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CRAVING【短編】
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そんな感じでベーシストとドラムに合図されちゃえばまぁ、ノっちまうのがギタリスト。
タカさんに背中をちょんと押され、俺は一歩、前に出る。
呆然と見ていれば、さっきまでステージでプレイしていた黒のジャズベースを肩にゆったりとした動作で掛けた殺し屋、栗村文杜がまた挑戦的に見つめてきて。
「真樹、」と栗村が声を掛ければ、ダルそうに、しかし喧嘩でもするのかスタイルで立ち上がり手首も首も回しながら、やはりステージにさっきまであったテレキャスター、フェンダーのUSAを肩に下げるあまちゃん。
真ん中あたりが空いている。俺その位置に、立つのか。
気付けばタカさん、ノリトさん、サイトウさんが胡座やら体育座りやらで座っていて。
あぁもう仕方ねえ。
背負っていたギターケースから俺もテレキャスターを出し、ケースは目の前に放っておいて肩に下げると。
栗村がへっへと笑いだし、「ストリートミュージシャンみたいだ」と楽しそうに、しかしセンスを感じる一言をぶち込んだ。
あぁ、そうね。そうだよ。
さぁ、どうすんのさ。
目線で訴えかける両サイド。
あぁ、思い付かないけど思い付いた。何故だろう。
別に、なんも深い意味ない。
特に太田に執着やら恨みやらそんなのもくだらないけどやっぱ一流ミュージシャンってそう、あんときもそうだった。
いきなり降ってきちゃうってかマッチしちゃうってか。
ちゃーんちゃんちゃとリフを弾いてみてチラッと栗村を見れば、ピックを持つはずの細い指、右手で口元押さえて笑ったから疑問視を表情に張り付けて首を傾げ見てやる。
まぁこれは。
お前ら知ってる?と、
お前らプレイ出来る?という俺の高慢ちきもある。
弾けんのなんてわかってんだよ。
あんなプレイを、ステージで観たんだ。つか、太田なら、多分。
チラッと栗村が金髪を見て笑い、金髪、苦笑。
ふとあまちゃんを見れば顔引きつってる。そういやぁ、英語下手だったな。
だが俺の後ろでなにか二人、やりとりをした後、栗村に言われた。
「君きっと唄下手だな」
「はへ?」
「うん、ボーカルのコードで行くだろ、君は」
「は、へぇ」
「まぁ、うん、君が想像する“でんにじ”よかぁ、ちと声、低いばい」
はっ?
「はーいナトリ、いくよ」
「ねマジで?あれだっ…低いのぉ?」
「あまちゃん頑張れ。昨日観たやろがい。あん意味ねぃ人弾きゃええね」
ん?
かんかんかんと、スティックが鳴ったので思わず、思い描いたコードを弾いたが。
漸く栗村のお国言葉が自分の中で浸透した。
あまちゃん、ベース、ルートに寄せてエレキきた。
なるほどコアな、あの、4人ライブバージョンのリズムきたぁ!
しかし待てこのパターン。
ボーカル音、ボーカルのカート・コーバンのギター、俺が勝手にもらってしまった。てなると英語ドヘタクソあまちゃん、どうなる多分唄わない。唄わせるのはセンスがない。
しかしそうなるとぉ?
『君はきっと唄下手だな』
見越されている。げっ。やっちまった。まさかそれ、策略?どうしよう新手の苛め?
と、唄場面、出遅れたと思ったレイコンマ何秒かで左耳にきた。
「I don't care don't care don't care、don't care don't care care if it's old」
滑りよい、日本人にも馴染めるような、しかしカートを崩さぬリズム感。でも英語、しかしカートで、オリジナルもあり。
え、なにそれ。
「Get away away, get away
Get away away away from your home
I'm afraidI'm afraidI'm afraidI'm afraid, afraid, ghost
Even if you have, even if you need
I don't mean to stare, we don't have to breed
We could plant a house we could build a tree
I don't even care, we could have all three She said 、」
なんたるこっちゃ。
あのダルさ完コピ。歌詞カードと見比べないとわからないあのダルさ完コピ。
またこのShe said!!をシャウトともつかないダルさだからこそ普通に、しかし栗村さんはなんかカートよりももっと力を抜いて、「しーぃぃ、せいっ、」みたいな、日本語で下手すりゃ変換できそーなビミョーさで唄っちゃうリズムジャズベースのセンスに感動。
きっと日本語に書けちゃうヘタクソ英語があまちゃんかも。とか弾きながらこのバンドの良さを知る。だって太田にはない。
Just one more kissだものあいつなら。センスねぇ。甘美じゃねぇ。日本人のクセに調子込みやがって、アイツめ。
いやぁしかし、俺こんなに歌詞聴いたことあったっけ。すげぇなNirvana.いや、ニルヴァーナ。死んじゃうわ。カートじゃなくてよかった。弦次でよかった。
弾き終えてみて間を置き、誰からともなく、「すげぇ!」右。「すげぇ」俺。 「やべぇ」左。同時発信して。
「ふっ、」
3人して笑い合ってしまった。
タカさんに背中をちょんと押され、俺は一歩、前に出る。
呆然と見ていれば、さっきまでステージでプレイしていた黒のジャズベースを肩にゆったりとした動作で掛けた殺し屋、栗村文杜がまた挑戦的に見つめてきて。
「真樹、」と栗村が声を掛ければ、ダルそうに、しかし喧嘩でもするのかスタイルで立ち上がり手首も首も回しながら、やはりステージにさっきまであったテレキャスター、フェンダーのUSAを肩に下げるあまちゃん。
真ん中あたりが空いている。俺その位置に、立つのか。
気付けばタカさん、ノリトさん、サイトウさんが胡座やら体育座りやらで座っていて。
あぁもう仕方ねえ。
背負っていたギターケースから俺もテレキャスターを出し、ケースは目の前に放っておいて肩に下げると。
栗村がへっへと笑いだし、「ストリートミュージシャンみたいだ」と楽しそうに、しかしセンスを感じる一言をぶち込んだ。
あぁ、そうね。そうだよ。
さぁ、どうすんのさ。
目線で訴えかける両サイド。
あぁ、思い付かないけど思い付いた。何故だろう。
別に、なんも深い意味ない。
特に太田に執着やら恨みやらそんなのもくだらないけどやっぱ一流ミュージシャンってそう、あんときもそうだった。
いきなり降ってきちゃうってかマッチしちゃうってか。
ちゃーんちゃんちゃとリフを弾いてみてチラッと栗村を見れば、ピックを持つはずの細い指、右手で口元押さえて笑ったから疑問視を表情に張り付けて首を傾げ見てやる。
まぁこれは。
お前ら知ってる?と、
お前らプレイ出来る?という俺の高慢ちきもある。
弾けんのなんてわかってんだよ。
あんなプレイを、ステージで観たんだ。つか、太田なら、多分。
チラッと栗村が金髪を見て笑い、金髪、苦笑。
ふとあまちゃんを見れば顔引きつってる。そういやぁ、英語下手だったな。
だが俺の後ろでなにか二人、やりとりをした後、栗村に言われた。
「君きっと唄下手だな」
「はへ?」
「うん、ボーカルのコードで行くだろ、君は」
「は、へぇ」
「まぁ、うん、君が想像する“でんにじ”よかぁ、ちと声、低いばい」
はっ?
「はーいナトリ、いくよ」
「ねマジで?あれだっ…低いのぉ?」
「あまちゃん頑張れ。昨日観たやろがい。あん意味ねぃ人弾きゃええね」
ん?
かんかんかんと、スティックが鳴ったので思わず、思い描いたコードを弾いたが。
漸く栗村のお国言葉が自分の中で浸透した。
あまちゃん、ベース、ルートに寄せてエレキきた。
なるほどコアな、あの、4人ライブバージョンのリズムきたぁ!
しかし待てこのパターン。
ボーカル音、ボーカルのカート・コーバンのギター、俺が勝手にもらってしまった。てなると英語ドヘタクソあまちゃん、どうなる多分唄わない。唄わせるのはセンスがない。
しかしそうなるとぉ?
『君はきっと唄下手だな』
見越されている。げっ。やっちまった。まさかそれ、策略?どうしよう新手の苛め?
と、唄場面、出遅れたと思ったレイコンマ何秒かで左耳にきた。
「I don't care don't care don't care、don't care don't care care if it's old」
滑りよい、日本人にも馴染めるような、しかしカートを崩さぬリズム感。でも英語、しかしカートで、オリジナルもあり。
え、なにそれ。
「Get away away, get away
Get away away away from your home
I'm afraidI'm afraidI'm afraidI'm afraid, afraid, ghost
Even if you have, even if you need
I don't mean to stare, we don't have to breed
We could plant a house we could build a tree
I don't even care, we could have all three She said 、」
なんたるこっちゃ。
あのダルさ完コピ。歌詞カードと見比べないとわからないあのダルさ完コピ。
またこのShe said!!をシャウトともつかないダルさだからこそ普通に、しかし栗村さんはなんかカートよりももっと力を抜いて、「しーぃぃ、せいっ、」みたいな、日本語で下手すりゃ変換できそーなビミョーさで唄っちゃうリズムジャズベースのセンスに感動。
きっと日本語に書けちゃうヘタクソ英語があまちゃんかも。とか弾きながらこのバンドの良さを知る。だって太田にはない。
Just one more kissだものあいつなら。センスねぇ。甘美じゃねぇ。日本人のクセに調子込みやがって、アイツめ。
いやぁしかし、俺こんなに歌詞聴いたことあったっけ。すげぇなNirvana.いや、ニルヴァーナ。死んじゃうわ。カートじゃなくてよかった。弦次でよかった。
弾き終えてみて間を置き、誰からともなく、「すげぇ!」右。「すげぇ」俺。 「やべぇ」左。同時発信して。
「ふっ、」
3人して笑い合ってしまった。
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