金魚すくい

二色燕𠀋

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 二人でそれから、屋台で買ってきたそれらを、ちゃぶ台に運んで、手を合わせて「いただきます」をして食べる。

 当時、二人で暮らしていたのは所謂1kというやつだろうか。

 玄関の右手にトイレ、台所、しかし左手の洗面所、風呂場は部屋のようになっていた。玄関から正面、真っ直ぐ前を見た位置に引き戸があって、そこが部屋で。

 部屋は多分、8畳くらいはあったかもしれない。小さいブラウン管テレビとちゃぶ台と敷布団。引き戸の正面に窓があって外に出れた。私たちは一階の一番隅の部屋に住んでいた。

 テレビを小さめにつけてぼんやりと眺めながら母は言う。「もう少し食べる?」と。

 母はわりと、少食だ。しかしまぁ、私が「お腹いっぱい」と言えば「うーん、じゃぁ食べるかー」と食べ始める。我が家はお残し厳禁な家だった。

「ちょっと買いすぎたね。焼きそばいらなかったかなぁ」
「でもおいしかったよ」
「そうだねぇ。
うん、いいやぁ、明日の夜にしようか」
「あしたも家で食べるの?」
「うん。まま、しばらく早いから」
「あしたお祭りは?」
「どうかなぁ、まぁ、また少しご飯も買って帰ろうか」

 嬉しかった。

 そんなときだった。
 外から聞こえる車のエンジンの音。それに母は、ぼんやりとタバコに火をつけながらカーテンの掛かる窓を眺めて。

 こんこんこん、と音がして、めんどくさそうに母は立ち上がり窓へ向かい、タバコを持ったまま窓を開ければ、私も見知った人物がいた。

 50代くらいの白髪のおじさん。
 よく、祖母の家に出入りしている人で、祖母と仲の良いおじさん。多分、ご近所さんなのだ。私は彼を「おじちゃん」と呼んでいる。よく、祖母と三人でランチに行く人だった。

 最近よく、確かにこの時間にくる。私としては面倒を見てもらっている親しい方なので嬉しくなり、「おじちゃん!」と、飛び付くように窓まで行くのだが。

「よぅさえちゃん、起きてたのか」
「うん、あのね、お祭り行ってきたの!」
「おぅ、そうかい。疲れて眠いんじゃないの?」
「ううん、別に!
あのね、金魚、貰ったんだよ!」
「おお、そうなの。
おじちゃん家にもいるよ。今度おいで」
「…今日はどうしました?」
「いやぁ、通り掛かったからね。金魚みせてよ」
「いや、そろそろ彼氏くるんで」
「そっか。じゃぁ帰るよ。
じゃあねさえちゃん、またね」

 おじちゃんはそう言うとすぐ、車に乗ってしまった。 

 それからすれ違いで一台車がやって来た。

 母はおじさんの車を見守っているのか、いま来た車を待っていたのか、窓際でずっと、窓を空けたまま外を見つめている。なんとなく、そわそわしていて、すぐにおじさんが乗ってきた車は発進してしまい、いま来た車からは、“こうさくくん”が降りてきて、去った車を睨むように見ていた。

「あ、こうさくくん!」
「よっ、さえか。遊びに来たよ。なんか食ったか?」
「あのね、金魚だよ!」
「えっ、なんだそりゃ」

 こうさくくんは母を見つめる。母は、

「帰りにやはた神社のお祭り寄ったの」

と答えた。

「あぁ、そうなの。そーいやぁ道混んでたわ。え、さえか金魚食っちゃったの?」
「違うよ!金魚すくいだよ!」

 こうさくくんはそのまま窓から上がり、ちゃぶ台に座った。広げられた夕飯の残りを見てままは、「もしよかったら、残りでよければ…」と言う。

「二人とも食ったの?」
「まぁ、食べきれなくて」
「あそう。なぁんだ、あとちょっとじゃん。ちゃんと食えよ!」
「まぁ明日も食べよっかなって。
今日は…?」
「ん?あぁ、泊まっていい?」
「うん、いいよ…」
「よしよし。
で、さえか、金魚ってどれ?」
「あのねぇ、あっちなの!」

 私はお風呂場の方の廊下を指した。
母は笑って、「ついでにお風呂入る?」とこうさくくんに聞く。

「あじゃぁそーする」
「ねえこうさくくん、ご飯食べたの?」
「うん軽く食った。食いきれないならじゃぁ食うわ。
ほらうちねぇ、お残しはいかん!って教えだったからさぁ。さえか、金魚だけじゃ腹減らない?」
「だから食べないよ!金魚可哀想だよ!」
「ははっ!
お前は?大丈夫?」
「うん。
暖めよっか」
「いや、いいよ。大丈夫。食える食える。
さえか、風呂入るとき金魚見るわ~。
なに?取れたん?」
「取れなかったよ。
おじさんがね、くれたの」
「あれ取れなくてもくれるんだね。
さえかへたくそでさぁ~」

 母が笑ってこうさくくんに言った。こうさくくんは、「でめきん?」と、ままと同じことを言う。

「やっぱりでめきんがいいの?」
「そうだよ。あれ高いんだよ」
「でも可愛くなかった」
「さえか、売ったら金になるんだよ」
「売らないもん!」
「まぁそうだな。明日はでめきんだな。赤と黒綺麗じゃん。
あれ、水槽ないよな?」
「バケツに入れたよ」
「それは可哀想じゃないの?」

 まぁ仕方ないよね。と母が言った。
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