金魚すくい

二色燕𠀋

文字の大きさ
4 / 8

4

しおりを挟む
 お風呂に入る前にこうさくくんに金魚を見せた。

「金魚の餌とかあんの?」

 という問いにままは、「あぁ、明日買ってこないとね」と言って。

 「なんだか元気ないなぁ、金魚。金魚ってぶくぶく必要なんじゃない?」

 こうさくくんがいうぶくぶくとは果たしてなんだろう。

 ままと二人でお風呂に入って、あがってすぐに私はじっと金魚を見つめていたけれど、「寒いから早く寝なさい」と言われ、金魚にバイバイして布団に入った。

 こうさくくんとままはしばらく二人で仲良くテレビを見ていた。

 ままはいつも、大体気付いたら隣で寝ているのです。次の日の朝も「さえかー…起きてー…」と寝惚けて起こしてくれて。

 朝にはこうさくくんはいつもいません。夜に来て朝にはいないのです。

 その日の朝のひとつの衝撃は、私がよく抱き枕にしていたアザラシのゴマちゃんの背に、焦げ目が合ったことで。

 「まま!ゴマちゃんが!」と言えば、まだダルそうなままは「んー?」と唸ってからゴマちゃんを見て「あっ、」と。

 これは犯人はままだ。絶対。

「まま、ゴマちゃん」
「ごめんごめん…寝タバコしちゃった」
「なにそれ」
「ごめんねさえちゃん」

 朝からそんなんでちょっと悲しい。悲しかったけど私は「ふぅん」と俯いて。

 私とままは普段、朝ごはんを食べない。歯を磨いてのろのろと着替えて「あら大変!急いで、会社遅れちゃう!」と保育園に向かう。

 車に乗ってなんとなく、ままの隣の助手席に座るとき、昨日の金魚が思い出されて浅く座って。ままは得に気にせず発進。

 砂利の駐車場をいく。

「今日も早いから、またご飯買っていこうね」

 約束のようにそう言って、保育園まで車は走って。
 今日はなにがあるかなぁ、とか、そんな事ばかりを毎日考えて。

「あ、帰りは金魚の餌を買って帰ろうか。あれってパンとかでもいいのかな」
「パン?」
「そのままじゃないよ?ちぎってさぁ。だったら食パンあるじゃん?」
「パン食べるの金魚」
「わかんない。やっぱりダメかなぁ」

 ままが不思議なことを言う。しかしそれから、

「あとは帰り、大ままの家に寄ろう」

 大ままとは、所謂祖母のことである。

「うん、わかった」

 楽しみがどんどん、増えていくようで。

 私は小さな頃から不思議な子だった。
 ブランコに乗りながら寝ちゃうし、一人でふらふらどこかへ行ってしまう子だった。

 やはた神社のお祭りが何日間なのかはわからなかった。しかしここ最近、金曜日から土日は祖母に預けられていた。だから私はどちらかと言えば当時は今と違い、おばあちゃんっ子であった。大ままの家に行く、というのはつまり金曜日だったのだろうと思う。

 しかし大ままも大ままで、わりと家には居ない人だった。夜の遅くまでやっているファミレスではたらいていたからだ。

 だけど私は大体、一人ではなかった。大ままの家で犬を飼っていたからだ。

 その犬は私よりも1つ年上だった。

 金曜日と言うのは、いま考えればとても忙しい日だった。色々なことがある金曜日。明日明後日は保育園でなく祖母の家で過ごす日。夜を飼い犬と過ごす日なのだ。

 犬の名前はマドンナ。柴犬とテリアの雑種で、何処かから貰ってきたのだという。私の小さい頃の写真には大体彼女が写っていた。

 ちなみにマドンナは、近くのパチンコ屋から名前を勝手に拝借したようだ。名付け親の写真を見たことはあり名前も知っているが、私には馴染みが薄い人物であった。

 名前はたかし。ままの兄なんだそうだ。



 やはた神社に寄って、真っ先に金魚すくいへ向かった私にままは、「ホントに?」と呆れなのか、なんなのか。

 やっぱり金魚は取れなくて、一匹貰ったのだった。また赤い金魚。だけどままは得に何も言わなかった。

 その日はご飯は焼きそばだけ買った。

 それから日課、祖母の家「時計はセイコー」の看板、大島時計店に向かう。

 大島時計店は最近どうやらお客さんが来ない。と言うか、閉めているのかもしれない。

 薄暗いお店の奥が祖母の暮らす家で、私たちは正面、所謂お店の入り口ではなく、裏口の古い扉から中に入る。

マドンナが二階からすぐに掛けてくる。

「あれ、大まま?」

 しかしどうにも気配がないのだ。

「もう仕事行っちゃったかな。でも…電気ついてるよねぇ…」

 ままはそれから家に上がり込んで、部屋の引き戸を開ける。

 そこは確かに暖かかった。と言うか、まだ食べていないインスタントラーメンがどんぶりのまま置いてあった。

「なにこれ…」
「まま、大ままいないの?」
「でもラーメンあるよね」
「食べて良い?」
「え、待ってようよさえちゃん」

 しかしお腹がすいている。 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

✿ 私は夫のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい 

設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀ 結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。 結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。 それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて しなかった。 呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。 それなのに、私と別れたくないなんて信じられない 世迷言を言ってくる夫。 だめだめ、信用できないからね~。 さようなら。 *******.✿..✿.******* ◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才   会社員 ◇ 日比野ひまり 32才 ◇ 石田唯    29才          滉星の同僚 ◇新堂冬也    25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社) 2025.4.11 完結 25649字 

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...