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CRAVING【短編】
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それからまず俺たちは。
『弦次の弦が切れちゃった』ので、楽屋じゃない場所、俺たちがやらない野外ステージの音が聴こえるようなロビーで、3人で話し合いをしようとしていた。
ロビーには、何故か、先程の“でんにじ”共がいて。
ボーカルのチビがジャケットをパタパタしてべろべろに酔っぱらっていた。
最早話し合いをしようとしていたのに。
「あー!」
絡まれてしまった。
「こん人っ、知らなーい!」
だそうで。
多分絡まれてしまった要因の1つは、
太田を誤魔化すために持ってきた、俺が背負っていたテレキャスターのせいで、ミュージシャンだと相手にバレてしまったのだと、思われる。
ジャケットをぶん投げ、突進してこようとするチビに対し金髪の長身(推定、ドラム)が、チビの腹辺りを片腕でがしっと捕まえて制御。「おぶっ、」と、ゲロ吐きそうな声だか唸りを吐いてチビはくったりしてしまった。
「バカかこのチビぃ!飲み過ぎだわ良い歳こいてぇ!」
「いやぁ、すみません。
ele groundさんですよね多分」
金髪が喚くなか、殺し屋ベースがジャケットを拾いながら凄く申し訳無さそうに腰低く頭を掻いて謝ってきた。
捲ったシャツからは確かに湿布が張られまくっているのが見える。マジか。なにそれ。そしてお前もジャケットどこやったの。そして若干お前も酒臭いが大丈夫なのかこの集団。
「痛ぃ痛、おぇっ、死ぬっ、ハゲっ、死ぬ降ろしてホント出る」
「うわぁ汚えはい降ろすよ!突進すんなよマジ」
降ろされたボーカルはゆらっと立ち、俺たちを見つめる。そして一言。
「れ、誰らっけ」
それを聞いたタカさん、ノリトさん。
唖然とした後、爆笑していた。
「あっ、はぁ、はい、あの、ですよねっひっひっひ、」
「ま、マジやっぱさぁ、俺らこんなもんっしょホント!なぁ弦次!」
「え?え?俺?」
「つーか弦次、話ってなんだよ?
さっきタカから聞いたけど。抜ける?」
「いやぁ、えー」
「あ、なに?お宅らナーバスな感じなんすか?」
「え?え?」
「あまぁねぇ。そうそう。
申し遅れました。ele groundベースの高安です。まぁリーダーはいまほら、なぁんか置いてきちゃった。なぁ弦次?」
「え、あ、はい」
「抜けんの?
俺はまぁ別にいいよ。つーか俺さ。タカ、ぶっちゃけ、あいついねぇから言っていいか?辞めてぇんだけど。
俺とお前、まぁベースとドラムってリズム隊じゃん?あいつわかってねぇよな」
「いっそ今日は好き勝手やっちゃうぅ?
ノリト、俺もさぁ、最近クッソつまんなくてさぁ、俺弦次が超エラいと思ってたんだよなぁ~。したら話したいことあるだなんて言っちゃうから?ちょっとリズムに乗っちゃうよね」
「はっ。お前ってさぁ、やっぱ大学の時からあんの外人被れより遥かにセンスあるなぁ」
「えなに?マジ?二人ともそんな感じ?やっぱり?」
二人揃って「当たり前じゃん」と回答。おぉすげぇ。リズム隊息ぴったり。
「弦次なんかより俺らよっっぽど長ぇもん」
「大体最近調子こいてんだよあの野郎」
「よっし決めたぁ!
ついて来れる?弦次」
「うっ」
さぁ…どうか。
「正直なぁ、俺そんなブチキレちまった二人を見たことねぇからなぁ。
俺もブチキレちまった演奏したことねぇからなぁ…」
ありゃ、こら。
なんだ、こら。
「にやけてんじゃねぇよ、弦次」
「んなこと言ってスカウトの引き金がピストルズって俺聞いたぞ、大学で、あの野郎が唄っちまったってな“God Save The Queen”」
確かにな。
「さぁ、いまの弦次は何が好きかな」
「そうねぇ」
タカさんがにやにやして“でんにじ”を見た。
俺も何気なく見てみれば。
俺たちの話なんかぜんっぜん聞いちゃいない3人組は、あろうことか、どっかで買ってきたんだろう酒をあけて飲み始めて、野外ライブに耳を澄ませ、「このバンドセンスねぇな」だの「いやぁでも唄はお前より遥かに上手いわ」だの言っていた。
「いいなぁ、あれ」
ふとノリトさんが言った。
「昔はあんなんだったはずなのにな、俺たちな」
「ホントだな」
「…田中さんのころ?」
「…だから田中、辞めたんだろうな」
「なんで気付かなかったかな」
そのうちでんにじボーカル、鼻唄のように、「じゃす、わんもぁきっ」と歌い始めた。確かに下手だが、どことない甘さがある。自曲かなぁ、何言ってるかわかんないなぁ、舌足らずだなぁ。
でも凄く身の丈に合ってるなぁ。
「それ確かに似てるわ」
とか言われてる。そっかぁ、誰かの曲なのか。だとしたら日本人かも。俺知らないかもしれないなぁ。
「行こっか、終わったら」
「え?」
「あの人たち。3人で観に行こうよ。ね?」
そう提案すれば二人とも返事はしなかった。だけどなんとなく空気でOKがわかった。
あぁ、多分だが。
俺たち今日で、終わるんだろうなぁとぼんやり思って。
「さぁ行くか…。ステージ直行しよ」
タカさんの一言に、ノリトさんと俺はついていくことにした。
去り際、見てなくても良い。ファンサービスで、ステージ最後にハケる俺だけがやる手を合わせたお辞儀ポーズをでんにじの3人に向けた。これは全国、誰が見ても「ありがとう」と、わかるポーズだから。
『弦次の弦が切れちゃった』ので、楽屋じゃない場所、俺たちがやらない野外ステージの音が聴こえるようなロビーで、3人で話し合いをしようとしていた。
ロビーには、何故か、先程の“でんにじ”共がいて。
ボーカルのチビがジャケットをパタパタしてべろべろに酔っぱらっていた。
最早話し合いをしようとしていたのに。
「あー!」
絡まれてしまった。
「こん人っ、知らなーい!」
だそうで。
多分絡まれてしまった要因の1つは、
太田を誤魔化すために持ってきた、俺が背負っていたテレキャスターのせいで、ミュージシャンだと相手にバレてしまったのだと、思われる。
ジャケットをぶん投げ、突進してこようとするチビに対し金髪の長身(推定、ドラム)が、チビの腹辺りを片腕でがしっと捕まえて制御。「おぶっ、」と、ゲロ吐きそうな声だか唸りを吐いてチビはくったりしてしまった。
「バカかこのチビぃ!飲み過ぎだわ良い歳こいてぇ!」
「いやぁ、すみません。
ele groundさんですよね多分」
金髪が喚くなか、殺し屋ベースがジャケットを拾いながら凄く申し訳無さそうに腰低く頭を掻いて謝ってきた。
捲ったシャツからは確かに湿布が張られまくっているのが見える。マジか。なにそれ。そしてお前もジャケットどこやったの。そして若干お前も酒臭いが大丈夫なのかこの集団。
「痛ぃ痛、おぇっ、死ぬっ、ハゲっ、死ぬ降ろしてホント出る」
「うわぁ汚えはい降ろすよ!突進すんなよマジ」
降ろされたボーカルはゆらっと立ち、俺たちを見つめる。そして一言。
「れ、誰らっけ」
それを聞いたタカさん、ノリトさん。
唖然とした後、爆笑していた。
「あっ、はぁ、はい、あの、ですよねっひっひっひ、」
「ま、マジやっぱさぁ、俺らこんなもんっしょホント!なぁ弦次!」
「え?え?俺?」
「つーか弦次、話ってなんだよ?
さっきタカから聞いたけど。抜ける?」
「いやぁ、えー」
「あ、なに?お宅らナーバスな感じなんすか?」
「え?え?」
「あまぁねぇ。そうそう。
申し遅れました。ele groundベースの高安です。まぁリーダーはいまほら、なぁんか置いてきちゃった。なぁ弦次?」
「え、あ、はい」
「抜けんの?
俺はまぁ別にいいよ。つーか俺さ。タカ、ぶっちゃけ、あいついねぇから言っていいか?辞めてぇんだけど。
俺とお前、まぁベースとドラムってリズム隊じゃん?あいつわかってねぇよな」
「いっそ今日は好き勝手やっちゃうぅ?
ノリト、俺もさぁ、最近クッソつまんなくてさぁ、俺弦次が超エラいと思ってたんだよなぁ~。したら話したいことあるだなんて言っちゃうから?ちょっとリズムに乗っちゃうよね」
「はっ。お前ってさぁ、やっぱ大学の時からあんの外人被れより遥かにセンスあるなぁ」
「えなに?マジ?二人ともそんな感じ?やっぱり?」
二人揃って「当たり前じゃん」と回答。おぉすげぇ。リズム隊息ぴったり。
「弦次なんかより俺らよっっぽど長ぇもん」
「大体最近調子こいてんだよあの野郎」
「よっし決めたぁ!
ついて来れる?弦次」
「うっ」
さぁ…どうか。
「正直なぁ、俺そんなブチキレちまった二人を見たことねぇからなぁ。
俺もブチキレちまった演奏したことねぇからなぁ…」
ありゃ、こら。
なんだ、こら。
「にやけてんじゃねぇよ、弦次」
「んなこと言ってスカウトの引き金がピストルズって俺聞いたぞ、大学で、あの野郎が唄っちまったってな“God Save The Queen”」
確かにな。
「さぁ、いまの弦次は何が好きかな」
「そうねぇ」
タカさんがにやにやして“でんにじ”を見た。
俺も何気なく見てみれば。
俺たちの話なんかぜんっぜん聞いちゃいない3人組は、あろうことか、どっかで買ってきたんだろう酒をあけて飲み始めて、野外ライブに耳を澄ませ、「このバンドセンスねぇな」だの「いやぁでも唄はお前より遥かに上手いわ」だの言っていた。
「いいなぁ、あれ」
ふとノリトさんが言った。
「昔はあんなんだったはずなのにな、俺たちな」
「ホントだな」
「…田中さんのころ?」
「…だから田中、辞めたんだろうな」
「なんで気付かなかったかな」
そのうちでんにじボーカル、鼻唄のように、「じゃす、わんもぁきっ」と歌い始めた。確かに下手だが、どことない甘さがある。自曲かなぁ、何言ってるかわかんないなぁ、舌足らずだなぁ。
でも凄く身の丈に合ってるなぁ。
「それ確かに似てるわ」
とか言われてる。そっかぁ、誰かの曲なのか。だとしたら日本人かも。俺知らないかもしれないなぁ。
「行こっか、終わったら」
「え?」
「あの人たち。3人で観に行こうよ。ね?」
そう提案すれば二人とも返事はしなかった。だけどなんとなく空気でOKがわかった。
あぁ、多分だが。
俺たち今日で、終わるんだろうなぁとぼんやり思って。
「さぁ行くか…。ステージ直行しよ」
タカさんの一言に、ノリトさんと俺はついていくことにした。
去り際、見てなくても良い。ファンサービスで、ステージ最後にハケる俺だけがやる手を合わせたお辞儀ポーズをでんにじの3人に向けた。これは全国、誰が見ても「ありがとう」と、わかるポーズだから。
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