BLUE SKY

二色燕𠀋

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kick

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 昼下がり、波瀬の店に処方箋を持って行った。

「あ、久しぶり」

 棚のようなものを組み立てていた波瀬がこちらを見、「あれ、一人?」と作業の手を止める。

「あ、はい…」
「えっと今何時だ…」
「14時くらいです…」
「あ…ホントだ、14時6分」

 そのまま「埃っぽいよね」と店のドアを開け放し、さり気なくカウンターに促してくれた。

「あー飯食った?透花ちゃん」

 ふいっと波瀬が手を出したので処方箋を渡し「あ、まぁ、はい…」と答えるのと同時に「ん?」と、処方箋を眺め、またこちらを見てくる。

 ……綺麗な灰色の目。
 作り物だと聞いたけれど。

「いくつか質問してもいい?」
「あ、はい」
「あ、その前に…スポドリ持ってくるわ」

 「あ、いえいえ」と遠慮する矢先に奥に引っ込んでしまったので少し、店を眺める。
 なんだか、物が増えたような…?

「あー、実はプチ整形ならぬプチ改装中で、今」

 すっとカウンターにスポーツドリンクを置いてくれたので「どうも…」と受け取る側で波瀬はゴクゴクとスポーツドリンクを…一気に半分くらいまで飲む。

 …この人、自由人というか、マイペースだよなぁ…。 

 染み染み喉仏を眺めていると、蓋を閉めてタバコに火を点けた彼は「そんなに見つめられると襲う」とポツリと言った。

「え、」
「いやそれは後だとしてえー……薬変わったんだね」
「あ、みたいで」
「俺のギリギリを突いてきたなぁ…。
  これ、あのイカレ闇医者からの説明が必要なんだけど俺、何も聞いてない…先生から聞いてる?どうしてこれに変わったかとか」
「あ、えっと一昨日運ばれちゃいまして…夜中」
「パニック?それとも癲癇?薬は飲んでた?」
「いえ、飲んでませんでした…えっと、別人格が現れて」
「あ、」

 波瀬はすーっと上を見て、更にぼんやりどこかを眺めた後、ガッツリ目を合わせ「そうだったの」と…なんとも言えぬ間で相槌を打ってきた。

「なるほど前回のデパスは様子見だったってことか…。うーん?暴れたとは考えにくいんだけど発作って判断になったの?」
「はい……」
「癲癇発作とか…こう、爆睡中にキツめの痙攣とかあった感じ?」

 自分でもよく思い出し「あ、ありました…」と答える。

「別人格ってことは…カルテ見ねーとな…それとも今先生空いてるかな…」
「あ、いや…話すことのメモ書きみたいなものは貰ってきました」
「海江田さん今いないけど、知ってるんだよね?当たり前に」
「あ、はい。アンジさん昨日は休んで面倒を見てくれまして…」

 鞄の月のキーホルダーを引きメモを出すと「あ、オシャレだね時計」と褒めてくれた。

「周回軌道?」
「はい!」
「…元気そう…ではあるなぁ…」

 メモを見て「ふん…ふーん?ん?んー…」とよく読んでいるが。

「なんとなくわかった。3日分か…こっちを…つまり昨晩飲んだんだよね?」
「あはい…」
「ここに来るまでに車酔いとか…何時に起きた?まず」
「6:30です」
「早っ」
「いつも通りなので…」
「んーなるほど…特にまだ副作用もなしか…。
 一人で来た?」
「あ、いえ。一応…とアンジさんが送ってくれました。今は少し外してまして…後で迎えに」
「あーよかった。
 これは前回のやつの長期型というか…あれとはまぁ種類が違うんだけど、症状は同じ感じね。
 多重人格疑いなら、そういうの用にも使うやつ。長期型ってのは…前回のは短期型なんだけど、今回のやつは効果と副作用が緩ーく1日続く、みたいな感じ。
 2日目とくれば、出来れば保護者同伴がいいなーと思ってたところ」
「…これって」
「何か疑問あり?どうぞどうぞ」
「本当にそこまでこう…不調になりますかね?僕、前回特に不調はなくて、余程眠れない時にしか飲んでないし…説明してくれた副作用は…確かにあったけど…寝起きに目眩、とか…」
「まぁ頓服になってたからね。不調を治す為に飲む、て考え方かな。たまに飲むから副作用が出る、くらいの方が多分いい。副作用は効いている証だから。
 今回は…常備にはなってるから、不調好調関係なく必ず飲んで予防する感覚。その場合、3日目迎えてどうかっていう超曖昧な日にイマココ状態だからなんとも…。
 こういう系は効果ってなんとなく3日目に一番出るんだよねー…。
 ここから長期療養となれば」
「待った!」
「ん?」
「3日でユリシス…えっと、僕の別人格は消えてしまう…?」
「んー……。
 先生の方がわかってると思うけどこれはまだ、予想ね?
 多重人格、つまり解離性同一性障害じゃないってことなんじゃないかな?」
「……でも、確かになんか別の人に乗っ取られた感はなくはなくて…」
「…治ってるのか今から本格化するのかわからないけど…。自覚あるんじゃ確かに診断が難しそうかな、俺の感想ね。
 それを保つために…かもね?」
「そう…」
「いなくなって欲しくないの?」

 すっと聞いてきた波瀬の目は…レンズ越しでもわかる、少し優しいが鋭いような…。

「……はい」
「じゃ、“イマジナリーフレンド”くらいに緩く捉えたらいいんじゃない?
 なるほど、こりゃあ困った子だ」

 ふっと髪を…耳元から撫でられビクッとしたが、彼は声色も変えず「…反応に困る反応だね」と言った。

「…え?」
「いやぁ大抵は…トラウマあるやつって頭、正面から行くとビビるからこうしたんだけどそれはそれでなんというか予想外の反応が返ってきて困惑」

 …口調が全く変わらないのだけど…困惑。

「…AVって演技だってよく言うけど君、主演男優賞もんだね…なんでも受け入れちゃうのかー…」
「ん?」
「……あ、その反応もしかしてあれは別人格なのかな…?なるほどそういうこともあるの…か?あれは…」
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