ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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The 34th episode

8

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 勿論、箇条書きなんて0時まではかからなかった。
 政宗の腕もあり、潤の踏んだ通りそれぞれ明日から10日の有給休暇をもらったが、誰一人最後の、終業には帰らなかった。

 変わりに。

 政宗がボトルだの紙コップだの缶だの、酒と、未成年用に飲み物を買ってきた。
 ついでに、ケータイ灰皿も。
 仕事を終えた順に盛大にサボることになった。

「初めてっすね、こんなの」

 そうだな。

「最初で最後だな」

 そう。
 特本部は本日をもって、終了だ。

 それぞれに思い入れはあるが、だからこそこっそり、せめてと本当はみんな警視庁第二課と第五課、厚労省麻薬取締部に話をつけた。
 あとは不完全なままの箇条書きをネタにして、高田創太と話をつけるのみ。
 …だが、本当はこんなものは意味がないとも知っている、多分。

 ふとした時に政宗に言われた、「お前のこと、調べられる範囲で調べたぞ」と。

「…知りたいか?」

 俺は素直に答えた、「いや、別に良い」と。

「…どんな結果であれ、多分大した意味なんてないんだ」
「…そうか」
「俺は俺のままで、いきていくしかないっしょ、先輩」
「じゃぁ少しだけ独り言な。
高田は恐らく、相方が死んだことがよほどショックだったのかもしれないな。
…壽美田一成という男だ。樹実はその男の…多分息子だ」
「…ありがとう」

 なるほどな。
 鮫島が言った件がここで繋がった、というわけだ。

「政宗はこのあと、どうするんですか?」
「んーまぁ俺は潤が言うと通り盛大にサボるし、心中もするかな」
「…そうすか」

 そうか。

 0時前、23時45分位で皆ぼちぼち、それぞれに挨拶を始めた。
 笑ってしまうことに皆、

「盛大にサボりますので流星さん、必要だったら呼び出してください」
「暇だったらで良いんで、あ、潤さんもです。あとは政宗さんも」
「三人のうち誰かに言えば、暇潰しになるでしょうね、絶対」
「鑑識はどうでしょうねぇ」

 そんなんだった。

「…寂しくなるなぁ、おい」
「あ、あの、ぶちょー」

 最後、霞はやっぱりとんでもだった。

「好きでしたからぁ!」
「えっ」

 驚きというか。

 「ふ…ははははは!」潤はウケるし政宗は「あーあ」だったし。
 諒斗は「うっわ俺ショック」からの、「じゃあもー瞬ちゃんもいけよ!」とこんな調子。
 結果瞬は愛蘭に「今度飯でもどうですか」。

 あぁ。

「…寂しいねー流星」
「…非常にな。潤、お前は前髪は良いのか」
「いいしょ。縁があったらまたなんかあるよ」

 そうか…。

「戦ってきたもんだな、流星」

 珍しく政宗の悪酔いもなく。いや、伊緒がいるからかもしれないけど。

「政宗さん、仕方ないので俺もサボりますから」

 そうか。

「…腹括るか」

 賑やかで、愛しい仲間達は、これで解散となった。

 また縁があったら。

 そうかもしれないな。本当に縁があるか、今まで仲間がいなかった俺には、わからないのだけど。
 少なくともこの一年、俺はきっと辛かった、けれどだからこそ、こうして目に見えないものが残ったんだと感じた。

 さぁ、終焉が始まる。

 各々帰り、0時、最後に部署の電気を消したとき、俺はそう、思ったんだ。
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