ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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The 33rd episode

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 あの日俺と流星を撃ってきた狙撃主は後日東京湾で発見された。
 そいつ(山岡健造)は會澤組関連かと思いきやそうでもなかった。.375マグナム、恐らくはスナイパーライフルだが、そんなものを手に入れるのはヤクザ紛いが無理に決まっている、ここ赤丸。
 
 英国大使館と目と鼻の先にあったホテル『R'e chanteur』には官房長官一家が泊まっていた…えっと官房長官に繋がりそうな“祥ちゃんリスト”には…警察庁長官の浅瀬辰夫かなぁ。
 しかしこの事件は死刑囚脱獄がある、うーんと徳田賢良。こいつはどうやら元軍人だろう、ここに丸と…。

「潤」

 反射的に「うるせぇ死ね」と言いそうになったが、祥ちゃんの臭いがして我に返った。
 肩に手をまわし然り気無く揉んでくれてる。
 「はいどうぞ」と缶コーヒーをキーボードの横、今眺めて書き込んでちらばっていた書類が置いてない微妙なスペースに置いてくれた。

「あ、あぁ…」

 優しい笑顔で俺を眺める祥ちゃんは「器用すぎるね潤ちゃん。両方漏れなく凝ってるー」と軽く言った。

「んー…」
「流星たち漏れなくタバコ吸う雰囲気だけど、どう?」

 あたりを見回して見ればなるほど、二人とも手を止めなんとなくヤニギレイライラ感が漂っていた。

「ふぅ…」

 一息吐いたらやる気が霧散してしまった。横目でチラチラ二人を交互に見ればもう、それだけで「行くか」になる。

 腕を伸ばして、デスクを離れようとすれば不意に、空いた恭太の席に座っていた辻井と目が合い自然と「行く?」と聞けば「へいへい」と軽い調子で返事をして立ち上がる。なんだか正直こいつのイラつく軽さに慣れてしまった俺がいる。

 5人ぞろぞろと部署を出て、漸く誰からともなく一息吐いた。

「しんどいなー…」
「言うて會澤とホストはほぼ終わりってとこか?」
「んー…」
「大学も大分いい感じっすよ」
「ほぼ纏まったよね。鮫島サイドはまぁ、俺のCD-Rは大分助かったでしょ?」
「まぁ…」
「経理に大苦戦ってとこだろ流星」

 ぴたっと黙った流星。ズバリ過ぎたな。こいつ大体俺ポストやってるしな。

「あー…なるほどな。経理俺やってもいいけど流星」
「いやどちらかといえば鑑識補助になら行って欲しいというか」
「確かにお前には無理だもんな鑑識」
「つかお前俺ポジによく入ったよな。プラスで鮫島抱えて」
「俺はお前と大差ないというか外回りでしたから。お前は一個を持っていなかったが、まぁなんだろ、経理と鮫島を取っ替えたようなもんで」
「…部長さんと星川さんの感覚俺すげぇわかんねぇ」
「仕方ねぇよこの二人若干病気だから、仕事の」
「あ、それ俺も思いました今日。
 流星は昔のクレイジーさを見ていたからなんも思わないんですけど。
 いや、薄々潤も「なんとなくヤバそうかなぁ」とは思っていたんですがその…家とのギャップが」
「あー私生活暴露ホントやめて。こいつら俺の家すら知らないんだからね祥ちゃん」
「ん?」

 辻井が若干怪訝そうに俺と祥ちゃんを見るのはめんどくさいからパス。しかし政宗が「家ではなに?こんな変態じゃねぇのか潤」と、祥ちゃんと断固として目を合わさずに俺に話を振ってくんのも超ダルい。

「わりとどんくさいよね潤は」

 と祥ちゃんは笑って自然に頭ぽんぽんしてどことなく気まずい。うわぁ人間関係クソダルい。

「正直俺君の器用さに引いたわ」
「あれは確かに引くのわかる」

 漸く政宗は仕方なしに祥ちゃんと口を利いた。はいもうここはいい。
 そんなのお構いなしに「いや潤確かにキモいわ」とげっそりした流星が言う。

「やっぱ俺経理はダメなん?流星」
「言うて一番厄介なとこやり始めただろお前」
「いやまぁここをやってたから事件全域に及んだだけだよマジで。こっちと交換する?したら経理も楽だよ多分」
「いやまぁお前には最早経理の内容なんてモロバレだけど部長としては一般市民にはやらせたらあかんねん」
「うわ無駄に変な何弁かわかんねぇやつ使ってる。末期じゃん」
「試しに鑑識やるか潤。したら経理を俺がやりゃぁよくね?」
「いや政宗、鑑識もダメでしょ一般市民には」

まぁなぁ。

「免職ってめんどくさいなぁ」

 これは仕方ねぇからあとで流星を然り気無く補助せねばならんか、いや、俺のがガッツリ上がらないと難しいな。しかしこの案件は警視庁だなぁ…。やっぱ流星に営業を回すしかないか。

 そうこう話しているうちに通路(喫煙所)についた。

 それぞれ溜め息を「はぁ…」と吐いてタバコに火をつける。
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