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「まま、お腹すいた」
マドンナもラーメンを眺めている。多分食べちゃうなマドンナ。そう感じて最早私はままに懇願する。目線でも「ラーメン食べたい」を押す。
「…これ、食べなかったのかなぁ」
「もったいないよ、お残しはいけないよ」
「もうわかったよー。食べなさい。多分大丈夫でしょう」
許可を得て私は漸くラーメンを食べる。
ままも食べるかなと、「ままはご飯は?」と聞くが、「あ、うーん、…いや、食欲ない」と、なんだかそわそわあたりを見ていて。
「ねぇまま、全部は食べきれない」
「うん、はい」
「ままは食べないの?」
「うん。
さえちゃん、食べたら帰ろうか」
「うんわかった。金魚のご飯は?」
「土日に買って帰るよ。取り敢えず今日は、帰ろう」
ままの様子は変だった。
食べられる量だけ食べたらままは何故だか焦るようにすぐに祖母の家を出た。マドンナとはバイバイした。
店の前に止めた車。車はゆったりと行き交うがすぐ目の前は大きな十字路。十字路から5件目くらいに大島時計店はあった。
「どこ行っちゃったんだろうね大まま」
「そうだね…」
ままはなにかを考えていた。
裏口から道路に出てすぐ衝撃を目にした。
何か、多分猫か犬が道路の真ん中で轢かれていた。
「まま、まま、」
袖を引っ張って指差して。
ままは気付いて「あっ、」と言い、すぐに私の指を降ろした。
私はパニックで繰り返す。「あれはなに?」「猫なの?」「どうして?」を。
「轢かれちゃったんだ」
ままが淡々と言い、「指差しちゃいけないんだよ」と言った。
「指差すとついてきちゃうから。
気分も悪いし怖いから、早く帰ろうか」
「どうして、可哀想」
「可哀想も言っちゃダメ。優しい子にはついてきちゃうって大ままが昔言ってた」
「なに、それ」
ままは車に私を乗せ、自分も乗って、
車は他にいなかった。だからなんとなく猫を避けるように走った。
なんだか生きた心地がしなかった。
車のミラーに下げていた金魚。存在を確認したけど、嫌な思いと、色々あって泣きそうだった。
「さえちゃん泣いちゃダメだよ。考えないようにしよう。あまりずっと考えてるのは、よくないよ」
「どうして」
「夢に出てきちゃう。嫌でしょ?
お祈りはいいことだよ。でもね、猫はすぐついてきちゃうの、お化けになって」
「猫もお化けになるの?」
「そうだよ、この話はもうやめよう。まま嫌だ」
だからそれから、その話は終わった。静かに家に帰った。
家に帰って、金魚を二人でバケツに移して。
今日貰った金魚の方が体が大きかった。
「喧嘩しちゃうかなぁ、金魚」
「どうして?」
「虐めちゃったりしちゃうかなぁ」
「いじめ?」
「うん。魚ってなんかそういうのありそう」
仲良く出来ないのかな。
見たところ、昨日の、体が小さい金魚は大人しく。今日の金魚は、堂々と泳いでいた。
「デリケートなんだよ、金魚は」
「そうなんだー。まま、餌は買ってこなかったよ?」
「あーうん、パンにしよう。
ままはパンに焼きそばを挟んで食べる」
「さっきラーメン食べてないもんね」
「うん」
ままは買ってきた焼きそばを電子レンジに入れる。
ままは、何でも電子レンジに入れる人である。暖まっていればなんでもいいらしかった。
ままが電子レンジを見張りながら「さえちゃん、手を洗って」と命じるので、私は台に乗って手を洗う。
そんなときだった。
突然、家のドアが空いた。一瞬ビクッとしたけれど、「ごめんね」と。
パート先のエプロンをつけたままの大ままが、何も持たずに、疲れた様子で立っていた。
ままは電子レンジの見張りをやめて「ねぇ、どうしたの大まま」と言って出迎えた。
「いやぁ…レストランから自転車できた」
「え?本気で言ってるの?」
確かに。
大島時計店から家は、いま思い返しても、絶対に車で来る距離だ。車ですら、スムーズにいって30分くらいで。
祖母は、そんな人だった。
酷く疲れているようだが、「疲れちゃった、仕事にも行くんだけど…」
「待って、何よくわかんない」
ちん、と電子レンジがなった。ままは「あっ、」と慌てている。
「孝がもう…あそこにいられないよ私は!」
祖母がそう、切迫して言って上がり込んできた。
ままは電子レンジをちらっと見てからため息を吐いて「さえちゃん、後で大ままを送りに行こうね」と言った。
私は正直、祖母が来てくれたことが嬉しかった。さっき居なかったのだし、なんだか寂しかったし怖かった。
そう言えば。
猫の話を聞いてみようと思った。
しかししばらくはその様子もなく、なんとなく空気が重くて。部屋に3人で入るなり「どうしたの」とままが大ままに切り出した。
マドンナもラーメンを眺めている。多分食べちゃうなマドンナ。そう感じて最早私はままに懇願する。目線でも「ラーメン食べたい」を押す。
「…これ、食べなかったのかなぁ」
「もったいないよ、お残しはいけないよ」
「もうわかったよー。食べなさい。多分大丈夫でしょう」
許可を得て私は漸くラーメンを食べる。
ままも食べるかなと、「ままはご飯は?」と聞くが、「あ、うーん、…いや、食欲ない」と、なんだかそわそわあたりを見ていて。
「ねぇまま、全部は食べきれない」
「うん、はい」
「ままは食べないの?」
「うん。
さえちゃん、食べたら帰ろうか」
「うんわかった。金魚のご飯は?」
「土日に買って帰るよ。取り敢えず今日は、帰ろう」
ままの様子は変だった。
食べられる量だけ食べたらままは何故だか焦るようにすぐに祖母の家を出た。マドンナとはバイバイした。
店の前に止めた車。車はゆったりと行き交うがすぐ目の前は大きな十字路。十字路から5件目くらいに大島時計店はあった。
「どこ行っちゃったんだろうね大まま」
「そうだね…」
ままはなにかを考えていた。
裏口から道路に出てすぐ衝撃を目にした。
何か、多分猫か犬が道路の真ん中で轢かれていた。
「まま、まま、」
袖を引っ張って指差して。
ままは気付いて「あっ、」と言い、すぐに私の指を降ろした。
私はパニックで繰り返す。「あれはなに?」「猫なの?」「どうして?」を。
「轢かれちゃったんだ」
ままが淡々と言い、「指差しちゃいけないんだよ」と言った。
「指差すとついてきちゃうから。
気分も悪いし怖いから、早く帰ろうか」
「どうして、可哀想」
「可哀想も言っちゃダメ。優しい子にはついてきちゃうって大ままが昔言ってた」
「なに、それ」
ままは車に私を乗せ、自分も乗って、
車は他にいなかった。だからなんとなく猫を避けるように走った。
なんだか生きた心地がしなかった。
車のミラーに下げていた金魚。存在を確認したけど、嫌な思いと、色々あって泣きそうだった。
「さえちゃん泣いちゃダメだよ。考えないようにしよう。あまりずっと考えてるのは、よくないよ」
「どうして」
「夢に出てきちゃう。嫌でしょ?
お祈りはいいことだよ。でもね、猫はすぐついてきちゃうの、お化けになって」
「猫もお化けになるの?」
「そうだよ、この話はもうやめよう。まま嫌だ」
だからそれから、その話は終わった。静かに家に帰った。
家に帰って、金魚を二人でバケツに移して。
今日貰った金魚の方が体が大きかった。
「喧嘩しちゃうかなぁ、金魚」
「どうして?」
「虐めちゃったりしちゃうかなぁ」
「いじめ?」
「うん。魚ってなんかそういうのありそう」
仲良く出来ないのかな。
見たところ、昨日の、体が小さい金魚は大人しく。今日の金魚は、堂々と泳いでいた。
「デリケートなんだよ、金魚は」
「そうなんだー。まま、餌は買ってこなかったよ?」
「あーうん、パンにしよう。
ままはパンに焼きそばを挟んで食べる」
「さっきラーメン食べてないもんね」
「うん」
ままは買ってきた焼きそばを電子レンジに入れる。
ままは、何でも電子レンジに入れる人である。暖まっていればなんでもいいらしかった。
ままが電子レンジを見張りながら「さえちゃん、手を洗って」と命じるので、私は台に乗って手を洗う。
そんなときだった。
突然、家のドアが空いた。一瞬ビクッとしたけれど、「ごめんね」と。
パート先のエプロンをつけたままの大ままが、何も持たずに、疲れた様子で立っていた。
ままは電子レンジの見張りをやめて「ねぇ、どうしたの大まま」と言って出迎えた。
「いやぁ…レストランから自転車できた」
「え?本気で言ってるの?」
確かに。
大島時計店から家は、いま思い返しても、絶対に車で来る距離だ。車ですら、スムーズにいって30分くらいで。
祖母は、そんな人だった。
酷く疲れているようだが、「疲れちゃった、仕事にも行くんだけど…」
「待って、何よくわかんない」
ちん、と電子レンジがなった。ままは「あっ、」と慌てている。
「孝がもう…あそこにいられないよ私は!」
祖母がそう、切迫して言って上がり込んできた。
ままは電子レンジをちらっと見てからため息を吐いて「さえちゃん、後で大ままを送りに行こうね」と言った。
私は正直、祖母が来てくれたことが嬉しかった。さっき居なかったのだし、なんだか寂しかったし怖かった。
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