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31話 マーガレット様、ここは一発ガツンとやっちゃってください!
しおりを挟む「マーガレット!! なぜ君がここに…いや、君が無事でよかった。君に何かあったら俺はっ。」
アルフレッド殿下はマーガレットの近くへ来るとそのままぎゅっと抱き寄せ彼女の肩に顔を埋めた。
「ア、アルフレッドさまっ!?」
マーガレットはその行動に目を白黒させて固まってしまった。
いや、情報量が多すぎて私もちょっと混乱中なのだけど、さっきアルフレッド殿下が『兄上』っておっしゃったのはアレクの事なのよね。
アレクを見るとあちゃーと言った感じに片手で顔を覆っていた。
「あの、とりあえずアルフレッド殿下。マーガレット様を離していただけませんかそれではゆっくりお話もできませんでしょう?」
マーガレットは顔を真っ赤にさせて今にも倒れそうだ。
「あ、すまない。……君は、もしかしてメイスフィールド嬢? えっ? なぜ君がここにいるのだ?」
アルフレッド殿下は我に返ったように慌ててマーガレット様から一歩下がって離れた。
「あー、その話もしますのでとりあえず座りましょう。」
それからアルフレッド殿下の分の紅茶を用意した。
二人掛けのソファにアルフレッド殿下とマーガレット様が座って、私とアレクは対面に座った。
「あの… アルフレッド様、手を離していただけませんか。」
マーガレットの顔は真っ赤に染まっている。先ほどからアルフレッドがマーガレットの指を絡ませて握っているのが恥ずかしいのか外そうとしているが思うようにいかなくてとうとう声に出した。
「メグ……もう、アルとは言ってくれないのだね。」
「それは……。」
寂しげに言うアルフレッドにマーガレットは俯いた。
「わかっている。俺がメグにしたことは決して許されることではない。例えあの時、俺が操られていたとしても…。」
「操られていた?」
どういうこと?
初めて聞いた話に思わずアレクを見るとアレクは眉間にしわをよせてアルフレッドの話を聞いていた。
「…俺はずっと、いや、クララ嬢に会ってから変だったんだ。記憶があやふやでいつの間にか気づいたら朝から夜になっていたり… ジェフリー達に聞いたらちゃんと授業を受けていたというし、そのうち心にもないことを口走ったり……。君にひどい言葉を吐いた時も本当はそんなこと言いたくなかったのに靄がかかったようにわからなくなるんだ。……本当にすまなかった、メグにはつらい思いをさせて。あの舞踏会の時に、メイスフィールド嬢がジェフリーに一撃を与えたのを見て何故か今までの自分の行いがおかしかったことに気づいたんだ。それからずっとメグに会わす顔が無くてどうやって謝ればいいのかわからなくて、そしたらメグから手紙が来て居ても立っても居られなくて城を飛び出してきた。君の家に行ったらもう出た後で家中が大騒ぎになっていたよ。」
「手紙、読んでくださったのですね。」
「もちろんだよ! だから俺はもう覚悟を決めた。」
そう言って、アルフレッドはマーガレットの前に片膝をついてマーガレットの手のひらを持った。
「私、アルフレッド・オースティンはマーガレット・マッキンレイに結婚を申し込みたい。そして私が犯した罪は一生をかけて償わせてほしい。」
アルフレッドはマーガレットの手の甲に口づけをした。
「本当は卒業式の後にこの指輪を君に渡すつもりでずっと前から用意していたんだ。」
ポケットから小さな箱を出してマーガレットに渡した。箱にはシンプルながらも気品漂う指輪があった。
「…… アルフレッド様、お断りしますわ。」
「っ!」
「……だって、償いの為だけに結婚してほしくありませんもの。」
「………。」
「アルフレッド、お前、言葉が足りなすぎる。もっとはっきり言うことがあるだろう?」
それまで静観していたアレクの言葉にアルフレッドは何かに気づいたようだ。
「マーガレット、君を愛している。だから結婚してほしい。」
「はいっ、私もお慕いしております。」
「っ!!……ありがとう。」
アルフレッドはそのままマーガレットをぎゅっとまた抱きしめた。
「よかったですわね! マーガレット様。」
一時はどうなることかと思ったけどよかった。
「はいっ、あ、でも、アルフレッド様。」
「なんだい?」
アルフレッドはよほど嬉しいのか顔がデレデレしている。
「わたくし、ちょっぴりは傷ついたりしていましたのよ。」
「…それは、すまなかった。君が許してくれるのならなんだってする。」
「私もアレをやってみたいですわ。」
と私を見て悪戯を思いついたように微笑んだ。
ああ、アレですか。
私はマーガレット様が何を思いついたのかわかってしまった。
「マーガレット様、ここは一発ガツンとやっちゃってください!」
「はい! ではアル様、立ってもらえますか。…えっと、ヴィクトリア様この後どうすればいいのですか?」
「そうですねえ、渾身の恨みを手のひらに込めてお腹にドスンと。」
私が手ぶりを交えて教えているのを見てアルフレッド殿下は察して下さったようだ。
アレクはそんなアルフレッドを可哀想な目で見ていた。
「わかった。これでメグが許してくれるのなら甘んじて受けよう。」
アルフレッドは腹を括ったらしい。
「では、行きますね! アル様、お覚悟!!」
ポスッ
確かに、マーガレットの握った拳はアルフレッドのお腹に命中したがその威力は猫パンチくらいでアルフレッドには痛くも痒くもないだろう。
「だ、だめです~、ヴィクトリア様みたいには私できません。」
真っ赤な顔を両手で隠して跪いてしまった。
「俺のメグが可愛すぎる……。」
その前でアルフレッドは同じく両手で顔を覆って膝から崩れ落ちていた。
「お前もあんな可愛げがあればな……。」
「うるさいですよ!!」
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