344 / 376
The 33rd episode
1
しおりを挟む
あの日俺と流星を撃ってきた狙撃主は後日東京湾で発見された。
そいつ(山岡健造)は會澤組関連かと思いきやそうでもなかった。.375マグナム、恐らくはスナイパーライフルだが、そんなものを手に入れるのはヤクザ紛いが無理に決まっている、ここ赤丸。
英国大使館と目と鼻の先にあったホテル『R'e chanteur』には官房長官一家が泊まっていた…えっと官房長官に繋がりそうな“祥ちゃんリスト”には…警察庁長官の浅瀬辰夫かなぁ。
しかしこの事件は死刑囚脱獄がある、うーんと徳田賢良。こいつはどうやら元軍人だろう、ここに丸と…。
「潤」
反射的に「うるせぇ死ね」と言いそうになったが、祥ちゃんの臭いがして我に返った。
肩に手をまわし然り気無く揉んでくれてる。
「はいどうぞ」と缶コーヒーをキーボードの横、今眺めて書き込んでちらばっていた書類が置いてない微妙なスペースに置いてくれた。
「あ、あぁ…」
優しい笑顔で俺を眺める祥ちゃんは「器用すぎるね潤ちゃん。両方漏れなく凝ってるー」と軽く言った。
「んー…」
「流星たち漏れなくタバコ吸う雰囲気だけど、どう?」
あたりを見回して見ればなるほど、二人とも手を止めなんとなくヤニギレイライラ感が漂っていた。
「ふぅ…」
一息吐いたらやる気が霧散してしまった。横目でチラチラ二人を交互に見ればもう、それだけで「行くか」になる。
腕を伸ばして、デスクを離れようとすれば不意に、空いた恭太の席に座っていた辻井と目が合い自然と「行く?」と聞けば「へいへい」と軽い調子で返事をして立ち上がる。なんだか正直こいつのイラつく軽さに慣れてしまった俺がいる。
5人ぞろぞろと部署を出て、漸く誰からともなく一息吐いた。
「しんどいなー…」
「言うて會澤とホストはほぼ終わりってとこか?」
「んー…」
「大学も大分いい感じっすよ」
「ほぼ纏まったよね。鮫島サイドはまぁ、俺のCD-Rは大分助かったでしょ?」
「まぁ…」
「経理に大苦戦ってとこだろ流星」
ぴたっと黙った流星。ズバリ過ぎたな。こいつ大体俺ポストやってるしな。
「あー…なるほどな。経理俺やってもいいけど流星」
「いやどちらかといえば鑑識補助になら行って欲しいというか」
「確かにお前には無理だもんな鑑識」
「つかお前俺ポジによく入ったよな。プラスで鮫島抱えて」
「俺はお前と大差ないというか外回りでしたから。お前は一個を持っていなかったが、まぁなんだろ、経理と鮫島を取っ替えたようなもんで」
「…部長さんと星川さんの感覚俺すげぇわかんねぇ」
「仕方ねぇよこの二人若干病気だから、仕事の」
「あ、それ俺も思いました今日。
流星は昔のクレイジーさを見ていたからなんも思わないんですけど。
いや、薄々潤も「なんとなくヤバそうかなぁ」とは思っていたんですがその…家とのギャップが」
「あー私生活暴露ホントやめて。こいつら俺の家すら知らないんだからね祥ちゃん」
「ん?」
辻井が若干怪訝そうに俺と祥ちゃんを見るのはめんどくさいからパス。しかし政宗が「家ではなに?こんな変態じゃねぇのか潤」と、祥ちゃんと断固として目を合わさずに俺に話を振ってくんのも超ダルい。
「わりとどんくさいよね潤は」
と祥ちゃんは笑って自然に頭ぽんぽんしてどことなく気まずい。うわぁ人間関係クソダルい。
「正直俺君の器用さに引いたわ」
「あれは確かに引くのわかる」
漸く政宗は仕方なしに祥ちゃんと口を利いた。はいもうここはいい。
そんなのお構いなしに「いや潤確かにキモいわ」とげっそりした流星が言う。
「やっぱ俺経理はダメなん?流星」
「言うて一番厄介なとこやり始めただろお前」
「いやまぁここをやってたから事件全域に及んだだけだよマジで。こっちと交換する?したら経理も楽だよ多分」
「いやまぁお前には最早経理の内容なんてモロバレだけど部長としては一般市民にはやらせたらあかんねん」
「うわ無駄に変な何弁かわかんねぇやつ使ってる。末期じゃん」
「試しに鑑識やるか潤。したら経理を俺がやりゃぁよくね?」
「いや政宗、鑑識もダメでしょ一般市民には」
まぁなぁ。
「免職ってめんどくさいなぁ」
これは仕方ねぇからあとで流星を然り気無く補助せねばならんか、いや、俺のがガッツリ上がらないと難しいな。しかしこの案件は警視庁だなぁ…。やっぱ流星に営業を回すしかないか。
そうこう話しているうちに通路(喫煙所)についた。
それぞれ溜め息を「はぁ…」と吐いてタバコに火をつける。
そいつ(山岡健造)は會澤組関連かと思いきやそうでもなかった。.375マグナム、恐らくはスナイパーライフルだが、そんなものを手に入れるのはヤクザ紛いが無理に決まっている、ここ赤丸。
英国大使館と目と鼻の先にあったホテル『R'e chanteur』には官房長官一家が泊まっていた…えっと官房長官に繋がりそうな“祥ちゃんリスト”には…警察庁長官の浅瀬辰夫かなぁ。
しかしこの事件は死刑囚脱獄がある、うーんと徳田賢良。こいつはどうやら元軍人だろう、ここに丸と…。
「潤」
反射的に「うるせぇ死ね」と言いそうになったが、祥ちゃんの臭いがして我に返った。
肩に手をまわし然り気無く揉んでくれてる。
「はいどうぞ」と缶コーヒーをキーボードの横、今眺めて書き込んでちらばっていた書類が置いてない微妙なスペースに置いてくれた。
「あ、あぁ…」
優しい笑顔で俺を眺める祥ちゃんは「器用すぎるね潤ちゃん。両方漏れなく凝ってるー」と軽く言った。
「んー…」
「流星たち漏れなくタバコ吸う雰囲気だけど、どう?」
あたりを見回して見ればなるほど、二人とも手を止めなんとなくヤニギレイライラ感が漂っていた。
「ふぅ…」
一息吐いたらやる気が霧散してしまった。横目でチラチラ二人を交互に見ればもう、それだけで「行くか」になる。
腕を伸ばして、デスクを離れようとすれば不意に、空いた恭太の席に座っていた辻井と目が合い自然と「行く?」と聞けば「へいへい」と軽い調子で返事をして立ち上がる。なんだか正直こいつのイラつく軽さに慣れてしまった俺がいる。
5人ぞろぞろと部署を出て、漸く誰からともなく一息吐いた。
「しんどいなー…」
「言うて會澤とホストはほぼ終わりってとこか?」
「んー…」
「大学も大分いい感じっすよ」
「ほぼ纏まったよね。鮫島サイドはまぁ、俺のCD-Rは大分助かったでしょ?」
「まぁ…」
「経理に大苦戦ってとこだろ流星」
ぴたっと黙った流星。ズバリ過ぎたな。こいつ大体俺ポストやってるしな。
「あー…なるほどな。経理俺やってもいいけど流星」
「いやどちらかといえば鑑識補助になら行って欲しいというか」
「確かにお前には無理だもんな鑑識」
「つかお前俺ポジによく入ったよな。プラスで鮫島抱えて」
「俺はお前と大差ないというか外回りでしたから。お前は一個を持っていなかったが、まぁなんだろ、経理と鮫島を取っ替えたようなもんで」
「…部長さんと星川さんの感覚俺すげぇわかんねぇ」
「仕方ねぇよこの二人若干病気だから、仕事の」
「あ、それ俺も思いました今日。
流星は昔のクレイジーさを見ていたからなんも思わないんですけど。
いや、薄々潤も「なんとなくヤバそうかなぁ」とは思っていたんですがその…家とのギャップが」
「あー私生活暴露ホントやめて。こいつら俺の家すら知らないんだからね祥ちゃん」
「ん?」
辻井が若干怪訝そうに俺と祥ちゃんを見るのはめんどくさいからパス。しかし政宗が「家ではなに?こんな変態じゃねぇのか潤」と、祥ちゃんと断固として目を合わさずに俺に話を振ってくんのも超ダルい。
「わりとどんくさいよね潤は」
と祥ちゃんは笑って自然に頭ぽんぽんしてどことなく気まずい。うわぁ人間関係クソダルい。
「正直俺君の器用さに引いたわ」
「あれは確かに引くのわかる」
漸く政宗は仕方なしに祥ちゃんと口を利いた。はいもうここはいい。
そんなのお構いなしに「いや潤確かにキモいわ」とげっそりした流星が言う。
「やっぱ俺経理はダメなん?流星」
「言うて一番厄介なとこやり始めただろお前」
「いやまぁここをやってたから事件全域に及んだだけだよマジで。こっちと交換する?したら経理も楽だよ多分」
「いやまぁお前には最早経理の内容なんてモロバレだけど部長としては一般市民にはやらせたらあかんねん」
「うわ無駄に変な何弁かわかんねぇやつ使ってる。末期じゃん」
「試しに鑑識やるか潤。したら経理を俺がやりゃぁよくね?」
「いや政宗、鑑識もダメでしょ一般市民には」
まぁなぁ。
「免職ってめんどくさいなぁ」
これは仕方ねぇからあとで流星を然り気無く補助せねばならんか、いや、俺のがガッツリ上がらないと難しいな。しかしこの案件は警視庁だなぁ…。やっぱ流星に営業を回すしかないか。
そうこう話しているうちに通路(喫煙所)についた。
それぞれ溜め息を「はぁ…」と吐いてタバコに火をつける。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!
水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。
それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。
家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。
そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。
ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。
誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。
「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。
これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。
経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!
中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。
無表情・無駄のない所作・隙のない資料――
完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。
けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。
イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。
毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、
凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。
「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」
戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。
けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、
どこか“計算”を感じ始めていて……?
狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ
業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!
幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
葉月 まい
恋愛
近すぎて遠い存在
一緒にいるのに 言えない言葉
すれ違い、通り過ぎる二人の想いは
いつか重なるのだろうか…
心に秘めた想いを
いつか伝えてもいいのだろうか…
遠回りする幼馴染二人の恋の行方は?
幼い頃からいつも一緒にいた
幼馴染の朱里と瑛。
瑛は自分の辛い境遇に巻き込むまいと、
朱里を遠ざけようとする。
そうとは知らず、朱里は寂しさを抱えて…
・*:.。. ♡ 登場人物 ♡.。.:*・
栗田 朱里(21歳)… 大学生
桐生 瑛(21歳)… 大学生
桐生ホールディングス 御曹司
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【本編完結】婚約者を守ろうとしたら寧ろ盾にされました。腹が立ったので記憶を失ったふりをして婚約解消を目指します。
しろねこ。
恋愛
「君との婚約を解消したい」
その言葉を聞いてエカテリーナはニコリと微笑む。
「了承しました」
ようやくこの日が来たと内心で神に感謝をする。
(わたくしを盾にし、更に記憶喪失となったのに手助けもせず、他の女性に擦り寄った婚約者なんていらないもの)
そんな者との婚約が破談となって本当に良かった。
(それに欲しいものは手に入れたわ)
壁際で沈痛な面持ちでこちらを見る人物を見て、頬が赤くなる。
(愛してくれない者よりも、自分を愛してくれる人の方がいいじゃない?)
エカテリーナはあっさりと自分を捨てた男に向けて頭を下げる。
「今までありがとうございました。殿下もお幸せに」
類まれなる美貌と十分な地位、そして魔法の珍しいこの世界で魔法を使えるエカテリーナ。
だからこそ、ここバークレイ国で第二王子の婚約者に選ばれたのだが……それも今日で終わりだ。
今後は自分の力で頑張ってもらおう。
ハピエン、自己満足、ご都合主義なお話です。
ちゃっかりとシリーズ化というか、他作品と繋がっています。
カクヨムさん、小説家になろうさん、ノベルアッププラスさんでも連載中(*´ω`*)
表紙絵は猫絵師さんより(。・ω・。)ノ♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる