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in DIVE CITY Tokyo
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「まぁ、リスペクト?なのかな」
ふと、
ジントニックを一気飲みして呟いた。そ
のハイスピードさに、思わず太一は「お、おぅ…」と、空になった俺のプラステックを預かり、まだ口つけてない自分の酒をくれた。
飲んだらまたジントニックだった。
「リスペクトはわかるんやけど昴、お前酔うとちょっと」
「失神しないですか先輩」
「多分そんくらいが丁度いいと」
「やめた方がいいで、昴」
「あたしもそう思」
一気。
「まずはちょっと便所に言って放尿かましてきます」
「わかるけど!」
「帰ってきたら酒買うてくるばい」
「なにぃ!?福岡全員頭ヤバくねぇ?」
「侵害だな!お前もあとでお花摘み」
「わかってるよ!」
「ちなみに俺は前回ジントニックとスクリュードライバーとテキーラコークで失神した!最早汗とかいろんな興奮で蒸発して尿は消えた!」
「何それキモい!」
「はぁー、コアやね昴。よっしゃ早ぅ行って来ぃ!帰ってきたらねーちゃんも小便行って来ぃ!」
「わかってる、てかちびちび飲むパターン、それ!」
「はは、わかってらっしゃるなぁねーちゃん!」
とにかく便所に行こう。アルコールを抜かないと失神する。
ライブとはそんなものだ。サブカルクソ女子め。
混んでいた便所の間に太一のジントニックは消費。小便済ませて適当にゴミ箱に捨てて戻れば太一、またジントニックを買ってきていた。
逆に酔うだろ。意外とライブハウスの酒ってテキトーに作ってるから濃いんだよ?味とかさぁ、3杯飲んだらバレちゃうじゃん。
北谷お花摘み。なかなか帰ってこない間昨日の雑談で盛り上がる。
「ハンパねーなそれ!」
「ホントハンパねぇ」
「しっかし家族みてーだな」
「あのバンドはそうかもね。一体感あるわ」
「なるほどねぇ。昴がハマるの、わかった気ぃするわ」
…まぁね。
「…そいつにとっちゃ昴はどない見えたんやろな」
「え?」
「いや」
そんな時に漸く北谷が帰ってきた。
女子トイレの混み具合にイライラしていたご様子。
「いつも思うけどなんで女ってんなときでも髪型気にすんだよマジ死ねよ」
「それ会社でも言ってたよな」
「会社ではアレっすよ。
トイレで歯ぁ磨いてんじゃねぇよミントス食えハゲですよ」
「あまちゃんが聞いたら偉く共感すると思うよ。あいつ多分そういう女嫌いだよ」
「なんで知ってんの」
「飲みに行ったんだって。偉く偏った恋愛観だよ」
「あぁ、でもそんな感じするわ。てか全員変態そうだよね職人臭いし」
うわ。
的を射ている気がする。
「ドラムは清純系らしいよ」
「あそう?までも尻に敷かれそう」
的を射ている。
「つか昴はどうなん?」
「俺?」
「結婚詐欺とヒモ野郎とハム」
「はぁ?」
「言うなぁ!仮にこいつは親戚なんだぞおい!」
「仮にて。にしゃぁ昔っから変わらんなぁ。大体好きになる子そんなんやね」
「あやっぱそうなんだ」
「言うなぁ!仮にこいつは後輩なんだけど!」
「仮にってなんだし。あんた器用貧乏なんだよ多分」
「あそれそれ」
妙な結託が二人に生まれたらしい。
なんだよお前らムカつくな。
年齢相応の付き合いをしてきた。しかしまぁ、考えてみたら三十路前だ。いい加減本当にどうにかしなければ。間違ってもバンドヒモ野郎を飼っている場合じゃない。
しかしなかなか想像も出来ないのが事実だ。仕事は少しだけ軌道に乗ってきたような気がして遺産も片付いただろう。
これからを考えてみたら自分は今、どうするんだろう。
真樹、君はこれから一体、どうするんだろうね。
俺はなんとなくだけど。
ふと。
なんだかんだで意気投合し始めている二人を見て思った。
俺はなんとなくだけど少し前より世界が広くなったような、いや、大して本当は変わっていないのかもしれないような事柄を、ライブハウスという非日常に近い空間で思う。
俺は前向きになれたとか誰がどう変わったとか、そんなことはどうだっていいのかもしれない。いや、多分何も変わっていないんだ。
少しの違いと言えば、前よりこのバンドを知った、だけである。
「人増えてきたなぁ」
確かに。
なんだかんだで開演30分前の入場で背凭れの前を確保したし。
それに寄りかかっていれば太一は「俺もトイレ」と、ジントニックを置いて出て行く。
オールスタンディングだが、案外こう、やはり前列じゃないせいかそれほどの圧迫感はない。しかし皆盛り上がる興奮のような、妙な熱がある。
ワンマンライブとは、そうか、こうしてそわそわするもんか。忙しない。果たしていまでんにじ達はどんな心境なんだろ。
「あ、古里さん」
「ん?」
ふと北谷が声をかける。
「…弟見てるってさ」
「え、そうなの?」
「え知らんかったマジか」
「えどこにいんの、」
見てみたいじゃん、どうせなら同志を。
「いや、」
しかし北谷はケータイを閉じた。
「ライブ配信のやつ見るってさ。マジ録画頼んだわ」
「ライブ配信?」
「そ」
あぁそっか。
「あいつら案外、有名なのかぁ」
「まぁ、みんなサポートの経歴がわりと凄かったね。けど…なんかあれだね。ギターもだけど、みんなでんにじより知名度あるとこにサポート行ってんのに、正式の話は蹴ってるみたいね」
「あぁ」
まぁ、納得。
ふと、
ジントニックを一気飲みして呟いた。そ
のハイスピードさに、思わず太一は「お、おぅ…」と、空になった俺のプラステックを預かり、まだ口つけてない自分の酒をくれた。
飲んだらまたジントニックだった。
「リスペクトはわかるんやけど昴、お前酔うとちょっと」
「失神しないですか先輩」
「多分そんくらいが丁度いいと」
「やめた方がいいで、昴」
「あたしもそう思」
一気。
「まずはちょっと便所に言って放尿かましてきます」
「わかるけど!」
「帰ってきたら酒買うてくるばい」
「なにぃ!?福岡全員頭ヤバくねぇ?」
「侵害だな!お前もあとでお花摘み」
「わかってるよ!」
「ちなみに俺は前回ジントニックとスクリュードライバーとテキーラコークで失神した!最早汗とかいろんな興奮で蒸発して尿は消えた!」
「何それキモい!」
「はぁー、コアやね昴。よっしゃ早ぅ行って来ぃ!帰ってきたらねーちゃんも小便行って来ぃ!」
「わかってる、てかちびちび飲むパターン、それ!」
「はは、わかってらっしゃるなぁねーちゃん!」
とにかく便所に行こう。アルコールを抜かないと失神する。
ライブとはそんなものだ。サブカルクソ女子め。
混んでいた便所の間に太一のジントニックは消費。小便済ませて適当にゴミ箱に捨てて戻れば太一、またジントニックを買ってきていた。
逆に酔うだろ。意外とライブハウスの酒ってテキトーに作ってるから濃いんだよ?味とかさぁ、3杯飲んだらバレちゃうじゃん。
北谷お花摘み。なかなか帰ってこない間昨日の雑談で盛り上がる。
「ハンパねーなそれ!」
「ホントハンパねぇ」
「しっかし家族みてーだな」
「あのバンドはそうかもね。一体感あるわ」
「なるほどねぇ。昴がハマるの、わかった気ぃするわ」
…まぁね。
「…そいつにとっちゃ昴はどない見えたんやろな」
「え?」
「いや」
そんな時に漸く北谷が帰ってきた。
女子トイレの混み具合にイライラしていたご様子。
「いつも思うけどなんで女ってんなときでも髪型気にすんだよマジ死ねよ」
「それ会社でも言ってたよな」
「会社ではアレっすよ。
トイレで歯ぁ磨いてんじゃねぇよミントス食えハゲですよ」
「あまちゃんが聞いたら偉く共感すると思うよ。あいつ多分そういう女嫌いだよ」
「なんで知ってんの」
「飲みに行ったんだって。偉く偏った恋愛観だよ」
「あぁ、でもそんな感じするわ。てか全員変態そうだよね職人臭いし」
うわ。
的を射ている気がする。
「ドラムは清純系らしいよ」
「あそう?までも尻に敷かれそう」
的を射ている。
「つか昴はどうなん?」
「俺?」
「結婚詐欺とヒモ野郎とハム」
「はぁ?」
「言うなぁ!仮にこいつは親戚なんだぞおい!」
「仮にて。にしゃぁ昔っから変わらんなぁ。大体好きになる子そんなんやね」
「あやっぱそうなんだ」
「言うなぁ!仮にこいつは後輩なんだけど!」
「仮にってなんだし。あんた器用貧乏なんだよ多分」
「あそれそれ」
妙な結託が二人に生まれたらしい。
なんだよお前らムカつくな。
年齢相応の付き合いをしてきた。しかしまぁ、考えてみたら三十路前だ。いい加減本当にどうにかしなければ。間違ってもバンドヒモ野郎を飼っている場合じゃない。
しかしなかなか想像も出来ないのが事実だ。仕事は少しだけ軌道に乗ってきたような気がして遺産も片付いただろう。
これからを考えてみたら自分は今、どうするんだろう。
真樹、君はこれから一体、どうするんだろうね。
俺はなんとなくだけど。
ふと。
なんだかんだで意気投合し始めている二人を見て思った。
俺はなんとなくだけど少し前より世界が広くなったような、いや、大して本当は変わっていないのかもしれないような事柄を、ライブハウスという非日常に近い空間で思う。
俺は前向きになれたとか誰がどう変わったとか、そんなことはどうだっていいのかもしれない。いや、多分何も変わっていないんだ。
少しの違いと言えば、前よりこのバンドを知った、だけである。
「人増えてきたなぁ」
確かに。
なんだかんだで開演30分前の入場で背凭れの前を確保したし。
それに寄りかかっていれば太一は「俺もトイレ」と、ジントニックを置いて出て行く。
オールスタンディングだが、案外こう、やはり前列じゃないせいかそれほどの圧迫感はない。しかし皆盛り上がる興奮のような、妙な熱がある。
ワンマンライブとは、そうか、こうしてそわそわするもんか。忙しない。果たしていまでんにじ達はどんな心境なんだろ。
「あ、古里さん」
「ん?」
ふと北谷が声をかける。
「…弟見てるってさ」
「え、そうなの?」
「え知らんかったマジか」
「えどこにいんの、」
見てみたいじゃん、どうせなら同志を。
「いや、」
しかし北谷はケータイを閉じた。
「ライブ配信のやつ見るってさ。マジ録画頼んだわ」
「ライブ配信?」
「そ」
あぁそっか。
「あいつら案外、有名なのかぁ」
「まぁ、みんなサポートの経歴がわりと凄かったね。けど…なんかあれだね。ギターもだけど、みんなでんにじより知名度あるとこにサポート行ってんのに、正式の話は蹴ってるみたいね」
「あぁ」
まぁ、納得。
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