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排他的経済本家
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そもそも俺は自分が何者かなんて今更、わかんねぇというのに。
なんでこんな、忘れてても生きていける、どうにかなっていてなんでもなくなった頃に、まるで「忘れるな」と言わんばかりに出てきたんだ。
誰がこんなのを望んだんだ。
多分、敏郎さんの、
あの屈託な笑顔が思い出される。
短髪で体育教師みたいな、でも教員クソ食らえタイプだったあんただって、どう考えたってこんなこと、赤の他人かもしれない俺にすら、ましてや息子の太一や幸一にすら、望まなかったんだろうなとか。
夢子さんはいまどうしているのだろうかとか、そんなことをどうしたって考える。
もしかしたら狭い世界だったのかもしれない。親戚なんて会ったこともないのは多分、あの人のおかげであると信じたい。
だが。
だから息抜きが必要だった夢子さん、その気持ちは少なからずわかってあげたい、これは単なる子供ながらの純粋さと、でも大人になったら、世間を知ったら言ってはいけない気持ちになってしまう矛盾。
俺はあの日になんて返してあげればよかったのだろう。
ただ、『子供』のまま、ガキのまま素直に言えることは、「ありがとう、よかったね」しかない。だがそうは言えなかった。
なぜならこの言葉は、大人になって世間を少し知ってから知った、気付いた言葉だからだ。
考えてみればおかしかった。
いくら旦那の「妹の子」だとしても、それが本当かわからない、これをその当の旦那は信じて疑わないというこの状況は。
なのに夢子さんは俺を育ててくれた。
その歪みを広げたばばあの心境はわからないときたら、俺が今行く理由はなんだ、太一が、俺を庇ってくれようとする理由はなんだ。
息苦しくて仕方がない。この思いは誰かに話そうにも、多分今はわかれる人はいないだろうに。
どうして俺に親がいないのだろう。
ステージで唄うあまちゃんが生々しく見える。マイクを掴んで空を視線が浮遊するその姿に、誠勝手ながら、共鳴する。
君にも親は居ていない。
君の親は酷い父親らしいな。母親が、優しかったと。
俺もそれはなんだか、全然違うのにわかった気になれてしまうのは、なんでかなぁ、多分、歌詞とかかもしれないし。
君も俺もきっと人付き合いはヘタクソで、でも君の良いところは愛されるところだ。
俺にない。
俺は一人、こうして何事もなく自然と流れ着いたってエグい話でしか誰も思い出されないような、そんなやつだよ。
はぁぁ。
帰りたくない。
ババアとか家とかどうでもいいからほっといてよホント。こうなっちゃうんだからさ。都合の良いゴミ処理場じゃねぇよ俺はよ。
卑屈になっていく自分がいる。近付いていくごとにどんどん憂鬱になっていく。
だから誰も知らない、いない土地にしたのにふざけんな。
明るく生きていたかった。
敏郎さんは憧れだったのだと思う。だって、誰だって父親のような存在は絶対にいるだろう多分。俺にはその背中は俊郎さんだ。
偏屈も変わり者も全てわかって愛嬌。あんな自由な生き方、他に見たことがなくて。
『俺みたいになんなよ、だが俺の良いとこはな、人を見る目だけはあんのよ』
確かにそう。
ただ、だからこそ母親も夢子さんも捨てなかったから、最後を迎えて夢子さんはさぞ、虚しかったんだろう。若い男と浮気するくらいには。
あそこで生きるのは、今思えば俺は必死だった、いまより、きっと。
そしてあそこではそれぞれが恐らく必死で生きていたのだ。寂しかったばあちゃんも、守ろうとした嫁さんも、芯になって一家を笑顔で支えようとした旦那も、阻害されようとしていたその息子二人も、赤の他人の俺も。
なのに16まで、よくやったもんだ。
あそこは嫌いじゃないが、好きじゃなかったなぁ、真樹。歌詞通りで、泣きそうだ俺。女子かよまったく。
君はどうだったんだろうね。
耳を傾ける。
人生を悔いはしても、結局開き直ることも大切で、悔いて開き直ってこんな心境だからいまこうして誰かに唄を届けているなら、遥かに、立派だと思うんだ。
好きになろうとしなくたって君にはそう、俺くらいで、ファンがいるかもね。
よし、俺も頑張って暴れないとなぁ、あまちゃん。不機嫌にギターぶん投げる勢いでんな身体揺らしてんの観たら元気出ましたよ、マジで。
へりんたーあいじゃねぇよ。Fuck upだわ。平成最初組、ちっとがんばろうかお互い。そういや太一も同い年だ紹介しよう。リスペクトべいべーだわ。
リメインダー・オブ・敏郎だけん。二人で何しよう。
敷地入った瞬間拡声器であまちゃんの「へりんたぁぁあぃぃぃ!」叫ぶもありだな。いかにもキチガイだ。出来るかな俺の声。多分無理だな。いっそミッシェルで行くのはどうか。
「暴かれた遺産はぁぁぁ゛
俺ん家のカードぉぉぉ゛
鍵閉めないで逝ぐぅぅ゛」
的な?え、俺センスあんじゃね?てか脳内再生チバ氏だわすげぇ俺。
いや、ここは清志郎で行く?
「こんな俺に お前ら乗せようなんてえ
そんな俺は 発火しちまいなのさぁ」
とか言ってタバコに火いつけちゃう?ピストル型のライターで。
中二病かよ俺の頭の中。でもそうだハマってたのその時期だよ死ね今の気持ち悪い俺謝れチバ氏と清志郎氏にごめんなさい。
こんな脳内誰にも公開したくない。
なんでこんな、忘れてても生きていける、どうにかなっていてなんでもなくなった頃に、まるで「忘れるな」と言わんばかりに出てきたんだ。
誰がこんなのを望んだんだ。
多分、敏郎さんの、
あの屈託な笑顔が思い出される。
短髪で体育教師みたいな、でも教員クソ食らえタイプだったあんただって、どう考えたってこんなこと、赤の他人かもしれない俺にすら、ましてや息子の太一や幸一にすら、望まなかったんだろうなとか。
夢子さんはいまどうしているのだろうかとか、そんなことをどうしたって考える。
もしかしたら狭い世界だったのかもしれない。親戚なんて会ったこともないのは多分、あの人のおかげであると信じたい。
だが。
だから息抜きが必要だった夢子さん、その気持ちは少なからずわかってあげたい、これは単なる子供ながらの純粋さと、でも大人になったら、世間を知ったら言ってはいけない気持ちになってしまう矛盾。
俺はあの日になんて返してあげればよかったのだろう。
ただ、『子供』のまま、ガキのまま素直に言えることは、「ありがとう、よかったね」しかない。だがそうは言えなかった。
なぜならこの言葉は、大人になって世間を少し知ってから知った、気付いた言葉だからだ。
考えてみればおかしかった。
いくら旦那の「妹の子」だとしても、それが本当かわからない、これをその当の旦那は信じて疑わないというこの状況は。
なのに夢子さんは俺を育ててくれた。
その歪みを広げたばばあの心境はわからないときたら、俺が今行く理由はなんだ、太一が、俺を庇ってくれようとする理由はなんだ。
息苦しくて仕方がない。この思いは誰かに話そうにも、多分今はわかれる人はいないだろうに。
どうして俺に親がいないのだろう。
ステージで唄うあまちゃんが生々しく見える。マイクを掴んで空を視線が浮遊するその姿に、誠勝手ながら、共鳴する。
君にも親は居ていない。
君の親は酷い父親らしいな。母親が、優しかったと。
俺もそれはなんだか、全然違うのにわかった気になれてしまうのは、なんでかなぁ、多分、歌詞とかかもしれないし。
君も俺もきっと人付き合いはヘタクソで、でも君の良いところは愛されるところだ。
俺にない。
俺は一人、こうして何事もなく自然と流れ着いたってエグい話でしか誰も思い出されないような、そんなやつだよ。
はぁぁ。
帰りたくない。
ババアとか家とかどうでもいいからほっといてよホント。こうなっちゃうんだからさ。都合の良いゴミ処理場じゃねぇよ俺はよ。
卑屈になっていく自分がいる。近付いていくごとにどんどん憂鬱になっていく。
だから誰も知らない、いない土地にしたのにふざけんな。
明るく生きていたかった。
敏郎さんは憧れだったのだと思う。だって、誰だって父親のような存在は絶対にいるだろう多分。俺にはその背中は俊郎さんだ。
偏屈も変わり者も全てわかって愛嬌。あんな自由な生き方、他に見たことがなくて。
『俺みたいになんなよ、だが俺の良いとこはな、人を見る目だけはあんのよ』
確かにそう。
ただ、だからこそ母親も夢子さんも捨てなかったから、最後を迎えて夢子さんはさぞ、虚しかったんだろう。若い男と浮気するくらいには。
あそこで生きるのは、今思えば俺は必死だった、いまより、きっと。
そしてあそこではそれぞれが恐らく必死で生きていたのだ。寂しかったばあちゃんも、守ろうとした嫁さんも、芯になって一家を笑顔で支えようとした旦那も、阻害されようとしていたその息子二人も、赤の他人の俺も。
なのに16まで、よくやったもんだ。
あそこは嫌いじゃないが、好きじゃなかったなぁ、真樹。歌詞通りで、泣きそうだ俺。女子かよまったく。
君はどうだったんだろうね。
耳を傾ける。
人生を悔いはしても、結局開き直ることも大切で、悔いて開き直ってこんな心境だからいまこうして誰かに唄を届けているなら、遥かに、立派だと思うんだ。
好きになろうとしなくたって君にはそう、俺くらいで、ファンがいるかもね。
よし、俺も頑張って暴れないとなぁ、あまちゃん。不機嫌にギターぶん投げる勢いでんな身体揺らしてんの観たら元気出ましたよ、マジで。
へりんたーあいじゃねぇよ。Fuck upだわ。平成最初組、ちっとがんばろうかお互い。そういや太一も同い年だ紹介しよう。リスペクトべいべーだわ。
リメインダー・オブ・敏郎だけん。二人で何しよう。
敷地入った瞬間拡声器であまちゃんの「へりんたぁぁあぃぃぃ!」叫ぶもありだな。いかにもキチガイだ。出来るかな俺の声。多分無理だな。いっそミッシェルで行くのはどうか。
「暴かれた遺産はぁぁぁ゛
俺ん家のカードぉぉぉ゛
鍵閉めないで逝ぐぅぅ゛」
的な?え、俺センスあんじゃね?てか脳内再生チバ氏だわすげぇ俺。
いや、ここは清志郎で行く?
「こんな俺に お前ら乗せようなんてえ
そんな俺は 発火しちまいなのさぁ」
とか言ってタバコに火いつけちゃう?ピストル型のライターで。
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