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14話 メイド生活1日目の朝です! ①
しおりを挟む私は割と早起きの方だ。目覚まし時計が無くても予定の起床時間に起きられる。
そういうわけで、アレクの屋敷に泊めてもらった朝は早くに目が覚めてしまった。
起きてしまったのは仕方ないのでとりあえずベッドから抜け出し、収納魔法から動きやすい服を取り出し着替えた。
さてどうしよう。この家の主人はまだ就寝中のようだし、勝手に屋敷内をウロチョロするのも駄目だろう。
「そうだ! 前の記憶を思い出したことだし日課だったアレを今日から始めよう。体力もつくし一石二鳥だわ。」
そう思いつくとさっそく収納魔法から持ってきた服を探し始める、その中から乗馬用のズボンとシャツを取り出す。体を動かすにはちょっと不便だが今はこれで我慢しよう。それらに着替えたあと髪を一纏めに縛ってこっそりと部屋を抜け出した。
そして屋敷の庭に出ると大きく深呼吸をした。
やはり朝は空気が澄んでいて気持ちがいい、心が洗われるようだ。そんな中を前世の私は日本人なら誰でも知っているあのラジオ体操をして軽く近所をジョギングした後、竹刀で素振りをするのが日課だったのだ。
さすがにこの格好で屋敷の外を走るのはまずいが体操とそこら辺にある枝で素振りくらいはできるだろうと思って出てきた。
「さて体操から始めますか。」
そう言って、一、二、三、四とリズムよく体操を始めたのだった。
「だいぶ体がほぐれてきたわ、じゃあ次は素振りね……。」
庭に落ちている木の枝の中から手頃なものを拾って素振りし始めた。
「…98、99、ひゃあく! ハァッハァ、100回だけでバテるのかぁ、はっ、もうちょっと鍛練が必要ね……。」
「お前、何やっているんだ?」
「ギャッ!!」
後ろからいきなり声をかけられて飛び上がる。振り返るとアレクが不思議なものを見るような目で私の事を見ていた。
「あ、朝の鍛練をしていました。」
「鍛練だと? 令嬢のお前が?」
「前世… 以前の私は毎朝、体を動かすことが日課だったの。体力も付けたいし丁度いいかなと思って、別に屋敷の外に出ることはないから……駄目かな?」
「駄目ではないが…、いや、昨夜から驚くことが多すぎて理解が追い付かないんだ。別に鍛練を止めろとは言わない。ただ、他のやつの前でやるのは禁止だ………その姿を他の野郎どもには見せたくない」
何やら口に手を当ててもごもご言っているので最後の方は聞こえなかったが、人に見せなければ鍛練は続けてもいいらしい。
「わかったわ、約束する。」
「ところでお前は剣の修行もしていたのか、剣筋がとても綺麗だ。」
「そうよ、剣道っていうものをしていましたわ。本物の剣じゃなくて竹を加工した竹刀っていう剣に代わるものを使ってやる競技をしていました。」
「なるほどな。今度、手合わせしたいな。」
「本当!? やりたい! 私、結構、戦闘マニアでね。こう、魂と魂のぶつかり合いって言うの?あの対戦するときの高揚感がたまらないのよ!!」
アレクは相当な手練れだと昨日のうちで分かっていたし、さっきも背後に近づく気配さえ感じなかった。アレクからの手合わせの申し出に思わずテンションが上がってしまった。
「あ、うん。そのうちな……。」
アレクはなんだかすっごく引きつった顔をしたけど言質は取ったので大丈夫だろう。
「あ、アレク様、お腹空いていませんか? 朝ごはんお作りしましょうか。」
「は? お前、飯作れるのか?」
「やだなあ、言ったじゃないですか、炊事洗濯できるって、まあさすがに凝った物は時間がかかるけど簡単なものならすぐに用意できますよ。」
「あ、ああ。じゃあ頼む。」
何だかハトが豆鉄砲食らったような顔をしてアレクが頷いた。
「わかりました。ではすぐにお作りしますね!」
ルンルンとしながら台所の方へと向かう。
「ヴィクトリア嬢の手作りの朝飯を食ったとか言ったら、俺、間違いなく宰相に消されるな………。」
そんなアレクのつぶやきは朝の爽やかな風によってかき消された。
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