Eccentric Late Show

二色燕𠀋

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エレクトリック・レインボー

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「そのバンド知らなーい」

 やはりな、そうきたか。

 後日、月曜日の昼。俺は後輩の北谷きたたに愛夏あいかに早速休日の動画報告をしてみた。

 23歳、販売部一のサブカルクソ女子である北谷なら、少しばかり事情を知らないものかと話してみたが玉砕。
 しかし彼女は虹色?とにかく目に優しくない色のアイホンを手に取り忙しなくいじっているかと思いきや「これっすか?」と見せてきた。

 まさしくそう。

 全員なぜかスーツ姿の、細身の背が小さな黒髪の、マッシュボブと言うには少々ボサボサ感のある髪型のボーカルが中心。
 少し猫背な顎髭の、しゅっとした顔で切れ長な目のベースが右、左にはあぁ、こうして見てるせいかな、後に座っていたから気付かなかった、長身に写る金髪の方耳ピアスのドラム。
 どうやらサポートギターは写っていないらしい。

「あ、へぇ。ここのサポートギター、エッレの人だってさ」
「あ、そうなの」
「このサイドギター、活動休止期間になんかスゴい、いろいろタイアップしたりしてる。
 てかこのバンド売れてないんかな、8年で事務所3回も変わってる。最初の事務所わりとインディーズ排出に有名なところじゃないっすか」
「へぇ…」
「あれ、てか 、インディーズ?」
「わかんない」
「どれどれ」

 北谷はカールの茶髪を耳に掛け、イヤホンをつけてしばらく画面に見入っていた。
 どうせなら俺もと思い、向かい側から身を乗り出して画面だけ見つめる。

「ふぉっほっ」

 北谷は動作のわりにクソほど色っぽくなく吹き出した。

 やはりそうなるかサブカルクソ女子。

 画面では死んだ魚のような目のボーカルが挙動不審で切な気。字幕の歌詞には、「空っぽのコンドームの日常が 愛しい」と出ている。

 なんだそのクソつまんねぇ歌詞。けどそれこいつが歌ってんのか。

「破壊力パネぇ」
「だろ?」
「古里さん近い」
「すまん」

 身を乗り出したら確かに、男女間では近い距離だった。すまん北谷謝る。

『働きたくない 外も嫌い ただ歌っていたい 声出ない 先生ヘロイン お薬ください』

「うわぁ」
「MCなんて言ってんの?」
「もう、聴きます?」

 そう言って北谷は方耳イヤホンを寄越してくれた。 

『最近ねぇ、あんかホモ野郎からめっさラブレターくるんよ俺』
『…それ多分ダメなやつだよあまちゃん』
『てことで歌詞カード自主規制掛けよーかな』
『今更感だね』
『…げんちゃんとこは?』
『…あんたよかマシだよ』
『え?ふみとは?』

 ボーカルと目が合って、にやけてから無言で弾き始めるベース。そしておちゃらけて煽るようにサイドギターを弾き始め、それを纏めるように唄い始める彼の、綺麗な、しかし舌触りを感じる声は確かにどこか切なく官能的だ。俺何故か勃起しそうだ。何言ってるかたまにわからないくせに、たまにわかるワードが、心地いい。

「あぁ このまま 刻が止まったら
そしたらまだ 先が見えない
いつか描いた星空一つ
わかんないまま ここに立ってんの」

「先輩こーゆーの好きでしたっけ」
「いや、別に…」

 ただなんでこいつ。
 なんでこんな聴いちゃうんだろうなぁ。

『あいうぇいてぃんふぉーぉ!
あぁえんき、ほーぉくるぅてるー』

「可愛いなぁおい」
「やっぱ女から見てもそうなのか」
「これ行きたい私も」
「俺が先に行ってくるわ」
「えぇ!?」
「まぁどうやらチケット余ってたよ」

 画面の向こう側でボーカルが突然白目剥いてぶっ倒れそうになったかと思いきや次の曲をベースが始めて、ギターそっちのけでボーカルが唄い始めたあたりで動画再生をやめた。

「え、てか観に行けば?こいつら。
 今日シモキタでやってんじゃん」
「マジ?」
「18時半。当日券あるっぽいよ。対バン3つあるし。急遽だって」
「え、間に合わなくね?」
「3つあるなら最初やるわけないじゃん。他若手っぽいし」
「あそう…」

 まさかのチャンス。

 考えた。
 考えて考えて。

 「先輩、眼鏡曇ってて気持ち悪いけど大丈夫?」と北谷に言われた挙げ句俺が下した結論は、「異論はなーい」だった。

 行こう、早速。 
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