように眠るユミルを初めて見た。37歳、もうあれは詐称書類だと思いたい。けどそれも、ミステリアス要素かなぁと、こんな風にぼんやりと仲間を思うのだってそうだ。
樹実は一体どうだったのかな。樹実樹実って俺はうるせぇのか?当たり前かも。それだって全部背中にある。あのサブマシンガンとは、違っているはずだから。
「ちょっと看護士に言ってから行きましょうか」
「どこに?まさか山下んとこ?」
「そりゃぁ」
「俺もう一回行ったからいいわ…」
何故か政宗は気まずそう。
は?なんなの一体。まさか殴ったりしたの?
「いや、あのー混み入った話をしたいから」
「俺はしたんで、」
「殴りました?まさか」
ギクッと聴こえそうな程に政宗は動揺したようで、ピクッとした。
あーあーあーあー。
ったくなんなのこのゴリラ先輩。
「それ祥真生きてますかゴリラ先輩」
「流石にその辺は加減したと思いますよ」
「は?してないのね?」
「いやー、した、したよしたした」
「胡散臭ぇ。まぁどうせ死なないからいいけど」
「良い性格してんなー…この鉄面皮」
「はい、行きますよ」
「えぇ~…マジで気まずいんだけど、俺絶対「もう来たんですか」って言われ」
腕を引っ張れば「話聞けよ気が短いなっ!」と言われるが、構わない。
「気が短いは正直あんたには言われたくないよね」
「うん、わかるけどさぁ~…」
「可愛い女の子だったら考えたんですけどね。ゴリラおっさんとキチガイ腹黒なら同情の余地なし」
「あと性格破綻美人」
「あんなクソ野郎も論外ですね。心配する価値なし」
「もぉ~…!ほんっとに口悪い。冷たい。誰に教わったんだよ」
「樹実だよ」とか言いながら先輩を引っ張って行く。知るか全く。俺にはそんなん関係ないし。けど今後のことは関係大だし。
エレベーターまで引っ張ってきて「何階ですか」と聞いても答えない。そう来たかゴリラ。
舌打ちしてケータイを片手にすれば「わーかったよ7!702!」と答えたので即7のボタンと閉を連打した。
「常識とか道徳とかぁ!」
「世間知らずの人殺しなんで」
「なんなの~!生理中かよイライラしやがってぇ~」
「あそれ潤も政宗に陰口で言ってたわ流行ってるんですか?」
「何言っちゃってんだよお前ら!」
5階から7階にあっさり着き、02にもあっさり着いた。 渋々先輩は不機嫌そうに、ドアを開ける俺の後ろにいた。
祥真の胡散臭い笑顔と「なんだ?」と首を傾げる潤は祥真のベットの端に座ってる。お前らホントになんなんだ。
「あっれ荒川さん、顔だしてくれたようでありがとうございます」
「うるせーよ、お前ホントに嫌いだわ」
うわぁ。
何この団地の主婦たちみたいな小競り合い。凄いめんどくさそうだが潤が「政宗もう来ちゃったの!?」と口にする。
「もう会えないと思ってましたよ荒川さん」
「この鉄面皮が用事があるってよ!」
はは~ん。
「二度と面見せんなクソクレイジー破壊野郎。
こんなとこですか政宗」
「流星って性格悪いね相変わらず」
「お前ほどじゃないと思うぞ祥真。お前流石だな~、死んでねーのな」
こっちはこっちで仲が悪い。これは互いに自覚あり。
「俺の存在凄いいらない」と潤がぼやくが「まぁ待てまぁ待て」と宥める。
「まずは環の司法解剖結果を見てお前は息を荒げろ潤。
祥真、お前元気そうだよな。明日からルイジアナ行くぞ」
潤には書類を渡し、祥真にはそう告げる。
「あー、はいはいケリーね。なんで君が?会ってやる気になったわけ?」
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