BLUE SKY

二色燕𠀋

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kick

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「えっと…もしかして僕…いや、ユリシスは貴方に会ったことがあっ 」
「は?」

 なんでこの人、話が噛み合わないんだろう…日本語なのに…。
 ユリシスの話なんだろうと思ったのだが、違うということだろうか。

「えっと…俺は君と数回しか…物理的に?会ったことがない…毎回ずっとこれくらい天然だと思ってたんだけどそんなに人格ってマメに変わるの?」
「あいや…ユリシスも恐らくこの世にそれほど現れていないとは思うんですが、それこそ何回かしか…多分…。
 先日ほぼ全て記憶はマッチしたとは思ってて…」
「AVは!?あれってトラウマにならないの?そもそも…あ、でも「あれ、この子同じ子?」感があるやつもあっ」
「エーブイってなんですか?」
「えっ」

 呪文だ…本当に何を言われているがわからないけどエーブイって日本語じゃないだろうな…どこ語だろう…とつい、「波瀬さんも、日本人ではない?」と聞いてしまった。

「いやよく言われるけどすっげぇ日本人。外国行ったことないくらい日本人。本州、あ、けど生まれはキタキュウらしいけど基本千葉、すぐ隣」
「…そうなんですか」
「……もしかして知らない?てことは…流石にないよね?知らないなら聞けないんだけど、この話」
「何がですかね…?キュウ…隣?」
「あっ、あー…そういう、ね……。
 ごめんここ数分の会話忘れて、あーキタキュウは北九州の略ね、福岡県、うん。確かに空港あるけどマジでわかんない、千葉で育ったから、うん」
「僕、何か変なこと言いましたかね…?」
「いや、大丈夫大丈夫全然大丈夫」
「何か知らないうちにユリシスが波瀬さんに」
「ない!ないない!勝手に世話になったけどホントに何も関係ない!」
「……よく…わからないなぁ…」
「うん、薬出すね。大丈夫大丈夫ホント緩く捉えて」

 そそくさーっと薬棚に向いてしまったが「…なんか気持ち悪いな…」とついポロッと出てしまえば「ゴメンナサイ…」と波瀬がくるっと向き直り謝ってくる。

「いえ、別に…」
「…塩対応されるとマジで困惑すっから…」
「…なんか、僕のことなのに知らないうちに何かが誰かに」
「…いや?人間大体そんなもんじゃねぇ?」
「…知らないうちに人を苦しめていたらとか、なかなかない気がするんですが」
「それこそ本当にそんなもんだと思うけど?逆に。
 自分だって相手が気付いてないだけで苦しめられてるかもしれないからフェアなんじゃないかと思うけど。俺今多分、透花ちゃんからの信頼度が何故かわからないが下がったろうし」
「…確かに」
「否定して欲しかったー…。
 世の中知らないことの方が多いから、自分のことすら。そんな中に別人格いたらそりゃ他人より多くない?なんでそんなに知りたがるというか、支配したがるの?」

 そう言われれば、確かに。

「確かに」
「でしょ?
 一人の人間として見てあげたいならそこフリーじゃないとその…ユリシス?は逆に離れちゃうと思う。
 まぁ、俺は束縛系だからわかる気がしなくもないけど…でも、自分への支配欲はない…かも?」
「波瀬さんはそんな自分も受け入れ自覚もあるから…てことですかね?」
「……君めちゃくちゃピュアで天然だなぁ。若干虐めたくなるからそのピュアさやめてー眩しー目眩しそうー」
「あ、すみません」
「なんてね。別にいいけど」

 「はい、」と薬を渡してくれ、「あの医者にちゃんとカウンセリングしろって伝えてね」と言われた。

「俺カウンセリングは不向きだから」
「……でもちょっと、」

 なんだろう。
 なんか数分でモヤモヤしたけど…スっともしている自分がいる。

「まぁ…わからなくも」

 タカタカタ……と、どこかから音がしたような気がしてそちらについ集中しかけた、気のせいかもしれない。
 しかし波瀬も「あ、始まった」とボソッと言ったのでやはりか、と「何か音しました?」と聞いてみる。

「上。
 ほら、俺もなんだけどさ。ここ数週間くらいバタバタしてて。
 あの棚なんだけど、あれ、バンドのグッズ置きになるんだよね」

 波瀬は先程組み立てていたショーウィンドウっぽい棚を指さす。

「…あ、そうなんですか」
「実はサトイのバンドの“lucky street”ってロゴのやつ…カタカナダサかったから数年前に俺が作ったんだけども…今の煽りというか、バンドさん達は昔みたいに「いつ着るかわかんねーTシャツ」より、さり気なく普段使い出来るグッズっていう風潮が来てるらしくてさ、近年」
「へ、へぇ…」
「まぁそんな感じでグッズ物販頼まれてここに置くことになったんだけど…そもそもこのビル、ここ以外空きだったんだよね。
 …上は…ここが薬屋だから酒売れねーって、倉庫だかスタジオになったんだったと思ったな…。
 サトイ関連の事務所だかなんだかがその上、さらにその上にはわりと有名な先輩、その上が大ボス先輩の事務所が入ることになって」
「へ、へー……」
「まぁ、どこも全部グッズ担当してるから余計に…もうなんというかほぼレーベル社ビルじゃんって疎外感がハンパない…」
「波瀬さん凄いですね…」

 波瀬はニヤッと笑い「まぁね、ありがと」と言った。
 …なるほど、一人で店を切り盛りするだけある…自信を感じた。

「どうせなら見に行く?ミラーボールとかは付けて…ないんじゃないかなと思うから発作の心配はないかも。うるさいかもしんないけどここ鉄筋だし、そこまで響…くけど、スタジオにしてんだから音響きっちりしてるはず」
「…よくわからないけど見てみたいかも…よくわからないから」
「いー傾向だね。保護者いつ来るの?」
「1時間くらい?」
「じゃ、行こっか。誰がいるかガチャ…先輩だったかも」
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