Eccentric Late Show

二色燕𠀋

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エレクトリック・レインボー

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 それからそれから。
 仕事を終えたのが18時45分。

 電車に乗って北谷に教えられた下北沢のライブハウスに着いたのが19時20分くらい。オールスタンディングの、100人規模くらいの場所だった。

 売店フロアは案外広々としていて、立ち飲みのおしゃれなテーブルまである。あとはグッズ販売スペースと喫煙スペースとロッカー。それほど悪くないライブハウス。

 まずは定番のワンドリンク制。
 取り敢えずジントニックを買って流し込み、邪魔になるのでその場でゴミ箱を探してカップを捨てた。

 丁度バンドの切り替えで、目当てのバンドが終わり出ていく客の間に入り込み、次のバンドを待った。

 真ん中あたり、まずまず良い場所。前のバンドの高揚感がまだその場に熱として残っている。

 次はどのバンドがやるんだろう。客の話を盗み聞いていると、まだ“でんにじ”はやっていない様子。じゃぁ次か、トリか。

 正直こういったライブに来るのなんて多分大学生以来で、そうか、こんなんだったなと、新たな高揚なんかもあった。ライブってそうなんだよなぁ、結局楽しみなんだよ、なんか。

 特にこうしたハコとか、オルタナロック的なやつ。対バン誰来るかわからん、対バンどんなバンドかよくわからん、けどそれも楽しみだったりしちゃってなぁ。

 10分くらい待ってステージの向こうから聞こえたベースやらギターの鳴らしがどうも“でんにじ”とは違う雰囲気。

 幕が上がると、やはり見たこともないバンド。
 4人バンドで、キーボードがいる。あぁ違うのかと思った瞬間に照明がチカチカして、言うなれば、今時のサブカルチャーが流れた。

 みんなの明日が待ってるぜいぇい、希望希望いぇい。愛してるぜいぇい、会いたくて愛しくて大切なんだぜ震えるくらいにいぇいみたいな。

 頼むから望遠鏡担いで頑張ってくれ大学生諸君と、正直に言えば乗れない心境で。
 たまによくわからんタイミングで歌っちゃうキーボードの、貞子にしか見えない女にもなんか美学は感じず。

 それでも前に行こうと突進していくヤツはまぁまぁいるもんで。今時の音楽事情を知った。
 俺ってもしかして歳食ったかしら。ミッシェルとかブランキーとかなんなら清志郎きよしろうが好きですみたいな、ロキノンファックみたいな奴が良い歳こいて仕事帰りにスーツのままこんなとこに勢いで来てしまった己の浮き具合にゲロ吐きそう。多分俺が悪い。

 気のせいを追いかけてしまったな。出て行こうかとしたときに曲が終わった。タイミングを逃したような気がしてしまった。

「皆さんこんばんわー!グリーンハイツの山田やまだ世界せかいでっす!」

 ぷふぁっ。
 吐いてない俺大丈夫?

 やべぇ笑いそうなにそのセンス。は?何の何者だって?俺と同じアパート住んでんの?よく今生きて立てるなお前。俺がお前なら爆破されてぇよ。なにそのセンス。お前、曲センスもアレならやっぱなんかそーゆーのもアレかよ。

 しかし客は真剣に笑っているというか空気に飲まれ成り下がっている。

 最早バンドとは宗教だ。わかっているがすげぇ。俺にはこいつらは愛せねぇ。もう出て行こう笑ってしまうと思い、もうMCも聞き流していたときだった。

「今日はこの素晴らしい場所をくれたエキセレインに感謝!
 彼らとはねぇ、もうずっと一緒にやって来てねぇ、本当にこうやって一緒に呼んでくれてさ、嬉しいよ。まぁ彼らとこうして同じステージに立ててなんて言うか、やれてよかった…ってあれ?」

 己に酔いしれた感のアパート野郎MCがなんだか急にバカみたいな詮のない会話を終えたと同時に客席から悲鳴があがる。

 どうしたんだと、キョロキョロとステージを見れば上手、ベース側から突然、でんにじのドラムの金髪兄ちゃんが顔を覗かせ、客席を見もせず早歩きでちょこちょこと、ステージ真ん中まで歩いてきた、ぐったりとしたぼさぼさの伸びたマッシュボブのボーカルをおぶって。

え?なにそれ。

 真ん中まで来て、「やだー」とかボーカルは金髪の耳元を手で掻き上げてぶん殴っている。しかし金髪は、いたずらっ子のような笑顔でボーカルを見つめ、そこで下ろして自分は一人、ステージから去ってしまった。

「…天崎さん!?」
「…ども」
「え?凄いね!」

 こうなりゃ仕方なしとばかりにボーカルからボーカルにマイクが渡され、しかし山田はそれに、はにかんだように笑ってしまった。

「え?」
「え?」
「取り敢えず、自己紹介じゃない?
あぁそう、彼後輩なんですよー。可愛いでしょー?ねー?」
「あ?いや、はぇ」

 すげぇ。

 客席からは最早、挙動不審のでんにじボーカルに「あまちゃん頑張れー!」のエールが。俯いた彼はすごく不機嫌そうに、「エレクトリック・レインボー、天崎真樹れす」と、相変わらず舌足らずに告げる。

 そして無言でマイクを返し、客席を見もせずに足早に引っ込んでしまった。すかさずMCが、「シャイだなぁ…」とフォローにもならない呟きを漏らし、「では最後、」と曲を鳴らし始めた。

 なんなのアレ。取り敢えず一度出るなら今だと慌てて出てアルコールを入手。スクリュードライバーだ。

 そこで俺は発見してしまった。
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