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3話 馬車の中で
しおりを挟むマーガレット様に付き添われて一緒に馬車に乗り込んだ。
私は今日まで学園の寮に泊まり明日には帰る予定だったので家の馬車は用意させておらず、申し訳ないがマーガレット様の家の馬車に乗せていただくことになった。
「マーガレット様。申し訳ございません、このようなことに付き合わせてしまって……。」
馬車が動き出すと真っ先に頭を下げて謝った。
「いえ! そんな! 私の方こそ貴女を巻き込んでしまったようで…… 申し訳ないわ。もし、あのままヴィクトリア様からのお助けがなければ、私の方がアルフレッド様から婚約破棄を告げられたに違いありませんわ。」
首を振って否定された。その後は悲しそうに顔を俯かせた。
「そんな、信じられません。私とジェフリー様はご存じでしょうが前から不仲でしたから…… まあ納得はしますが、お二人は少し前まではあんなに仲睦まじかったのに。」
以前のお二人は互いを思いあっているように見えた。
それがどうして急に……。
まあ、これも乙女ゲームのヒロイン補正というやつなのか、なんか納得いかないけど。
「人の心は移ろいやすいと申しますが、まさかアルフレッド様が、と私は今でも悪い夢を見ているのではないかと……ううっ。」
マーガレット様はとうとう耐え切れず涙をポロポロと流した。
こんな健気で優しい人を悪役令嬢に仕立てるなんて!マジで許せん!!
「マーガレット様! あのようなすぐ他の女性に靡くような浮ついた男などマーガレット様には相応しくありませんわ! そういう方はこちらから願い下げだとおっしゃればいいのです!!」
「ヴィ、ヴィクトリア様?」
びっくりしたように顔を上げたマーガレットにハンカチを差し出す。
「あのような浮気男の為に涙を流すのはおやめ下さい。笑って『あんたなんかこっちから願い下げよ!』と申されたらいいのです。」
「ふふ、『浮気男』ですか。」
「そうです、『浮気男』です。」
二人は顔を見合わせると声に出して笑った。
しばらく笑った後、マーガレット様はなにか吹っ切れたようなそんな表情で私を見て微笑んだ。
「なんだか本当にあんなに悩んだのが馬鹿らしくなってきましたわ! もうウジウジ悩むのは止めにします!」
「その通り! マーガレット様にはもっと相応しい方がいらっしゃいますわ!」
「うふふ、ありがとうございます。」
マーガレット様の笑顔は、それはもう破壊力抜群で私が男だったら絶対、マーガレット様推しになるのに! などと思ってしまった。
しばらくすると馬車が止まった。家に着いたようだ。
「今日は送っていただいてありがとうございました。」
「いいえ、またヴィクトリア様とはゆっくりお話がしたいですわ。」
「ええ、是非。この件が終わりましたらお話しさせてください。」
お礼とお別れの挨拶をして馬車を降りる。
玄関の前には何故か真っ青な顔の執事のセバスチャンが立っていた。
「セバスチャン、急に帰ってきてごめんね。驚いた?」
今日、帰ってくるとはいってなかったので驚かせてしまったのか。
それにしては、驚きすぎのような…。
「ヴィクトリアお嬢様、た、大変でございます!!旦那様がつい先ほど帰っていらして………。」
あー……。
なんだか嫌な予感。
そこへ玄関から現れたのはまるで般若のお面を被ったように怒り狂ったお父様でした。
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