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30話 おのれ! ジェフリー許すまじ!!
しおりを挟むしばらくは悪いことができないようにお仕置きした3人はそのまま路地裏に放置することにした。
「えげつねぇー……。」
アレクはドン引きしていたけど、女性に悪いことをしようとした奴らに手加減なんて必要ないものね!
「もう、いいですわよ。マーガレット様。」
マーガレット様には刺激が強すぎると思ってアレクの後ろに隠れて目を閉じてもらっていた。
「なんだか、悲鳴が聞こえたのですけど‥‥。」
「あああ! そっちは見ない方がいいですわ! ささ、通りへ出ましょう。」
奥の惨状を見せないように強引にマーガレット様の肩を押して通りへと歩いていく。アレクはその後ろからついてきた。
「それにしても、マーガレット様がなぜこのような場所にいらっしゃったのですか? お供の方とはぐれたのですか?」
そう聞くとマーガレット様の瞳にみるみる涙が溢れだした。
「え? どうしたのです?」
「ヴィクトリア様! 私、どうしたらいいのかわからなくて……どうしても嫌で、家を出てまいりましたの。」
「ええっ!!? 家出!?」
私の胸にしがみついて泣いているマーガレット様にどうしていいのかわからず、思わずアレクを見る。
「おいおい、どういうことだよ。今、貴族の令嬢達の間で家出が流行っているのか?」
とりあえず、マーガレット様の話を聞こうと買い物は中止して屋敷に戻ることにした。
屋敷に戻ってからマーガレット様をサロンへ案内して紅茶を用意して持っていく。その間、マーガレット様はずっと俯いて泣いていてよほどのことがあったのではないかと予想した。
「……みっともない姿をお見せして申し訳ございませんでした。」
「いいえお気になさらず……。その、私でよければお話を聞いてもいいかしら? どうしてそんなに悲しんでらっしゃるのか友人として気になります。」
「私も一緒に聞いてもいいだろうか。」
私室に着替えに行っていたアレクが入ってきた。
「名前をまだ言っていませんでしたね、私はアレク・ハワードと申します。第一騎士団の副団長をしていまして、彼女……ヴィクトリア嬢とは少し事情がありまして今は私が彼女をお預かりしているのです。」
「そうでしたの……。」
爽やかな笑みを浮かべながらスラスラとそんなことを話すアレクをヴィクトリアはちょっと面白くなかった。
いつもは仏頂面のくせにデレデレしすぎじゃない? 確かにマーガレット様は美人だけど。
「あの、それで聞かせてもらえますか?」
「はい…実は昨日、ジェフリー様が私に会いに突然いらっしゃったのです。」
「はあ? なんでジェフリー様が。」
何だかすごく嫌な予感がするんだけど気のせいであってほしい。
「私もそう思いました、いきなりの訪問で驚きましたがもしかしたらアルフレッド様に何かあったのではないかと。そう思いまして会いましたの……ううぅ。」
そうして握っていたハンカチを目にあてまた泣き始めた。私は思わずマーガレット様の隣に座って優しく背中を擦った。
「マーガレット様、お辛いのでしたら気持ちが落ち着いてからでもいいですよ。」
「すみません、大丈夫です。……ジェフリー様に用件をお聞きしたところ、『アルフレッド様とクララ嬢の結婚は決まったようなものだ、婚約を破棄された君は誰も娶ろうなんて奴はいないだろう。だから俺が貰ってやるからありがたく思え』と。」
「あのっ!!! ○○野郎!!」
あまりの話に目の前が真っ赤になる。怒髪天を衝きそうだ。
おのれ! ジェフリー許すまじ!!
「おいおい、お嬢様らしからぬ言葉でてるぞ。」
アレクが呆れたように何か言っているがそれどころじゃない。
「マーガレット様! 絶対、あんな奴の言う事なんか聞いちゃだめですよ。」
「で、でも、ジェフリー様には大公様の後ろ盾がありますわ、ジェフリー様が大公様にもうお話されたと、大公様はたいそうお喜びになられたとか……。」
「大丈夫です! 私が何とかします、何とかできなければ奴を始末すればいいですから!!」
「えっ? 始末!?」
「おい、ここで殺人予告するなっ、ったく。」
アレクがやれやれと言った感じでこめかみに指を当てた。
「…っ!!」
その時、玄関から何か叫ぶような声が聞こえてきたと同時に人が走って近づいてくる音がする。
「だ、だれかしら?」
「…お前たちはそこにいろ。何かあったらすぐ逃げろ、いいな。」
アレクはすぐに立ち上がってそう言うとサロンから出ようと扉へ向かうと
いきなり扉がバンッと開いた。
「兄上!! 助けてくださいっ! マーガレットがっ。」
扉から入ってきたのはアルフレッド殿下だった。
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