Eccentric Late Show

二色燕𠀋

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An heroin near

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『この歌ゲロ感凄いねあまちゃん』
『ゲロ吐きながら書いたもん』
『ここサナトリウムならここ、アンヘドニアにしようよ』
『嫌味かよまったく!』

 復活ライブ。ライブハウスのわりに音質がめちゃくちゃよかった。あれは最高だった。

 MC何喋ろうかな、とか思ってたら突如ナトリがドラム台から降りてきて後ろから抱き締めてきて「うごっ!」となったあの時、感極まっちゃって何にも言えなくて。
 それを優しく見守ってくれた文杜と、目を合わせて『やるぞチビ』合図のげんちゃん。あの久しぶり感堪んなくて。

 はぁライブ前に不安薬飲んどいてマジ正解だわー人がゴミのようだわーとか、ジブリみたいなこと思って鳴らしたギブソンのチューニングとげんちゃんのジャズマスター、やっぱ休業とか俺ふざけてたわ。みんなやっぱ集まんないと、このバンド腐るんだよとか、あん時思ったよ。


『聴きたくない慢心なさんおぶみゅーじっ
きみあげい 間違えた don't let me first

さん、くーでたらぶ
さん、くでたらあぁあぶ
さん、くーでたらぶ』


 最高やねん。なんやしマジ。頭ん中ぐちゃぐちゃでワケわからんばい!唄ってていい、そうあんたら、言ってくれたんよ、俺に。

『あまちゃん、俺やっぱり君がいなかったら家からも出てないし、君が振ってこなかったらずっと単車乗りヤンキーだったかも。
 君はスプレー落書きしたくない壁だね』
『じゃぁ文杜は、寄りかかりたい壁だねナトリはサナトリウムで。げんちゃんは最高のエフェクター相棒で』


 気持ち悪い、安っぽいサイケデリックな音が鳴って目覚めた。心臓止まるかと思った。

「うっ…」

 頭痛ぇし。目ぇいきなり見開きすぎてチカチカ、それこそサイケデリックだわ視界。よく寝たよ珍しく。ステレオグラムかし。我ながら寝転びながらにして目眩だわ機嫌悪っ。

 てかなんか暖かいなぁ、けどうつ伏せの息苦しさ。
 なんだろ、と考える前に目についた、開かれた書きかけっぽい夢日記。
 そして気付いた、布団にしまわれた腕を抱き締めるように隣で寝ているスバルくん。暖かさの正体判明。

 これめちゃくちゃ起きにくいですけど起こしていいのでしょうか。きっと予想するに俺の腕をしまってくれた、そのまま寝てしまった、これで間違いないだろう。

 え、てかなんやこれは。

 目についた字がなんか、書いた覚えがない。なになに。


『遺憾はふやける こんな現状 
そんなの死んだら意味がない』


 どうした自分。しかしちょっと良いが手直ししたいな。これはスバルくんの唄に足そう。

 というかスバルくん。

「スバルくん、おはよう、ねぇ」

 健やかに寝ているところ申し訳ないのですが。抱きつかれている右腕を引っこ抜いてスバルくんを揺り起こす。

 いま何時だろうと思ってケータイをみればやっぱり、10時だ。出勤時間過ぎてるよお兄さん。

「ん?…うー」

 抱きついてきた。てかなんだろ、押し倒されたというかのし掛かられた。

 てか朝勃ちしてんじゃねぇよクソ眼鏡。いや眼鏡してねぇけど。生理現象だけどふざけんな。
 思わず頭後頭部ぶっ叩いたら「痛っ…」とか言って退いてくれた。優しい。

 まぁ痛いでしょうね。音が痛烈でしたからね、ばこって。叩いた俺手が痛いもん。殴ったに近いもん。

「スバルくんおはよう。ねぇ10時過ぎてるよ」
「え?おは…」

 四つん這いになって俺を組敷いている、多分朝勃ちしている自分の状況を把握したのだろう。
 一気に覚醒したらしい。頭を押さえながら「なにこれぇぇぇ!」と絶叫している、うるさい。

「こっちが聞きてえよ」
「え?え?なに、マジ?俺死んだ方がいい?記憶がないよ…え?」
「大丈夫だよ死ななくてなんもないから。生理現象だからこのアホ。誰と間違えたの。
 てか10時だってねぇ、聞いてる?仕事は!」
「あ、へ、え?いや、太一たいちが」

 誰だよ太一。
 いやお前もか?だとしたら俺この状況はあまり好ましくないよ?

「あぁ、あの従兄弟です太一。
 ちょっと急用で家族会議になったので仕事休みなので今日は太一とランチなんですので」
「なに言ってっかさっぱりわかんねぇよ退けし俺スタ練!この変態!」
「あすみません」

 太一とランチ、韻踏んでるし。

 退いてくれた。
 この人色々損する人種だと思うんだ。

「取り敢えず大丈夫ならスバルくん、コーヒー飲む?」
「あ飲む」
「たまにはいれてあげるよ」
「ありがとう…真樹、朝飯は?」
「大丈夫」

 ベットから降りてキッチンに行き、カップにテキトーにインスタントコーヒーを持ってお湯をつぐ。
 太一とランチ、ふんふんふん。語感がいいねぇ、太一。

 スバルくんは起き出してきてソファに座った。青いカップを前に起き、隣に自分も座ると、然り気無くラキストの新しいソフトパックが目の前のテーブルに置いてあった。
 手を伸ばして口を炙って開け、一本取り出してくわえる。

「今時あんまりいないよね、その開け方」
「そう言えば見ないかもね」

 父親しかやっていなかったかもしれない。

「タバコ買ってきてくれたの?」
「まぁついでだし」
「ありがとう」
「いいえ。でも喉は大丈夫?」
「大丈夫だよきっと」

 わりと諦めてるから。てかそこまでのやる気はないし。

 スバルくんが笑ってる。まぁそりゃそうですよね。しかしやめられないもんは仕方ない。

「スタ練何時から?」
「11時」
「バカ野郎。急ぎなさいよ」
「はーい」

 そう言われて仕方なくタバコを吸い終わしてコーヒー飲んで準備を始めた。結局スバルくんの家を出たのは30分過ぎだった。

 喉の保護(と偽り対人用)のマスクをしてギターを持って家を出た。
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